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119.宝玉の力

 パァン!! と何かが割れるような、いやもうちょっと表現に困ってしまうような音が部屋中に響き渡った。

 それを聞いていたのはルギーレだけではなく、滝の流れる音に混じってリアンとカリフォンの二人も反応するほどの異質な音だった。


「……な、何だ今の音? 聞こえただろ?」

「ええ、聞こえましたね。何かが爆発したのでしょうか?」

「いや、それにしちゃあ軽い感じの音だったぜ。でもどう言っていいのかわからねえ。手を合わせたような音ってのがいいのか?」


 あいにく川の向こうにある部屋の奥の様子は自分たちには見えないので、二人は今までの人生経験の中で聞いたことのある音から推測することしかできない。

 だが、これだけはわかった。

 ルギーレが何か、とんでもないことに巻き込まれてなかなか出てこられないのだろうと。

 そして、その二人の心配は現実のものとなっていた。


「ぐぅ!?」

「ははっ、こいつぁすげぇや!!」


 槍使いの男が左手に握った、トゲのついた球体を勢い良く地面にたたきつけて破裂させた途端、ルギーレの頭に鈍い痛みが走った。

 そしてワンテンポ遅れてその痛みが激痛に変わる。


「ぐあ……お、お前、何……!?」

「ふふ、見てわからねえか? これが新世代の兵器って奴さ。これさえありゃあお前なんかもう怖くねえんだよ!!」

「ぐぅああああっ!!」


 頭が割れるように痛い。

 レイグラードを持ち続けられるだけの力も出すことができず、そのまま地面に倒れこんでしまうルギーレを尻目に、悠々と男はその取り落としてしまったレイグラードを拾い上げた。


「こいつがレイグラードね。そして、これがレイグラードのここにはまるっていう宝玉……この二つを組み合わせたら果たして何が起きるのかなぁ~?」


 すっごく楽しみだぜ~と鼻歌交じりに、まるで新しいおもちゃを与えられた子供のような表情で、槍使いの男はレイグラードの柄の中心の両側にある二つの丸い穴のうちの一つにその宝玉をはめ込んでみる。

 するとその瞬間、レイグラードの柄がまばゆく輝き始めた。


「お、おおおおおおおおおおおおっ!?」

「ぐっ……!?」


 輝きは柄を中心にして本体全体に広がっていき、ついにはその輝きで一瞬レイグラードを握る手が見えなくなってしまうほどになった。

 これほどまでの演出があるのなら、さぞかしレイグラードもすごい力を発揮してくれるのだろうとワクワクする槍使いの男だったが、次の瞬間にその期待は裏切られてしまう。


「おおおおお……ぐぁ!?」

「え……?」


 バチンと音がして、レイグラードが男の手を拒絶するような動きで弾き飛んでいった。

 そのままクルクルと空中を回転して、着地した先は地面に倒れ込んでいるルギーレの右手のすぐそばだった。

 まるで、自分を手に取れと聖剣が言っているかのようなその動き。

 まだ痛む頭を起こしつつ、ルギーレは自分の元に帰ってきてくれたレイグラードを力を振り絞って握った。


「う、うおおおおおおおおおおっ!?」

「な……!?」


 その瞬間、今まで自分を苦しめていた頭の痛みがスッと消えていくどころか、身体の底からみなぎってくる高揚感。

 何事もなかったかのようにスッと立ち上がったルギーレは、レイグラードを両手で握って新たなその感触を確かめる。


「すげえ……これが宝玉の力って奴かよ。悪いな、この剣はお前よりも俺が良いみたいだぜ!!」

「なん、だとぉ……!?」


 だったらもう一度、自分の手の中に収めて自分が所有者だと思い知らせてやる。

 男は再度、先ほど地面に叩きつけたものと同じトゲのついた金属のボールを取り出して地面に叩き付けるが、ルギーレは何もリアクションをしないままだ。


「な、なん……」

「ふふふ、そんな小細工もどうやら無意味みたいだぜ。今度はこっちが反撃する番だああああっ!!」


 ルギーレはレイグラードを構えて、再び男に向かって走って行く。

 男も男で愛用の槍を構えて立ち向かう。

 そしてそんなやり取りは肉眼では見えず、先ほど聞こえた謎の音と同じ音が再び聞こえるだけで中の様子が全く把握できないリアンとカリフォンは、どうにかして自分たちも向こう岸に渡れないかどうかを考えていた。


「くっそ、こうなったら俺かあんたのどっちかが向こうに渡るか、援軍を要請するかしかねえんじゃねえか?」

「私も同じことを考えていましたが……え?」


 だったらどう渡りますか? と提案しようとしたリアンのセリフを遮って見知らぬ男が一人、奥の部屋の壁を豪快に破壊して向こう岸の地面に吹っ飛んできた。

 何が起こったのか理解ができないリアンとカリフォンの目の前に、もう一人別の男が現れる。

 その男の姿を見たカリフォンが、あっと声を上げて指を差した。


「お、おい……あれって……!!」

「ルギーレさん!?」


 壁の向こうから現れたルギーレは、レイグラードを使う時には紫色のオーラを纏って戦っていたはず。

 なのに今はどす黒いオーラを纏った状態になっているではないか。

 そしてそのルギーレは、こう叫びながら最初に吹っ飛んできた男を川に向かってレイグラードと蹴りで突き飛ばした。


「さっきの言葉そのまま返してやるぜ。お前なんかもう怖くねえんだよ!!」

「うぐっ……あああああああっ!?」

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