表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

120/629

116.待ち受ける数々のトラップ(その2)

 次に三人がぶち当たったのは、先ほどルギーレが聞いたとされる水の音がようやくカリフォンとリアンの耳にも聞こえてくる部屋だった。

 しかし、そこに水は一滴も流れていないのでまだ水の音の正体はつかめない。

 代わりにその部屋の中にあったのは、地面に規則的に隙間なく敷かれている、人が一人立つのがやっとの幅しかない石のタイルだった。

 それ以外には何もなく、タイル敷きの先には奥に続く扉が設置されている。


「何ですかね、これ……」

「罠って可能性もあるな。この部屋が殺風景すぎるのがすげえ不気味だぜ」

「同感ですね。何もない部屋ほど、空気がよく通って寂しくて変な恐怖感を覚えるものです」


 不気味と恐怖の部屋。

 しかし、この部屋を抜けなければ奥にはたどり着けないので三人はまず一歩踏み出してみることにした。

 すると……。


「……ん!?」

「ぐぅああっ!?」

「うぐ!?」


 三人が横一列でそれぞれ足元のタイルを踏んだ瞬間、ルギーレだけが何事もなかった。

 両側で同じ行動をとったカリフォンとリアンは、全身に強くしびれる衝撃を感じてタイルから足を離さざるを得なかった。


「な、何ですかこれは!?」

「くっそ、何なんだよ一体!? 罠かよ!?」

「ルギーレさんは何ともないのですか?」

「お、俺は何ともないですけど……」


 もしかするとこの部屋、ルギーレが乗ったタイルだけが正解で他の間違ったタイルに乗ってしまうと今のように衝撃が走る罠のルートなのだろうか?

 三人はそう考え、ルギーレに次の一歩を踏み出すようにリアンとカリフォンがそれぞれ手と顎で指示を出す。

 俺は犬じゃないんだけどなあと思いながらも、先に進まなければ始まらないのでスッと一つ奥にあるタイルの上に乗ってみると……。


「うっぐああああっ!?」

「え?」

「あ、あれ?」


 どうやらここのタイルも間違いだったらしい。

 ルギーレはレイグラードの感覚に頼ろうにも、こういうパズル要素の絡んでいる部屋ではあまり役に立ってくれないようである。

 仕方がないので、衝撃に備えていったん体力を回復薬で回復し、今度は別のタイルをそっと踏んでみる。


「ぐううううあああああっ!!」

「あー、そっちも外れですか……」

「じゃあ向こうなんじゃねえの?」


 俺も一緒に踏んでみるからさ、とカリフォンが最初にルギーレが踏んだタイルに乗ってみる。

 しかし、踏み出したその足が乗った瞬間ルギーレともどもまたダメージを食らってしまった。


「ぐおあっ!?」

「くっそ、何なんだよこりゃあ!?」

「…………」


 カリフォンはタイルからとっさに飛びのく。ルギーレ一人だと問題はないようだ。

 二人の脳筋男がしびれでダメージを受けているのを見ながら、リアンは顎に手を当ててこの部屋の仕掛けがどうなっているのかを考えていた。

 すると、ルギーレが乗っているタイルが少し地面に埋まっていることに気が付いた。


「あ、ルギーレさん。そこで止まっていてくれませんか?」

「えっ、何かわかったんですか?」

「まだ確証は持てないのですが、その床が少し埋まっているんですよ、あなたの重さで。ですからこの部屋の秘密に関係があるのかと」


 そう言って、リアンは他のタイルにも自分で足をかけてみる。

 だが、カリフォンと同じで衝撃を受けてしまった。


「……ダメですね。それではルギーレさん、今度はあなたがこの場所に乗ってください」

「は!? いや、そこって今リアン団長がしびれた……」

「いいから乗ってみてください。試してみたいことがあるんです」

「は、はぁ……」


 この男は俺に何をさせるつもりなんだろう?

 ルギーレはしびれが来ることを覚悟してそのタイルの上に足を乗せてみた……が、今度はなんと何も起こらないではないか。


「あ、あれ?」

「ふむ……そうなると、次はそっちのタイルかもしれませんね」

「よし、じゃあそっちは俺が乗る……」

「いけません!」


 リアンの鋭い声が、動こうとしたカリフォンに飛んだ。

 その反響する声にカリフォンも思わず驚いて足を止めてしまった。


「な、何だよそんなでっけぇ声出さなくたって……」

「出しますよ。この部屋はパズルになっていますが、複数人での参加はどうやら認められないようです。その証拠に、今ルギーレさんが先ほど私がしびれたはずのタイルに乗っても何も起こらないのが証拠です」

「……あー、なるほどなぁ……」


 しかし、パズルというのはどんなものなのか?

 それも最初に気が付いたリアンが、三人の中の頭脳となって解説してくれる。


「ご覧くださいルギーレさん。あなたの足元のタイルと、最初にあなたが踏んだタイル、それからその周りのタイルを」

「あ、俺が踏んでないはずのタイルもへこんでますよ?」

「なるほど、これでやっとわかりましたよ。これは正解のタイルをすべて踏んでいって、最終的にすべてのタイルを地中に埋めればあの扉が開くパズルなんです!」


 その後もリアンの頭脳によってタイルを埋めていくルギーレは、ようやくこの部屋の謎を解くことに成功した。

 頭を使う仕掛けもあると言っていたのはこのことだったのか……と改めて思い知らされたのだが、まだ次の部屋にも謎解きが待っていたのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら、ブックマークや評価などをぜひよろしくお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ