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148.戦った三人

「じゃあ、そのニルスという男が全て裏で物事を操っていたというのか?」

「間違いありません、団長」


 ロイティンが話を進めているのは、ともにルザロに負けてこのルチャード城に戻ってきたエルガーとクラデルの二人の将軍だった。

 そしてその説明をするロイティンの傍らには、彼と同じく副騎士団長の立場にあるジェディスと外国人の五人の姿があった。

 てんやわんやの大騒ぎだったこのヴィルトディン王国内部での話だが、ニルスというすべての元凶を追い出したことによって物事は解決したかに見えていた。

 しかし、根本的な解決にはならないとルザロは述べる。


「口を出してすまないが、ニルスという男や勇者たちは捕まえたのか?」

「それが……申し訳ないが、捕まえようとした私たちの部下がほとんどやられてしまったようだ」

「だろうな。そもそもあの地下施設で戦っていたのもそちらの部下なのだからな」


 ニルスやバーサークグラップル、そして勇者パーティーの連中にすっかり騙されていた将軍たちは何も言い返すことができない。

 それもこれも、まずはルディアたちがこのルチャード城の中で囚われの身となっているこの国の宰相と国王を見つけたことから、緊急事態だと判断したのが始まりであった。



 ◇



 まず牢屋から出されて取調室で簡単な説明を受けたのち、ロイティンの先導で城の中を進む三人だったが、その中でブラヴァールが彼の背中に質問をぶつける。


「一つお伺いしますが、宰相のジェリバー様とリルザ国王陛下は今どうなさっているので?」

「陛下は風邪をひいておられる」

「風邪?」

「ああ。現在は部屋で療養中だ。それからジェリバー様は傷心旅行に出かけられたらしい」

「宰相様がですか?」


 国王であっても人間なのだから風邪をひくのは不思議ではないが、宰相が傷心旅行?

 別に旅行に出かけるのが悪いとは思わないが、一国の宰相がそんな簡単に旅行に出かけられるのだろうか?

 国は違えど同じ騎士団員として、忙しそうにしているそれぞれの宰相を見てきているブラヴァールとファルレナは顔を見合わせて首をかしげる。

 そしてファルレナが思うところがあり、続いての質問を投げかけた。


「あの、それって誰からの情報なの?」

「それがニルスからだったんだ」

「えっ? それって部外者が風邪だの旅行だのって話を流していたの?」

「そうだ。俺も怪しいとは思ったんだが、さすがに風邪をひいている陛下のもとには迂闊に行けないし、ジェリバー様は行方が分からないしでどうにもできなかった」


 しかも将軍の二人であってもうまく丸め込まれてしまったらしい。

 それはさすがに、協力を申し出てきた側のニルスがそう言っているとはいえしっかりその目で見て事実確認をしろよと思ったルディアたちだったが、ロイティンもその考えは同じだった。


「同じことを考えていた将軍たちが強引にでも様子を見に行こうとしたらしいのだが、陛下とジェリバー様からの直筆の手紙を見せられて断念したんだ」

「手紙?」

「ああ。筆跡鑑定の結果、完全にそれが両者の字と一致したのでそれ以上の追及ができなくなったんだ。俺たちはそれぞれ忠誠を誓う存在が別々であっても、最終的にヴィルトディンの騎士団員なのは同じだからな」


 国そのものに忠誠を誓う王宮騎士団と、国王そのものに忠誠を誓う近衛騎士団では、命令を受ける相手も違う。

 王宮騎士団は国の代表として世界中で戦うのだが、近衛騎士団は国王からの命令を受けて動く組織なのだ。

 その二つの騎士団のトップの存在である将軍たちに、さすがに直筆の手紙で「余の体調が良くなるまで人払いをしてくれ」と国王からの指示があったり「すぐに戻るから心配しないでくれ」と宰相からの通達があったりしたら、それ以上は踏み込むことができなかったのだ。


「それに最初、あのニルスという男が姿を見せた時に将軍を二人同時に相手にして勝利を収めたのを、リルザ陛下とジェリバー様はその目で見ていらっしゃったからな」

「だから信用されていたってことなのね?」

「そうだ。ニルスは非常に仕事熱心で、部下の扱いも長けていたし地下施設の建設もバーサークグラップルや勇者たちを上手く使って効率的に進めていたから、それでどんどん信頼を勝ち取っていった」


 もしその気があるのなら、この国の一員として迎えたいとまで国王のリルザや宰相のジェリバーに言わしめたほどに信頼されていたニルス。

 事実、ロイティンも最初は彼のことを信頼していろいろと手伝ってもらっていたし、エスヴェテレスとの戦争を準備するにあたって積極的に取り組んでくれていたので大切な仲間だと思っていた。


「でも、俺は聞いてしまった。あのニルスとバーサークグラップルのリーダー、そして勇者パーティーのリーダーの男ともにこの国とエスヴェテレスをぶつけさせ、潰しあいをさせる計画を」


 だが、周りから信頼されるようになってしまったその連中の本当の顔を暴露するのは非常に難しいと考えたロイティンが独自に調査を開始した結果、戦争の準備を急がせてヴィルトディンの人間たちに上手く周辺諸国の情報を入れさせないようにしていたことがわかったのだった。

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