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114.やっと着いたんだよ

 ウィタカーとその雇い主がそんな会話をしているころ、ルギーレ、剣士隊隊長のカリフォン、そしてファルスからシャラードの代わりとしてやってきた左翼騎士団団長のリアンはようやくお目当ての遺跡にたどり着いていた。


「おい、本当にここで合ってんのかよ?」

「あの画家が描いてくれた地図によれば、ここしかないと思うんですけど……」

「ですねえ。私はここで合っていると思いますけど、これは遺跡と言うよりも洞窟って言ったほうが正しいかもしれませんね」


 三人の目の前にあるのは、風が反響して魔物の叫び声のように聞こえる大きな洞窟の入り口だった。

 シュヴィリスが描いてくれた地図に沿ってやってきたのはいいのだが、最深部までの道のりがかなり長い上に、頭も身体も使う遺跡なのだと説明されているだけ合って、当初の予定ではルディアと二人で来るはずだった。

 それが思わぬハプニングにより、レイグラードを持った自分と異なる国の軍人二人のむさ苦しい男三人での来訪となった。

 だが、中に入るのは今はやめておこうとカリフォンが提案する。


「でもさあ、今日はここでキャンプして明日ちゃんと体力回復してからにしようぜ。さすがに俺もここまで来るのは疲れちまったよ」

「私もですね。まずここまで来るのにこれほど体力を消耗するとは思いませんでした」


 シュヴィリスの描いてくれた地図があったから良かったものの、それがなかったら今までこの山の中を道に迷わずに来られたかどうかも怪しいレベルの道のりだったのだ。

 最寄り駅で列車を降り、その駅がないと移動手段にも困りそうな辺境の村で買えるだけの物資を買い込んだ。

 シュヴィリスから渡されたのは地図だけではない。

 その遺跡に向かうまでの道のりは長く険しいため、武器と防具の手入れはしっかり行ない、食料や回復薬も持ちきれないぐらいに用意しておかなければきっと途中で引き返すことになってしまう。

 その遺跡に挑戦した僕に知り合いがそう言っていた、との旨を記したメモも渡されていたのだ。

 本当のところでは、人間たちがそう簡単に踏み込めないように道中に魔物が多数生息しているルートを切り開き、その奥に洞窟を造ってトラップもこれでもかと言うぐらいに仕掛けた結果、今までずっとその宝玉が盗まれずに済んだという。

 もちろんその事実をこの二人に言うことはできないので、あくまでもその画家が知り合いから聞いた話ということで押し通してここまでやってきたのだが、シュヴィリスの言っていたことに間違いはなかった。


「そうしましょうか。俺もかなりきつかったですよ。おっそろしいほどの魔物の量……あれって個人レベルで相手するようなもんじゃなくないですか?」


 テントの骨組みをせっせと組み立てながらルギーレがぼやけば、カリフォンからの返答がある。


「そうだよなあ。この辺りは俺たちバーレン皇国騎士団でも全然重要視している場所じゃねえからよ。今までこれっぽっちも人の手が入っていねえし何か目立った産業があるわけでもねえし、たまに魔物討伐に駆り出される部隊が来るぐらいなんだよ」


 その駆り出される部隊も、この遺跡がある山に出動するとなると露骨に不満が上がるのだ。

 何せ、シュヴィリスのメモ通りにたくさんの準備を用意しなければならない割には見返りが全然ない。

 ハイリスクノーリターンの典型ともいえるので、この場所に向かう場合には危険手当が別につくぐらいのレベルなのだ。

 それを聞き、リアンからは苦笑いが漏れる。


「確かにそれは大変ですよねえ……私たちファルスとこちらのバーレンが戦争していた時も、バーレン皇国軍はこちらに軍勢をあまり敷いていなかったみたいですし、ファルス帝国軍もこのあたりの行軍で危うく物資が尽きてしまいそうだったと習いました」

「ああ。ってかさ、ファルスとバーレンの戦争って大きく分けで第一次戦争と第二次戦争に分かれるもんな」


 先にバーレンがファルスに攻め込んだのが第一次二国間戦争。そしてお返しとしてファルス軍がバーレン皇国に侵攻していったのが第二次戦争と呼ばれている。

 だがそのどちらにおいても両方の軍から敬遠されてしまったのが、南西のこの遺跡がある場所だったらしい。


「軍隊ってのはなかなか動きにくいもんなんですか?」

「そりゃそーさ。傭兵とかと違って大勢で動かなきゃならねえから、個人や冒険者パーティーで動くよりかは確実に機動力は落ちるもんだぜ」

「ええ。私も部隊を率いる身分になってわかりますが、大勢になればなるほど身動きがとりにくくなります。いろいろと制約やしがらみも多いですしね」


 軍に所属しているわけでもないルギーレにはよくわからない世界だが、とにかくここまで来るのに疲れてしまったのもあって、立て終わったテントの中では食事の時間や寝るまで全て、リアンとカリフォンそれぞれの両軍の苦労話や愚痴を聞く羽目になってしまったのだった。

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