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120.やっと出現した皇帝

 絶叫とともに洞窟遺跡の外へと流されていく黒ずくめの男。

 それを見て、ルギーレはやってはいけないことをやってしまったのに気が付いた。


「あ……」


 そうだ、あいつを捕まえなけりゃ話が聞けない。

 どうして俺たちよりも先にあの部屋の中にいたのか、あのポケットの中から取り出したトゲのついたボールは一体何だったのかなど、聞きたいことは山ほどあった。

 それを聞けないまま強制的に別れてしまったので、ルギーレは酷く後悔することになった。

 そんな後悔の念が自分の脳を支配するルギーレの耳に、川の対岸から声がかかる。


「ルギーレさん、今通路を繋ぎますから渡ってきてください!」

「渡ったら何があったのか話してくれよ!」


 リアンとカリフォンが再び人力で橋をかけてくれたので、無事に戦いを終えて戻ってくることができたルギーレだったが、そんな彼を突如気分の悪さが襲う。


「うぐっ……!?」

「あ、おい……どうした!?」

「ちょ、ちょっとルギーレさん! しっかりしてください!」


 騎士団員二人の声がかかるものの、それに答える余裕すらないままに地面に倒れこんだルギーレの意識は闇に沈んでいった。



 ◇



「……はっ!?」

「あ、良かったルギーレ! 気づいたのね!!」

「え……あー、ルディア? あれ? ここは……あれ?」


 そして目が覚めると、目の前には見知らぬ白い天井。さらにそこから視線を動かせば、横で椅子に座っているルディア……と、見知らぬ女の姿があった。

 一体自分はあの後にどうなってしまったのかと記憶を手繰り寄せるルギーレだが、それ以外にも聞きたいことは山ほどあった。

 だが、それが多すぎて何から聞いたら良いのかパニックになっているルギーレに対して、ルディアの隣に座っている茶髪を頭の後ろで束ねた女が口を開く。


「落ち着いて。まずは水でも飲んでリラックスよ」

「え、ああ……どうも」


 ボソボソと呟く声のトーンで話しかけられながら、その女に水を差し出されるルギーレ。

 その冷たい水を一気に喉の奥に流し込めば、いくらかそのパニック状態だった頭も落ち着いた。

 ふーっと息を吐き、ルギーレは改めてルディアとその女に目を向ける。


「はあ、落ち着きました。どうもありがとう。ええと……それじゃあまずはあなたの名前から教えてもらえますか? 騎士団の制服ってことは騎士団の人ですよね?」

「はい……私はアイリーナ・イアディン。弓隊の副隊長を務めています」

「アイリーナさんですね。俺はルギーレ。この女は俺の相棒のルディア」

「知ってます。グラルダー隊長から大方の事情は聴いてますから。あなたは南の遺跡で倒れてしまった後、剣士隊のカリフォン隊長とファルス帝国のリアン団長に連れられて、ここまで帰ってきたんです」

「え……ってことは、ここはどこなんですか?」

「ネルディアのエーティル城よ。目が覚めたらあなたをシェリス陛下のもとに連れてくるようにって言われてるのよ」


 しかし、そこで目の前にルディアがいることに違和感を覚えるルギーレ。


「そうか……ってあれ? ちょっと待て。ルディアたちが先にヴィルトディンに向かうって話はどうなったんだ?」

「それもいろいろあってね。ここに戻ってきた後、あなたは二日ずっと寝てたのよ。それでこのアイリーナ副隊長と一緒に魔術で治療してたの」


 列車でワイバーンに襲われて何とか撃退したは良かったが、犠牲者や負傷者も多数出てしまったこと。

 ルギーレたちの話はリアンとカリフォンから聞いているが、ルギーレ本人からまだ話を聞いていないのと、シェリス陛下が直々にレイグラードについての話を聞きたいので謁見の間に来てほしいと言っていること。

 そしてリアンとカリフォンは負傷していないので、別室でラシェンとグラルダーと合流して会議に参加していることを伝えられた。

 とにかくルギーレはこのバーレンのトップに呼ばれているので、体調が戻っていることを確認して謁見の間に向かった。


「どうも初めまして。こうして俺と顔を合わせるのは初めてだよな?」

「あ、いえ……前に一度お会いしたことはありますよ」

「んっ? そうだったっけ? ……じゃあ俺から名乗らせてもらおう。俺はこのバーレン皇国の皇帝のシェリスだ。それでそっちが勇者パーティーの一員だったルギーレでいいんだな?」

「はい」


 さすがに皇帝にも覚えられていないのはきついなあ……とルギーレは思うものの、今はそれよりも大事なことが山ほどあるのでスルーしておく。

 そんな彼に対し、シェリスは今までのことを話してくれるように頼んだ。


「……と、いうわけでして」

「そっか。じゃあその黒ずくめのやつも宝玉を狙ってたってことだな」


 しかし、レイグラードは黒ずくめの男を避けるように彼の手から弾き飛んでルギーレの元に戻ってきた。

 それが当の本人のルギーレにもわからないのだ。

 一体どうして? と疑問に思うルギーレに向かって、金髪の若き皇帝シェリスはこんな質問をぶつける。


「じゃあお前……ルギーレは自分がどこで生まれたのかって考えたことがあるか?」

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