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135.歴戦の傭兵の話

「あー、黒ずくめの連中がこの国の騎士団と組んでるってのは俺も聞いているよ。今回の戦争は俺も危険な気がするんだ」

「でも……ロサヴェンさんは今回も参加するんですか?」

「まあな。俺は傭兵だし、将軍からの直々の頼みとあっては断れないからな」


 その言葉通り、ロサヴェンは将軍と付き合いもあるほどに信頼されている歴戦の傭兵なので内部事情も知っているらしい。

 しかし、傭兵だと身分を偽っている現在の三人にはこの戦争には参加してほしくないのだという。


「どこから来たのかは知らないけど、もしあんたたちがこの戦争に参加するつもりなら、やめておいて今すぐ別の仕事先を探すんだな」

「それってやっぱり、黒ずくめの集団絡みってことで?」

「そうだ。将軍からの話だと傭兵連中って言っているらしいが、あんたたちみたいに少人数のグループならまだしも、あんなに大人数で行動していて目立たないわけがない」


 しかも将軍たちに認められるほどの腕があるというのに、今までどこの国でも話題に出ていなかったのはおかしいとロサヴェンは言う。

 それこそ、自分が住んでいるこのヴィルトディンでだってあんな黒ずくめの傭兵集団の話を聞いたことがなかったのに、いきなり出てきて将軍に認められているなんて話が上手く行き過ぎている気がする。

 だからロサヴェンも迷っていたのだが、付き合いのある将軍からの要請で断れなかったのが現実だった。

 更に、ロサヴェンにはもう二つ気になっていることがあった


「それと生物兵器を配備しているって話と、今回の戦争はこちらから仕掛けるっていう噂も聞いたことはないか?」

「少しだけですが私も聞いたことはありますよ。私だけじゃなくて、このブラヴァールさんもルディアさんも聞いたことがあるみたいです」

「そうか、だったら話は早いな。改造した魔物の兵器を多数配備して、エスヴェテレスに攻め込ませる。しかもエスヴェテレスから仕掛けたように見せかけるために、あいつらはエスヴェテレス騎士団の制服を作ったんだ」

「つ、作った?」


 そのエスヴェテレス騎士団の団員であるブラヴァールが、思わず自分が正真正銘のその騎士団の一員であると名乗ってしまいそうになるほどの新しい情報だった。

 それをぐっとこらえて腹の中に飲み込み、話の続きを聞く姿勢を見せる。


「そうなんだよ。本当はこっちから攻め込むはずなのに、攻め込まれた側っていう大義名分を作るために衣装も作るんだと」

「それってその……将軍の指示があってそうしているんですか?」

「いや、それが違うらしいんだ。黒ずくめの連中が、エスヴェテレスをこれ以上ないぐらいまでに叩き潰すためには、そうした方がいいんだって国王に進言したらしいんだよ。それをそのままそっくり信じちまう国王もどうかと思うんだけどさ」


 事実と異なる話をすることで、自分たちを有利に見せる手法だ。

 それにその話が後から嘘だとバレてしまう前に、エスヴェテレスを壊滅させてしまえばそれこそ死人に口なしで何とでも言える。

 歴史は勝った者が創るのだから……と黒ずくめの集団に丸め込まれたヴィルトディン王国。

 だがしかし、ヴィルトディンはその後に広げた領土内部で国内が内部分裂を起こして内乱が起こり、それによって勝ったはずの国も壊滅してしまうシナリオが描かれているのはここにいる全員の誰もが知る由はなかった。


「というわけで、噂を流しているのは黒ずくめの集団だよ。このままじゃあエスヴェテレスが悪者にされて終わってしまうぞ」

「じゃ、じゃあロサヴェンさんから言ってくださいよ。その将軍にこんな戦争は絶対に何かが間違っているって」


 そのエスヴェテレスの人間として、半ば必死になりながらロサヴェンに頼んでみるブラヴァールに対し、この路地裏で話しているロサヴェンは場所に似合うような神妙な表情でうなずいた。


「俺だってそのつもりだ。改造生物兵器とかは好きに開発すればいいと思うが、噓をついてまでこちらから攻め入っても得はないと思う。その生物兵器があるから絶対勝てると思っているみたいだが、勝負ごとに絶対というものはない」


 万が一、それで負けてしまった場合は逆にヴィルトディンが一気に壊滅の危機に追いやられることになってしまうからだ。

 しかし、それも実は黒ずくめの集団に指示を出している人間たちからすれば想定済みの話である。

 ヴィルトディンが負けてしまうような相手であっても、生物兵器を使えば相手にも壊滅的なダメージが及ぶことは間違いない。

 双方疲弊したところで「あの兵器」を使えば、戦力を失った二か国を一気に潰して楽に世界征服ができるという計画がひそかに練られていた。


「とにかく俺は今回も参加するが、切りのいいタイミングで将軍たちにちゃんと言ってみるさ。それでも聞いてくれないんだったら俺はさっさと引き上げるつもりだ」

「そうですか、わかりました」


 これで噂の出所が発覚し、自分たちの任務は果たしたルディア達三人のグループ。

 しかしその頃、ルギーレとルザロの方は大変な状況に陥っていた。

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