表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

154/629

149.潰しあいの計画を潰せ!

「戦争に必要なのはそれこそ周辺諸国の情報だと思うのだが、そこはヴィルトディンの人間たちではなくバーサークグラップルのメンバーたちに情報収集をさせていて、列車襲撃事件のことや町の襲撃、帝都襲撃の話が入らないようにしていた」

「でも、それをしても完全に話が入ってくるのを防ぐのは無理なんじゃないですか?」


 ルディアの指摘にロイティンもうなずく。


「それは確かにそうだ。人の口には戸が立てられないとはよく言ったもんだが、それもなかなか入らないように事前にこの国の国民たちに根回しというか、準備はしていたようだ」


 ロイティンが調べた内容では、バーサークグラップルのメンバーを国内の各地に派遣して困りごとなどの小さな依頼を解決したり手伝ったりして、クリストールのみならず王国全体での信頼を得ていた。

 それもどうやらルギーレがレイグラードを手に入れる前からの話らしく、かなりの時間をかけていたのがわかる。


「だから、俺たち騎士団だけでなく国民からも支持を得た上で情報統制をした。エスヴェテレスが周辺諸国にまで声をかけて、同盟を組んで戦争を仕掛けてくるつもりだと」

「あっ、それが前に言われていたとんでもない言いがかりですね」

「そうなるな」


 前にエスヴェテレスがヴィルトディンからとんでもない言いがかりをつけられていると言っていたのはそれか、と納得するブラヴァール。

 そしてそれに対して出されたエスヴェテレスからの声明も、すでにその時ヴィルトディンの実権を影で掌握するぐらいに影響力のあったニルスの手によって上手く握り潰されており、地下施設の建造も着々と進められていたのだという。


「何だか所々で無理があるような気がしないでもないですけど、最終的には強引に押し切ったんですね」

「ああ。でも、陛下とジェリバー様が揃って姿を消すというのも変な話だから、どうにかして尻尾を掴むことができたんだ……が!」


 そこで先頭を進んでいたロイティンの足が止まる。

 そして壁に張り付いて曲がり角の先の様子を窺い、顔を歪めて引き返しにかかる。


「ダメだ、別のルートから行こう」

「どうしたんですか?」

「ニルスの息がかかったバーサークグラップルの奴らだ。どうやら俺の動きを掴んだ奴らがいるらしくてな、最近はなかなかあのニルスに近づけなくて困っているんだ」


 バーサークグラップルだけでなく、王国騎士団の団員の中にもニルスの呼びかけによって潜入したスパイがいるとの情報もあり、下手な動きをすれば即座に見つかってしまう。

 この三人を牢屋から出して協力させているのもかなりのハイリスクなのだが、決めるなら今日しかないと考えていた。


「今日は週に一度の将軍たちによる地下施設の視察日なんだ。今はクリストールの城下町に出ているはずだからいつもより警備が手薄だから、今日で決めるぞ」


 だが、決めると言ってもやらなければならないのは反逆者たちを倒すだけではなく、行方がしれないままの国王と宰相を捜さなければならないのもある。

 しかしここはロイティン以外はホームグラウンドではないので、これまでのようにグループを二つに分けて行動するわけにもいかない。

 それをブラヴァールが指摘するが、ロイティンは心当たりがあるのだと自信を持って言う。

 その根拠はと言うと、彼に協力してくれている傭兵の存在があるかららしい。


「傭兵? まさか……ロサヴェンさん?」

「いいや違う。違うけど……近いと言えば近い人間だ。正確に言えばロサヴェンの仲間だ」


 それを聞き、ファルレナの表情が真っ先に変わった。


「ねえ、もしかしたらそれってティラストさんのこと?」

「知っているのか?」

「ええ。ロサヴェンさんの仲間の傭兵って言えばその人しか思い付かないわよ」

「どなたですか?」

「私も知らないわね……」


 ピンと来ないブラヴァールとルディアに対し、歩きながら説明するファルレナ。


「ロサヴェンさんとは長い付き合いで、二人でよく一緒に仕事をしているのよ。でも今の話を聞いていると、もしかしてロサヴェンさんとティラストさんは今回は別行動なんですか?」

「別行動というか、そもそも最初から傭兵としてバーサークグラップルに協力しようとして来たのはロサヴェンだけだったんだ」


 どうやらティラストという男は一緒に行動していないらしいのだが、連絡先はわかるのでロイティンが連絡してみたところ、話を聞いた彼が協力すると言ってくれたので一緒に内部事情を探っていたのだとロイティンは話す。


「それはそれでいいけど、今ティラストさんはどちらに?」

「ティラストがジェリバー様と陛下の居場所を捜していたんだ」

「えっ、そうなのですか?」

「ああ。それでようやくその場所を見つけたって連絡が来たんだが、さすがに向こうも見張りを立てているから俺一人では無理だ」


 そこで、本来であれば信頼できないはずの部外者がこの国の内部事情を探っていたということで協力してもらおうと牢を開けた……というのがここまでの流れだったらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら、ブックマークや評価などをぜひよろしくお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ