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144.聖剣vs魔斧

「ぐふぉ!!」


 吹っ飛ぶ身体。そして近づいてくるオーラを纏った男。

 対して、吹っ飛ばされた男はすぐに起き上がって自分の武器を構える。

 だが、その身体は内側から溢れ出てくる恐怖心で震えているのが分かった。


(なんだこいつは? 本当にあの……)


 あのマリユスなのか?

 ルギーレはそう思ってしまうのだが、ズキズキと全身が痛みでうずくのが否が応でも現実だと思い知らされてしまう。

 目の前の、かつては自分のパーティーメンバーでありそれ以前に幼馴染みだったはずの彼がここまで変貌してしまった理由は、その彼の手に握られているロングバトルアックスが原因だとすぐに思い当たった。


(見た目は俺と一緒に活動していた時に使っていた斧と全く同じなんだが、なんだよこの……寒気がするようなドス黒い魔力は!?)


 吹き出る真っ黒なオーラがマリユスの身体を包み込んでいる。

 そもそも、もともとの格好が全身を黒ずくめの鎧と上下の服でコーディネートしているためにさらに黒くなってしまっているマリユス。

 まるでそれは、勇者として世界中の人々の役に立とうと心だけは潔癖だったはずの彼が、完全に暗黒面に落ちてしまったのだと示しているかのようであった。

 そう考えながらも再度レイグラードを構えるルギーレだが、マリユスはそれを見てもやや顔を伏せがちにしたまま余裕の仁王立ちを決める。


「はっ、役立たずがその聖剣を握ったって、しょせんは役立たずでお荷物なことに変わりはないんだ。さぁ、それがわかったら大人しく負けを認めて俺にそのレイグラードとやらを渡してもらおうか」

「ふざけんなよ! 誰がお前なんかに渡すか!」

「そうか。だったら力ずくで奪い取らせてもらうだけさ。この魔斧ドライデンでな!!」


 再び自分のロングバトルアックス……魔斧ドライデンを構えて、マリユスはルギーレに襲い掛かる。

 バカな、そんな名前がいつ付いたんだ。そもそもそれはどこで手に入れたんだ?

 それを聞く余裕もないままに振るわれたドライデンの一撃は、黒い衝撃波を出しながらルギーレに襲い掛かる。


「くっ!」


 ロングソードでバトルアックスを相手にしたらパワー負けして叩き折られてしまう可能性があるので、まともに打ち合わずになるべく側面に回り込んで戦う。

 シャラードとの特訓でも、ヒットアンドアウェイを重視して戦った。

 それがここに来て役に立っているのだが、だからと言ってマリユスの攻撃の手が緩まることはない。


「ぬううううん!!」

「ぐうっ!?」


 吹き荒れる衝撃波が掠っただけでも、地面がえぐれて壁が剥がれ落ちる。

 あれがもし直撃したら一巻の終わりだろう。

 だったらさっさと勝負を決めなければとルギーレは突っ込んでいこうとするが、敵はマリユスだけではなく周りにいるヴィルトディン騎士団やバーサークグラップルのメンバーもそうなのだ。

 時折り、マリユスとの怠慢勝負に邪魔をするkたちで飛び込んでくるものの、それはレイグラードの一撃で何とかなる。

 しかし、それ以外の敵もまだいることをこの時のルギーレはすっかり失念していた。


「っ!?」


 突然、自分のすぐそばを掠めていった特大のファイヤーボール。

 今度はどの魔術師が放ったんだ? と周囲を素早く見渡しつつマリユスから距離を取るルギーレの目に飛び込んできたものは、自分の方に向かって杖をかざしている緑髪の女だった。

 もちろんその女にも十分に見覚えがあるルギーレだが、問題は彼女の持っている杖だった。


「リュド……お前までどうして!?」

「どうしてって言われても、私はマリユスの味方なんだからマリユスに加担するのは当然よ」


 そう言いながらリュドは再び、黒いオーラを放つ杖を振るう。

 今度はその杖の先端から光が飛び出したかと思えば、頭上から何の前触れもなく雷がルギーレの周辺に降り注ぐ。


「うお、わっ!? うおおお!?」

「ふんっ!」

「ぐはっ!!」


 無様なダンスを踊るかのごとく、何とか雷を避けることに成功したルギーレに一気に接近したリュドは、持っている杖の先端で彼の腹をどついて吹っ飛ばした。

 彼女もまた鎧を着こんでいるから重い一撃を繰り出せたのかもしれないが、もしかしたら杖から出る黒いオーラのせいで呆気なく吹っ飛ばされたのかもしれない。


「くそっ、くそ……!!」

「もう降参かしら? やっぱりあなたは聖剣を持つべきではないわよ」

「うるせぇよ。そもそも何でこんな奴らに加担してんだよ!!」

「何で? あなたが聖剣を持ったのがいけないんだわ。それぐらいわかりなさいよ」

「そんなの……ただの逆恨みじゃねえかよ!!」


 こいつらの言っている意味が全然分からない。

 こんな訳のわからない奴と縁を切れてよかったと思っていたのに、まさかこんな形で再会するなんて。

 しかも殺されかけているなんて何がどうなっているのか理解が追い付かないルギーレだが、そこに飛び込んできた影があった。


「おいっ、大丈夫か!?」

「え、ルザロ将軍!?」

「大丈夫そうだな。ならここからさっさと逃げるぞ。ヴォンクバート将軍は何とか倒したからな!」

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