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10.気づかなかった? 気づいてたフリ?

「おいベルタ、どうしてお前がこの女のことを知っているんだ?」

「あら、彼女は有名なのよ。そもそもこれだけ濃い魔力を持っている魔術師なんてなかなかいないし、それで冒険者となれば思い当たる人間は両手で数えるほどしかいないわ。逆にあなたがこの人のことを知らないって言うのが驚きよ」


 ルディアが魔術師だということ、そしてギルドランクがAだということを言い当てたベルタは、あきれたような口調でルギーレにそう言い返す。


「魔術師には冒険者として登録する人が少ないのは、あなたも知っているわよね?」

「ああ。魔術の研究に精を出す奴が多いから、冒険に出るよりも研究所に引きこもっているのが多いって話だろ?」

「ええ。だからこそこうして高いランクの魔術師の冒険者は目立つのよ。あなたはルディア・ロンバルトね。魔術がこの世界の中で一番発展しているっていうヴィーンラディ王国で、二十歳の若さで国王から認められるほどの魔術師ってね」

「え……?」


 魔術師なのは今までの流れでわかっていたルギーレだが、まさか国王から直々にその実力を認められていたとは。

 そこまでレベルの高い女だったとは全然思ってもみなかったルギーレだが、当のルディアは気にした様子もない。


「それはもう昔の話よ」

「昔の話って言うのは早すぎるわよ。たった一年前のことでしょ。その間に何がどうしてこうなってこの男と一緒にいるのかはわからないけど、できることなら早めに縁を切って離れた方がいいわね。そうしないと落ちこぼれが移っちゃうかもしれないわよ?」


 そう言うベルタに対して、ルディアはふんと鼻を鳴らした。


「個人的な忠告どうもありがとう。それじゃ行きましょ、ルギーレ」

「え、あ……ええ?」

「じゃあね。もう二度とあなたたち勇者様ご一行とは会うこともないと思うけど、元気でね」


 そのままルギーレの手をつかんで歩き出すルディアの背後に、マリユスからの声がかかる。


「もしよかったら俺たちのパーティーにルギーレの代わりに入らないか? Aランクの魔術師がいてくれると俺たちとしても心強い」

「お断りします。私はルギーレの方がいいわ」


 勇者からの誘いを一蹴して勇者パーティーと別れたルディアは、ルギーレを強引に街の出入り口まで引っ張ってきた。


「いいのかよ、あんなこと言って」

「別に構わないわよ。だってあの勇者一行は鈍そうだったから」

「は?」


 妙なことを言い出したルディアに対し、ルギーレは首をかしげた。


「鈍そうって? 動きとか統率力とかがか?」

「違うわよ。カンが鈍いメンバーばかりだってこと。だってこのあふれ出ている魔力の出所が、私の魔力がすべてだって言いきっちゃったんだから」


 ルディアは、あの勇者一行がルギーレの持っている剣に気づいてはいたものの、まさかそれが魔力の出所だとは思ってもいなかったらしい。


「仮にも勇者だとしたら、あなたでも知っていた聖剣レイグラードのシルエットを当然知っているはずだったのに、興味も示さなかったじゃない?」

「どうだかな。気づいてたけどあえて気づかないふりをしていただけだったかもしれないぜ?」

「それもあり得るかもね」


 自分の以外の「元」パーティーメンバーも聖剣レイグラードについては知っている。

 だけどそんなものはすでに大昔の話だからと言って、勇者パーティーのメンバーだったころは一度も話題に上がらなかったのも思い出すルギーレ。


「まぁ……仮にあいつらがこれに気づかなかったとしよう。俺だってこの剣がいまだにその聖剣だってのを信じられねえんだから、あいつらが気づかないってのもわからなくはねえけど」

「それは気づいててほしくないわね。もしこの剣が勇者の手に渡るようなことがあれば、何が起こるかわかったもんじゃないわ」

「ん? なんでだよ?」


 それはいったいどういう意味なのだろうか?

 ルディアのセリフにルギーレはまた首をかしげる。


「だって、普通だったら苦労しないはずの依頼を失敗してるのよ?」

「どうして失敗したってわかるんだ? 俺もあいつらはなんだか元気がなさそうだとは思ったけどよ」

「勇者の目が泳いでいたわ。それに依頼のことは話す必要がないってかたくなに言っていたのも、失敗したって考えるのが普通よ」


 だからここはその聖剣の威力を再び試すチャンスとしてちょうどいいでしょ、とルギーレを再び引っ張って、ルディアはそのロックスパイダーの巣があるというダンジョンへと歩き出す。

 引っ張られている方のルギーレはというと、ルディアに対して冷や汗をかきながらこう思っていた。


(こ、この女……割と強引なところがあるんだな!?)

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