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12.巣の主

「はぁ、はぁ……」

「これが……これがそうなのね。繁殖の原因!!」


 さすがにここまで来るのにかなり体力を消耗した二人の目の前に、巣の主が姿を見せた。

 今までのロックスパイダーをおよそ五倍ほど大きくした、超巨大メガロックスパイダー。そしてそのメガロックスパイダーの周囲には、おびただしい数のロックスパイダーの卵が散乱していた。


「産卵したまま散乱させたってわけかよ……」

「くだらないこと言ってないで、まずは卵からつぶしましょう。そしてこの親玉を一気に仕留めてこの依頼を終わらせるわよ」

「そうすっか!」


 今までの通路とは違い、この親玉がいるのは天井部分が吹き抜けになっているホール状の場所だった。

 あの金属の狼と戦った場所は正方形状の部屋だったが、この最下層の部分は天然のコロシアムといった感じである。

 そんな場所でまずは二手に分かれ、それぞれで卵をつぶしにかかる二人。

 通路では前衛と後衛にうまく分かれていたが、今回はなにぶん敵の数が多い上に、生まれたてのロックスパイダーも放置しておくと何をされるかわからないので、効率を重視しての戦い方である。


「この親玉が私たちの邪魔をしてこないうちに、一気に終わらせましょう!」

「わーってるよ! そっちも気をつけろよな!!」


 卵を生み出しているメガロックスパイダーに気づかれるのも時間の問題なので、できる限りの卵や幼虫をせん滅していく二人。

 しかし、ついにそのときはやってきた。


『キシャアアアアアアアアアアアアッ!!』

「うわ、うるせっ!」

「来るわよ!」


 ホール中に響き渡る雄たけびとともに、メガロックスパイダーが侵入者を排除するための行動を開始する。

 それを事前に見越していた二人は、今までのロックスパイダーたちとの戦いを思い出してとにかく攻撃されないように立ち回る。


「オラオラ、こっちだ!」

「こっちにもいるわよ!」


 二人の動きに翻弄されるメガロックスパイダー。身体が岩でできているクモのため、その大きさも相まって普通のクモと違って動きも鈍い。

 しかし、その体内から吐き出される糸の威力は強力だ。

 ブルブルと震えるモーションから一気に吐き出されるクモの糸。しかも身体を回転させて全方位に向かって攻撃するため、逃げ場がなくなってしまう。


「うおっ!」

「きゃっ!?」


 二人ともクモの糸に絡めとられてしまい、身動きができなくなってしまった。

 しかもそのクモの糸は壁からつるされており、二人は壁にぶつかりながら宙づり状態にされてしまったのである。


「く……くそ、これじゃ動けねえ!! おいルディア、魔術で何とかなんねえのか!?」

「やってみる!!」

『キシャアアアアアアアアッ!!』


 せっかく産んだ子供たちを殺されたうえに、さんざん自分を翻弄してくれたこの二人の人間をどうやって食べてやろうかと思っているメガロックスパイダー。

 だが、ルギーレはまだあきらめていなかった。


(くっそ、これじゃあまともに剣を振れやしねえ!! せめて衝撃波でも……)


 その瞬間、ルギーレは思いついた。


(そうだ、衝撃波!!)


 剣を振ることができないのなら、突き刺せばいい。

 ルギーレは前の普通のロングソードを使っていた時も、レベルの低い敵を一気に蹴散らすために使っていた技がある。

 それを今、ここで実践するべく彼は今の剣に自分の魔力を送り込み始めた。


「ぐぅぅ……っ!!」


 動かせる範囲で腕を動かしながら、魔力を込めた剣の先端をそばの岩壁に軽く突き刺すルギーレ。

 するとその瞬間、まるで殴りつけるかのような衝撃がドン!! とホール中に響き渡った。


「えっ!?」


 魔術を繰り出そうと頑張って身をよじっていたルディアも、思わず動きを止めて音がした方向を見る。

 そこに見えたものは壁に突き刺さっているルギーレのレイグラードと、そのレイグラードを中心としてビシビシと音を立ててひび割れていく岩壁だった。

 そしてその技を繰り出したルギーレ本人もまた、何度目になるかわからない予想以上の技の威力に冷や汗を流していた。


「やべ……崩れる……あっ!?」


 崩れたのはルギーレの体勢が先だった。

 ひび割れによって崩れた岩壁から糸がすっぽ抜け、そのまま地面へと落下していく。


「うおおおお……ぐうっ!?」

「ルギーレ!!」


 だが、これも聖剣と呼ばれるが故の加護なのか?

 結構なスピードで岩の地面にたたきつけられたはずのルギーレだが、その昔ドアを押し開けようとして引くタイプのものにぶつかってしまったぐらいの痛みしかなかった。

 そのため皆無に等しいダメージで立ち上がったルギーレは、地面にぶつかった衝撃でブチッと切れたクモの糸の縛りから脱出することにも成功。


『グゥゥ……!?』

「へへへ……俺たちを食おうなんざ、百万年はええんだよっ!!」

『ギュアアアアアアアアアアアアアッ!!』


 あの金属の狼との戦いで知った自分の跳躍力で、メガロックスパイダーの顔の前まで飛び上がったルギーレの聖剣が煌めき、まずは顔面を無残に斬り割かれる巣の主。

 さらにその一振りで生み出された、魔力を注ぎ込んだことによる強力な衝撃波で身体までザックリと真っ二つにされて絶命した。

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