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131.鞘

 その多数決の結果、ルザロとブラヴァール以外の三人が海の方に手を挙げたことによって船での移動が決定した。

 まずはなるべく王都クリストールから離れた港を探して列車で一気に移動し、そこから船着き場で船に乗る。

 一国の騎士団の人間の顔というものは、その国から離れれば離れるほど、また田舎に行けば行くほど覚えられている可能性が低い。

 それからルディアだってヴィーンラディから遠く離れたこの地で顔を知っている者なんているはずがないし、ルギーレも勇者パーティーの中で目立たない存在だったからこそ、堂々と船に乗っていても気づかれない。

 後はレイグラードの魔力をどうにかして抑えるだけだったのだが、そこは魔術に強いバーレンだからこそこんなアイテムをくれた。


「すげーよな、これだけで全然魔力を感じねーんだもん」


 今まで使っていた普通の鞘ではなく、特注で作ったというレイグラード用の鞘に刀身を入れておく。

 この鞘には魔力の放出を抑える効果がある文様が刻み込まれており、それによって何も知らない周囲の人間からしてみると「奇麗な柄のロングソード」にしか見えない。

 それで今度は気兼ねなく旅ができるのだが、その鞘を眺めていたルギーレがポツリと疑問を口に出した。


「そういえばさ、レイグラードに鞘ってあんのかな?」

「あー、そういえば最初にあの地下で手に入れた時も抜き身で刺さっていたままだったもんね」


 初めてルギーレとルディアが出会ったあのジゾの遺跡で、このレイグラードとも出会った。

 しかし、レイグラードには鞘が無かったのだ。

 そこでもともと持っていた普通のロングソードの鞘に差し込んでみたらちょうどピッタリだったのだが、本来はこのレイグラードに鞘はなかったのだろうか?

 まずは騎士団の三人にその話を聞いてみる。


「いいや、俺は聞いたことがないな。レイグラードはロングソードだということしか語られていない」

「私も聞いたことがありませんね。あの……例の伝説のドラゴンにお聞きするのはどうでしょう?」

「そうね。私も鞘については何も知らないし、そのドラゴンさんに聞いてみた方がわかるかもしれないわよ」


 人間たちにはレイグラードについてそれしか伝わっていないようなので、ここはダメもとで医者のセルフォンに通信をしてみるルギーレ。

 すると、休憩時間中だった彼がタイミングよく通信に出てくれた。


『鞘だと?』

「はい。あの遺跡にレイグラードをしまい込んだのってどなたなんです? それがわかれば鞘もわかるかも」


 数千年の時を生きているドラゴンたちならば何か知っているかもしれない。

 そう期待するルギーレだが、セルフォンからの答えは意外なものだった。


『いいや、某は知らないな。レイグラードについては開発したのが某ではないから何とも……』

「そ、そうなんですか?」

『ああ。ただ、某たちの中で語り継がれている話によるとだな、レイグラードを開発したのはずっと大昔で、その時には鞘もあったらしいんだ』

「え、そうなんですか!?」

『ああ。で、それを知っているのは緑色のドラゴンだ。そいつは学者をやっているんだが、祖先も学者をやっていてそれで開発したのがレイグラードだったらしい』


 なんと、思わぬところから鞘についてのヒントを得られた。

 しかし今度は、そのヒントにたどり着くまでが大変そうだという事実もセルフォンから伝えられることになる。


「そ、その緑のドラゴンさんはどこに行けば出会えるんですか!?」

『さぁ、わからんな』

「わからんって……居場所を知っているんじゃないんですか?」

『知っているといえば知っているが、彼はとんでもなく短気でキレやすい。おまけに放浪癖があってあっちこっちをフラフラしているから、某たちも居場所がわかる時とわからない時があるのだよ』


 だからもし、運良く出会えても機嫌を損ねてしまったら話を聞いてくれることもないだろう、とセルフォンが言うので鞘の話に迫るのはまだ先になってしまった。

 そして、今度は逆にセルフォンからルギーレたちに質問が。


『でも、どうしてそなたたちは鞘にこだわるのだ? さっき言っていたけど、鞘だったら作ってもらったものがあるのだろう?それでいいではないか?』

「あー、いやその……最初に見つけた時にレイグラードが台座に抜き身で刺さっていたから気になっただけなんですよ」

『ふーん、ああそう。確か見つけたのはエスヴェテレスのジゾの遺跡だったな。だったらその近くにある火山に行ってみれば、赤いドラゴンに出会えるはずだからそいつに話を聞いてみたらどうだ?』

「赤いドラゴン?」

『ああ。前に話したかもしれないが、レイグラードは某たちが数十年ごとにローテーションで管理をしているんだ。だから赤いドラゴン……今は確かエスヴェテレスで貿易商をやっているって話だったから、行ってみればいいんじゃないか?』

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