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118.最深部での出来事

「へぇ、こいつがもう一つの宝玉ってわけかい」

「は……!?」


 なぜ出入口の扉が開いていたのか。

 それはルギーレよりも先にこの部屋に入った人間がいたからであった。

 しかも、それはルギーレにとっては初対面の相手だったのだ。


「おい、誰だお前は!?」

「あん? そんなこと誰だっていいじゃねえかよ。それよりもこの遺跡の仕掛け解いてくれてありがとよ。おかげで楽にこれゲット出来て助かったぜ」


 勝ち誇ったように、まばゆく光り輝く手のひらサイズの宝玉を掲げる謎の男の容姿に見覚えがないかどうかを、今一度頭の中で確認するルギーレ。


(紫色の短く刈った髪の毛、黒ずくめのコートに手袋、それから持っている槍も真っ黒で背の高い男……あっ!?)


 確かにこの男と自分は初対面なのだが、以前聞いた情報に一致する人物ではないか!? と思い当たった。


「おい、まさかお前って勇者パーティーの連中をファルスのミクトランザから脱出させたって槍使いじゃねえのか!?」

「へー……じゃあ、例の勇者パーティー追い出された出来損ないってのはお前かよ」


 ニヤニヤと意地の悪そうな笑みを浮かべる男を見て、ルギーレは彼が勇者パーティーの脱獄を手伝った槍使いであり、黒ずくめの連中の仲間だということを確信した。

 ルディアたちから聞いた通りの情報であれば、リーダーのウィタカーと一緒にワイバーンで飛び去ったとの話もあるので、ここでまた逃げられてしまったら今までの苦労が全て水の泡になってしまう。


「やっぱりお前が勇者パーティーを仲間に引き入れたんだな!?」

「おいおい、人聞きの悪い言い方はよしてくれや。誘ったのは俺たちだが、最終的に入るって決めたのはあの勇者様たちだぜぇ? ま、どっちにしても今は俺たちの仲間だから誰が決めたとかはもう関係ねえ。それと……」


 まだやるべきことがたった今もう一つ増えたんだよ、と言いながら男は自分の持っている宝玉をポケットにしまい込み、槍の先端をルギーレの方に向ける。


「お前のその持っているレイグラードって奴、今度こそ俺たちが手に入れる」

「まだ懲りてねえのかよ?」

「ああそうだよ。あの赤い野郎にはそれなりに高い金を払ってんのに、失敗しやがって俺がこうやって尻拭いに駆り出されたんだよ。言っておくけどなぁ、俺はあの炎の悪魔とかってのよりもつええからな?」

「……ぶっ……」


 思わず吹き出してしまうルギーレ。

 そんな彼を見て、当然槍使いの男は頭に血が上ってしまう。


「何がおかしいんだよ、てめぇ!?」

「いや、だってほら……自分で自分のことを強いって言えちゃうその神経がすげえなあって。強い奴は普通、自分で自分のことを強いって言わねえもんなんだよ」


 もしかしたら自分も昔、知らないうちにそう言っていたことがあるかもしれないと一瞬思ってしまうルギーレだが、男はそんな彼の思考など知る由もなく更に怒りが増大する。


「そうか、そこまで言うんだったら実際に俺の槍の味がどんなもんなのか試してみるか? もっとも俺が槍を振るえば、お前なんか一瞬でこの世から消えてなくなるだろうけどな」

「そう来るだろうと思ってたぜ。俺だってなぁ、目当ての宝玉を目の前で奪われたってこともそうだけど……勇者パーティーを脱獄させた真犯人をここで逃がすわけにはいかねえんだよな」


 この敵対している二人が対峙してしまった以上、戦いは避けられない。

 二人はどちらからともなく相手に向かって駆け出していた。

 金属と金属が音を立ててガキン、とぶつかり火花を上げる。ルギーレはシャラードの時とは違い、レイグラードの能力をフルに使って戦うしかない。

 だが、そのシャラードとの特訓がここでも役に立つ時が来た。


(よし、見切れてるぜ!!)


 体格もほとんど同じの槍使いが相手。

 突き出される槍を避け、反撃に転ずる。ヒットアンドアウェイを忠実に守り、槍の間合いから上手く外れるように自分の位置を調整しながら、正確なロングソードさばきでレイグラードを扱うルギーレ。

 しかし、相手の男も自分で「自分は強い」と大口を叩くだけのことはあって、シャラードと比べてもそん色のない戦い方をしている。

 しかもシャラードと違って、黒ずくめのコートを身に纏っているために足元の動きが読みにくいのが欠点だが、そこは槍の動きを見て何とかするしかなかった。


「ぐっ……!」

「ちっ!」


 金属が交差する。

 レイグラードの刃をそのまま槍に沿って滑らせ、一気に決めにかかるルギーレだが、男の前蹴りが彼の腹に炸裂して吹っ飛ばされてしまった。


「ぐふあ!」

「くっそ、やるじゃねえかよ!!」


 魔力を溜めて衝撃波で一気にふっ飛ばそうにも、相手の男の動きも速い。

 必殺技を出すチャンスも見当たらないので、どうにかして間合いを詰めて決めるしかないと考えていたその矢先、男の動きが変わった。

 コートのポケットに手を突っ込んだかと思えば、そこから見慣れない金属の塊を取り出し、ルギーレに向けてその機能を発動させた。

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