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107.依頼達成

 ルギーレはレイグラードを構えて、体勢を立て直したばかりのマスターに対して一気に距離を詰めて斬りかかる。

 だが、マスターも先ほど釣り人を刺したナイフで応戦する。

 腐ってももともとバーレン皇国の騎士団員だっただけあって、少しトレーニングしただけのルギーレの剣術では難なく応戦されてしまう。

 それにこの男を殺してしまったら、あの画家の男に金を渡せなくなってしまうので必殺技で一気に決めることもできない。

 素早く振るわれるマスターのナイフをかわしながら、レイグラードで反撃するルギーレだが、相手の方がスピードがあるのでなかなか自分の間合いで戦えない。

 接近戦を仕掛けたのは間違いだったらしい。


(くっそ、こうなりゃヒットアンドアウェイだ!!)


 今まで以上の大きなバックステップでやっと距離を取ることに成功したルギーレは、ここから戦法を変える。

 相手を殺さないレベルの衝撃波を出しながら牽制し、体勢が崩れたら一気に勝負を決める算段だった……のだが、接近戦に集中するあまり大事なことを忘れていた。

 距離を取ったルギーレ目掛け、マスターは再び懐から小型爆弾を取り出して投げつけて来たのだ。


「……ちっきしょう!!」


 そうだ、相手にはこれがあったんだ。

 近づけばナイフのスピードに翻弄され、距離を取ったら今度は爆弾を投げつけられる。

 先ほど刺されてしまった釣り人の存在もあるので早く勝負を決めなければならないのだが、現実はかなり厳しい。

 レイグラードから出せる衝撃波を使って爆破しようにも、小型爆弾はなかなかその爆破範囲が広いためにうかつに衝撃を与えれば、自分まで爆発に巻き込まれて吹っ飛ばされてしまう危険性が高い。


(くっそ、こんなのって反則だぜ!)


 こうなったらこの手段をとるしかない。

 ルギーレは爆弾の攻撃をかいくぐってまたもやマスターに接近し、振るわれるナイフに対して今までとは違った方法で対処に成功した。


「ふん!」

「……な!?」


 そう、避けるだけが接近戦じゃない。

 相手は確実にこちらを狙ってきているのだから、そのナイフを持っている腕をブロックしてつかんでしまえばいいのだ。

 それによって動きが止まってしまったマスターの顔面に、ルギーレは今までのお返しとばかりにレイグラードの柄を使って強烈な打撃を連続で浴びせていく。

 拳よりも固い金属で造られているその柄によって、マスターの鼻の骨が折れ、歯が折れ、そして頭部から出血もする。

 連続攻撃でヨロヨロになったマスターを両手で突き飛ばし、ルギーレはとどめに廻し蹴りを入れて彼を吹っ飛ばした。


「ぐあっ!!」


 ドサリと仰向けに倒れこんだマスターを尻目に、ルギーレは先ほどの釣り人の救助に向かう。

 ただ釣りに来ていたというだけで、何の落ち度もない状態で刺されてしまった彼を一刻も早く助けなければならないルギーレだったが、ここで油断が生じてしまった。


(ふざけんな……)


 マスターがまだ戦意を失っておらず、自分に背を向けて釣り人に意識のすべてを集中させているルギーレに向けて、懐から取り出した小型爆弾を投げつけるべくゆっくりと立ち上がる。

 ルギーレは気づかない。マスターは動きを止めない。

 このままお互いの勝敗が最後で大逆転するかと思われたその時、マスターの左肩にどこからか飛んできた一本の矢が突き刺さった。


「ぐうぁああああっ!?」

「え?」


 背後から聞こえてきたマスターの叫び声に振り向いたルギーレが、何が起こっているのかわからずに頭の整理がつかない状態でキョトンとしていると、彼の聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「おいルギーレ、無事かぁ!!」

「あっ、ちょっとその人は……!?」

「グラルダーさん、ルディア!!」


 弓を片手に持って走ってくるグラルダーと、釣り人が倒れていることに気が付いたルディアが駆け寄る。

 先ほどの矢はグラルダーが放ったものだろうが、足音が聞こえてくる前から正確に左肩を撃ち抜くなんて、やはり弓隊の隊長だけのことはある。

 そのグラルダーがマスターを拘束している一方で、ルディアが釣り人に素早く治癒魔術をかけて治療を開始した。


「よっと。さぁ立て。それで……何があったんだ?」

「この男がその釣り人を刺して、馬を奪って逃げようとしてました。しかもコートの中には小型の爆弾を山ほど隠し持っていたんです!」

「何ぃ!?」


 ルギーレの言葉に従って、マスターのコートを広げて内側を覗いたグラルダーは絶句する。

 なぜならそれは……。


「何だこりゃあ、これって確か、俺たち騎士団でも敵の陣地を突破したり、魔物の巣を爆破する時に使っている小型の魔術爆弾じゃねえか。まさか盗み出して……ん? あれ? 待てよ?」

「どうしたんです?」

「いや、ちょっと違うなこれ。俺たちが使ってる奴じゃねえぞ。これは色々聞かなきゃならねえな!」

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