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124.斧とワイバーン

「え? 斧を持った怪しい人間が乗るワイバーン?」

「そうだ。旅人からの目撃証言が取れた。線路がある方に向かって飛んでいくワイバーンを見たと」

「それってどこでですか?」

「ヴィルトディンとの国境近くの廃村らしい。ちなみに乗り手の情報を捕捉しておくと、上下が黒ずくめの鎧を着込んでいた背の高い男らしい。髪の色は青で、ロングバトルアックスを持っていたそうだ。そして乗っていたワイバーンはこれまた真っ黒だったとの話だ」

「ん? それって……」

「ええっ!? ちょっとそれって……!?」


 ジェクトからの情報に、ルギーレとルディアがほぼ同時に声を上げる。

 無理もない。その容姿をしている人間とワイバーンにそれぞれ心当たりがあってのことだからだ。

 二人で譲り合った結果、まずはルディアから先にジェクトに対して口を開く。


「それって多分、私が乗った列車を最初に襲ったってワイバーンかもしれないです! ……ううん、きっとそうに違いないわ。真っ黒なワイバーンなんて見たことないもの」

「俺も同じことを考えてたぜ。俺もそっちのロオンも同じ列車に乗ってたからな」


 ラシェンからの証言もあるので嘘のつきようがないが、それを横で聞いていたアイリーナがふと疑問を抱く。


「あれ? でもそれって時間がおかしくないかしら?」

「え?」

「だって、線路が破壊されたのが少なく考えても今日から五日前でしょ? それから前の段階ですでに黒いワイバーンを撃墜していなかったかしら?」

「えっ、ということはまさかその生物兵器のワイバーンってまだ他にもいるってことじゃねえのか!?」

「そうなるでしょうね。黒いワイバーンなんて私も見たことがありませんし」


 ラシェンの発言に、横にいるリアンも神妙な顔つきで頷いた。

 しかしそれよりも気になることがルギーレにはあった。


「そのワイバーンのこともそうなんだけどさ……乗っていた男ってのが俺には気になる」

「具体的にどの辺りが?」

「そうですね、黒ずくめの鎧を着込んでいるってところとか、ロングバトルアックス使いの青髪の男だってこととか」


 ジェクトにそう説明するルギーレだが、その男の正体に感づいたのは彼だけではなくルディアもそうだった。

 なぜなら、彼女はルギーレとともにそのワイバーンに乗っていたと思われる男に会っているからだ。


「ちょ、ちょっと待ってよ。それじゃもしかして、ワイバーンに乗っていた男って……勇者マリユス!?」

「だろうなあ。そんな特徴が当てはまる男で、黒いワイバーンを使うんだったらマリユスしか考えられねえ。あいつは黒ずくめの連中の方についたんだからな」

「そうだとしたらかなり辻褄が合うわね。だってファルスから脱獄してそのままどこ行ったかわからないままだったけど、黒ずくめの連中の手先となってワイバーンを使って列車を襲撃するならちょうど良さそうな人間だし」


 勇者たちが黒ずくめの連中の方についたのはバーレンの人間たちも知っているが、ワイバーンの件も列車の件も実際にその連中がやったというのを見た者がいない以上、今はまだ断定が出来なかった。

 とにかく脱線した列車の後片付けを済ませたこともあり、予定を前倒しして今いる町からバーレンに向かって馬を走らせることに決めた一行。


(そういえば、最近は予知夢も全然見ていない気がするわ)


 ルディアは、こういう時に役に立ってくれない自分の特殊能力を呪った。

 確かにいつでも予知夢を見られるとは限らず、その夢が必ず当たるとは限らないのだと以前誰かに話した覚えがある。

 でも、こうして多数の犠牲者が出てしまったような出来事は予知してほしいと思ってしまう。

 とにかく過ぎてしまったことをああだこうだと言っても仕方がないのだが、その出発準備をしていたルディアのところに魔術通信が入ったので、彼女は珍しいなあと思いつつも出てみる。

 一体誰だろう? と首を傾げながら通信に出てみると、石の向こうから聞き慣れた声が聞こえてきた。


「はい?」

『俺だ、ロラバートだ』

「あっ、エスヴェテレスの! どうしたんですか?」

『密偵としてヴィルトディン王国のことを探ってみたんだが、そっちに向かうなら気をつけろ。あいつら、とんでもないものを用意してこちらに攻め込んでくるみたいだ』

「とんでもないもの?」


 冷静な口調ではあるが、その中にわずかに焦りの色が含まれているのをルディアは感じ取った。

 そしてそんなロラバートがヴィルトディンの中で見たものは、ワイバーン以上に強力な改造兵器の姿だった。

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