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110.エスヴェテレス帝国と同じ展開

 また列車が狙われている。エスヴェテレス帝国と同じ展開だ。

 だが今回は爆破事件ではなく、野生のワイバーンに狙われているらしい。

 なんだってこんな時に、と舌打ちしながらラシェンは撃退協力に名乗りを上げる。もちろんロオンも一緒だ。

 そしてルディアは乗務員たちとともに、乗客たちをワイバーンの被害に遭わないように守る役目を任されたのである。


「まさか、あなたとこうして一緒に戦う時が来るとは思いもしていませんでしたよ」

「ああ、俺もあんたと同じ心境だぜ。二国間戦争の時に一番刃を交えた奴らが、共闘することになるなんてなぁ!!」


 列車の屋根に上り、飛来する真っ黒なワイバーンを見上げながらそれぞれの武器を構える二人。

 実はこの二人には相当な因縁がある。

 ラシェンが口走っていたことからもわかる通り、この二人はファルスとバーレンでの戦争ではライバルとして戦場でその実力をぶつけ合っていたのだ。

 ラシェンが二刀流の双剣士、ロオンがロングソードと魔術を使い分ける魔術剣士隊という違いはあれど、お互いにその戦争を通して実力を認め合った仲ではあるが、戦争という真っただ中での話だったのでお互いにいい感情は持てていない。

 そんな二人のように、ファルスとバーレンの戦争を通じてお互いをライバル関係と認めた者は他にも数多くいるのだが、国が違う上に戦争のわだかまりもあるのでライバルとは仲良くできないという共通点もかなり多い。

 そして今回、その大勢のライバル関係となったファルスとバーレンの一名ずつがこうして手を組んで戦うということ自体が驚きなのだ。


「相手は一匹ですが油断はできませんね。私が魔術でけん制しますから、接近戦は任せますよ」

「よっしゃ、やってやんぜ。俺だってはるばるファルスからここまで来たんだから、負けてたまるかってんだよ」

(前に出すぎてしまうような戦い方をされても困るのですがね……)


 意気込むラシェンを横目で見て、この男が熱くなりすぎないかをロオンは心配していた。

 敵としての目線で見てみれば、ラシェンは騎士団長の一人として活躍するだけの実力があるのはロオンも認めている。

 しかし、戦っているとわかるのがその熱くなりやすい性格である。

 果敢に突っ込んでくるのはかなりの脅威なのだが、熱くなりすぎて防御を疎かにしがちだというのがロオンからラシェンに対する評価であった。


(二刀流の手数の多さで攻め込んでくるのが悪いとは言いませんが、騎士団長らしくもっと落ち着きを持ってほしいものですね)


 だが、ロオンがそんな気持ちを頭の中でラシェンにぶちまけている一方で、ラシェンもまたロオンに対して不安を抱いていた。


(こいつは剣術をもっと学んでほしいぜ。魔術でちまちま攻撃されたときにはイライラしたんだよなあ)


 よく言えば器用、悪く言えば中途半端。ラシェンはロオンにそのイメージで接している。

 剣術と魔術を並行して扱い、魔術剣士隊の隊長を務めているその能力は十分すごいとは思っているのだが、実際に刃を交えてみれば剣術も魔術もどちらも平均的という印象を受けていた。

 レベルは決して低くはない。

 でも、純粋な剣術での勝負であれば間違いなく自分に軍配が上がるだろうとラシェンは考えている。


(戦場じゃあ剣術だけで生き残れねえってのはわかってんだが、だからと言って生半可な腕じゃあすぐに死んじまうか、敵につかまっちまうだけだろーに)


 この二人の言っていることはどちらも正しくはあるのだが、第三者から見てみればお互いの戦い方が違うので個人の問題としか言いようがない。

 お互いに相手を評価しつつも不安要素もある二人がコンビを組み、今こうしてワイバーンに立ち向かい始める。

 まずは近づいてきたワイバーンめがけてロオンがファイヤーボールをぶつける。


『グガァッ!?』

「よーし来い来い……そらっ!!」


 ファイヤーボールでロオンが自分たちに注意を引き付け、間合いを計算したラシェンが飛び上がりつつ半月を描く剣の軌道でワイバーンに傷を入れる。


『ギャウッ!!』

「よし、まずは一撃だ!」

「油断しないでください!」


 ロオンがラシェンに注意を入れ、再び向かってくるワイバーンに意識を集中させる二人。

 しかし、今度はワイバーンがその翼を使って風を起こしてくる。

 突風が列車の屋根の上を吹き荒れるが、二人だって今まで魔物をいくつも相手にしてきただけあってこんな程度では落とせない。

 突風を乗り切った二人のうち、まずはロオンが再びファイヤーボールを命中させる。

 そしてラシェンが先ほどと同じく半月斬りを繰り出してダメージを与えようとしたのだが、その時ワイバーンの挙動がおかしくなった。


「……ちょっ!?」

「あっ」


 外した。

 ラシェンの攻撃を読んでいたワイバーンは空中でフェイントを仕掛けて動きを止め、彼に隙ができたところで足の爪で切り裂こうとした。

 だが、それはロオンが咄嗟に繰り出した風の魔術……ウィンドカッターによって阻止された。


「前に出すぎないでください!!」

「わりぃわりぃ!!」


 気を取り直して再びラシェンは双剣を構えるが、その時ワイバーンの動きが再びおかしくなった。

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