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141.囚われの身の三人

「……はっ!?」

「あっ、やっと気が付いた! 大丈夫ですかルディアさん!?」

「しっかりしろ! どこか痛むところはないか?」

「え、あ……あれ? ここ……どこ?」


 ルディアがふと目を覚ますと、まずひんやりとした感触が身体全体に伝わってくる。

 そこで自分が固い床の上で寝ていることに気が付き、続けてブラヴァールとファルレナの姿に気が付いた。

 続いて辺りを見渡してみると、自分たちはどこかの牢屋にいることに気が付いた。

 それについては二人から説明がされる。


「ここはクリストールのルチャード城です。私たちはロサヴェンさんに出会った後に、何者かに薬を嗅がされてここに連れてこられたんですよ」

「……あ、そういえば!」


 徐々に思い起こされる記憶。

 そうだ、確か情報収集をしていたあの時に自分の意識は突然に失われた。

 ブラヴァールの話ではまずは最初にルディアが薬を嗅がされ、次にブラヴァールが嗅がせてきた相手の人数や身なりに気がついたものの同じく薬を嗅がされ、最後にファルレナが少し抵抗を試みたものの同じく薬で眠らされてしまい、気がつけばこの牢屋の中にいたのだという。


「さっき、私たちもそこにいた見張りの人にここがどこなのかを教えてもらったの」

「そうですか……でも、武器も魔晶石も取り上げられてしまっているみたいですし、このままじゃあ私たち身動き取れませんよ」

「そうですね。しかもこの手枷は魔術を封じる紋様が描かれていますから、魔術も使えない状況です……」


 三人揃って動きを封じられてしまったのだが、今しがた目を覚ましたばかりのルディアと、先に目を覚ましていた二人にはお互いに気になることがあった。


「あっ、あの……その私たちに薬を嗅がせたってのは誰なんですか? 姿を見たんですよね?」

「ええ。私の見る限り、あれは間違いなくヴィルトディン王国騎士団の連中だったわ」

「えっ、それじゃあ……」

「私たちはどうやら尾けられていたようですね。迂闊でした」


 もしかしたら、あのロサヴェンとかいう傭兵は自分たちの気を引くために話しかけてきたのかもしれない。

 それは今となってはわからないのだが、ブラヴァールはそのロサヴェンが騎士団の人間たちに指示を出しているのを薄れゆく意識の中で声だけ聞いていた。


「傭兵として戦争に参加するって言ってたし、繋がりがあってもおかしくはないでしょうね」

「そうですね。……あの、ルディアさんにお聞きしてもよろしいですか?」

「何ですか?」

「すごいうなされていましたが、大丈夫ですか?」

「えっ……」


 うなされていた? 自分が?

 そこまで考えたルディアは、先ほどまで自分が見ていた嫌な夢を思い出していた。


「あっ、私……ルギーレとルザロ団長が大勢を相手に戦っている夢を見ていたんです。でも……」

「でも?」

「でも、その……よくわからないんですけど、その戦っている二人の前に黒ずくめの男が一人現れたんです。そしてその男が手に持っている大きな斧を振り下ろして、そこで黒い衝撃波が地面を削りながら広がっていって……そこで目が覚めました」

「なんだか不吉な夢ねえ。ヴィーンラディの預言者って言われていたあなたは予知夢が見られるって言ってたけど、絶対に当たるわけじゃないんでしょ?」

「そうなんですけど……でも、やけにハッキリした夢だったから怖いんです。夢がハッキリ見えれば見えるだけ、その予知夢が当たる可能性が高くなるんですよ」

「そうなんですか?」


 だとすると、その大勢の敵がいる場所で戦うルギーレとルザロの状況が心配である。

 恐らく、その二人はエスヴェテレスを攻めるために開発されているという兵器を偵察に向かったまでは良かったが、そこで敵に見つかってしまったのだろう。

 そう考えるブラヴァールだが、ここでファルレナが密偵としてこの国に来た時に聞いた話を思い出した。


「……そうだ、地下施設!!」

「地下施設?」

「そう、このクリストールの地下にあるのよ。クリストールの二倍ほどの広さの地下施設が!!」


 ルギーレがルザロから聞いたことと同じく、地下施設の情報を手に入れていたファルレナと、自分の相棒的存在のロラバートからその話を聞いていたブラヴァールがルディアに説明した。


「じゃあ私は、その二人がそこで戦っている予知夢を見たんですかね?」

「かもしれないわね。でも、それを確かめようにも連絡手段の魔晶石が没収されてしまったから連絡の取りようがないのよね……」


 そもそもファルレナもブラヴァールも目が覚めてからここにずっといるので、どうして自分たちが収監されているのかすらもわかっていない。

 とにかくここを脱出しないと話が始まらないのだが、それをしようにも武器も魔術も使えないのだからお手上げである。

 しかしその時、八方塞がりの状態になっていた三人の耳に新たな足音が近づいてきた。

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