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105.路地裏の追いかけっこ

「おい、お前ら来てくれ!!」


 グラルダーの大声に導かれた他の四人が向かってみると、そこはカウンターの奥にある扉から繋がる倉庫への通路だった。

 その床には足跡がついており、足跡が向かう先には開けっ放しの扉があった。

 しかもまだ新しいこの足跡を辿っていけば、あのマスターを追いかけて捕まえることができると判断した全員は、その扉から続く路地裏へと向かって自分たちも走り出した。

 しかし……。


「あ、あの……お、お前ら二人はここに残れ!」

「えっ?」

「酒場の連中捕まえておけ! 逃げられたらまずいだろ!」

「それもそうか。だったらそっちのことは三人に任せるぜ!」


 グラルダーに指示されて、ロオンとシャラードが酒場の連中を捕縛するべく店内に戻ったところで、グラルダーは先行するルギーレとルディアを追いかけて進んでいく。

 だが、裏口を出たすぐ横でルディアが立ち止まっていた。


「おっとととと!? おっ……ちょ、お前ら何してんだよ!? あいつら追わねえと……」

「ちょっと黙っててください! 今、マスターの行き先をルディアが調べてんです!」

「え……?」


 ルディアは久々に発動した探査魔術を使い、自分のできる範囲で路地裏を調べていく。

 すると多数の生体反応を確認できたが、そのほとんどが物乞いのホームレスや野良犬、野良猫だと判断。

 バタバタとあわただしく動いている反応を見せるのは、今のところただ一つしかなかった。


「見えたわ。ここから右に曲がってそのまままっすぐ行って、さらに左に曲がって直進中よ!」

「サンキュールディア!」

「……へー、すげえな。君は魔術師だって聞いてたけど、かなり遠くまで探査魔術使えんのかよ?」

「はい。それよりも今はあのマスターを!」

「お、おう、そうだな!!」


 思わずグラルダーの口から乾いた笑いが漏れてしまう程の周囲の光景だったが、今はそんなことに構っている暇はないルディア。

 自分たちがターゲットにして追いかけている男の存在がある以上、逃がしてしまえば間違いなくあの画家の男から冷たい視線を向けられるだろう。

 そう考え、先に行ってしまったルギーレの後を追いかけながらバタバタと慌ただしく路地裏を駆け抜ける彼女と、彼女を追う前に懐から取り出した細長い銀の警笛を吹き鳴らして応援を呼ぶグラルダー。

 その甲高い音を聞きつけ、騎士団の人間たちが路地裏の出入口という出入口を固めてくれるはずだが、問題はまだあった。


「セフバート隊長! 酒場の者たちが、隊長たちを捕まえるべく応援を呼びました!」

「何だって!?」

「気を付けてください! 一刻も早くあの男を捕まえてください!」

「わ……わかった!」


 仲間を呼ばれたとなれば厄介だ。同じ騎士団員同士で戦わなければならない。

 その先行する男の行動には、グラルダーから思わず舌打ちが出てしまうほどである。


「だいぶ引き離されちまったみてえだな」


 マスターを庇う騎士団員たちや常連客といった大勢の手下に阻まれた結果、ターゲットとの距離が大きく離れている。

 それを利用して表通りの人込みの中に紛れ込んでしまえば、人を隠すのであれば人の中が一番都合が良いので姿を隠されてしまうかもしれない。

 走りながら喋ってそう考えるグラルダーと、走るのが余り得意ではなくすぐにグラルダーに追いつかれたルディアだが、その時ルギーレは別のことを考えていた。


「いたぞー!!」

「くっ!?」


 ロオンがグラルダーに知らせた、マスターの仲間たちが呼び寄せた増援だ。

 その男女はルギーレの姿を見て、大声で他の仲間たちを呼び集める。追われつつも追わなければならない板挟みの状態。

 どれだけ仲間がいるのかは知らないが、恐らく魔術通信で呼び集めた仲間たちがたくさんいるのだとすれば、この町全体がルギーレの敵と言う事になる。

 かなり遠くに見える、赤いコートを翻しながら逃げていくマスターの男の背中を追いかけて路地裏をひた走るが、その途中で男たちの仲間が立ちふさがる。


「どけええええっ!! どかねえと死ぬぞぉ!!」

「ぐうああああっ!!」

「きゃあっ!」


 ルギーレはレイグラードの衝撃波で一気に敵を吹き飛ばし、路地裏を爆走する。

 レイグラードによって聴力も視力もアップしているので、まだ男を見失うには至っていない。

 今度は狭い路地をやや斜めに走って、近くに放置されているテーブルを踏み台にして、正面から向かって来た新たな増援を飛び越え前方回転で着地。

 後ろから追いかけて来ている荒くれもの達に少し距離を詰められてしまったので、ならばとそのテーブルを後ろからやってくる連中に向けて前蹴りで蹴り飛ばす。


「うわあっ!!」

「おわああっ!!」


 その後ろからやって来た新たな仲間も巻き添えになったのを、振り返りつつ肩越しに見ながらルギーレは走る。

 裏路地は、メインストリートの華やかさとは打って変わった明らかなスラムなので走りにくいが、それでも走るスピードは緩めない。

 しかし今の追っ手への対処で男の姿を見失いそうになっているので、ルギーレは野良犬が漁っている大き目のゴミ箱に足をかけて飛び乗る。

 そこから近くの窓の落下防止の柵に向かって壁を蹴って飛びつき、柵を使って屋根の上に飛び乗った。

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