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96.新兵器の出どころ

「……なるほど、そうなりますと、その農機具を改造した兵器の出どころをまずは掴まなければなりませんね」


 ひとしきりの話を聞いたロナは、自分の顎に右手の長い人差し指を置いて考え込む。

 麻薬の件とはまた別に、その魔術兵器の出どころを探らなければ同じような事件がこの先も続く可能性が高いからだ。

 とりあえず今の段階でわかっていることは、レイグラードでも切断が不可能な恐ろしい防御力を持っている素材を使っていることと、黒ずくめの集団がまたもや関与していることだった。


「あの捕まえた荒くれもんの奴らは、何か聞き出せてます?」


 形ばかりの敬語でそう聞いてみるシャラードだが、その質問にはロナではなくカリフォンが答える。


「いーや全然。あの連中は単純に麻薬を作って売り捌いていただけのやつらで、突然やってきたフードを被った黒ずくめの男にそれを売ってもらっただけみたいだぜ」


 実際に近くにいた大型の魔物を倒すことで、その魔術兵器の威力と性能をデモンストレーションしてもらった荒くれ者たちの集団は、即座にそれを購入した。

 しかもそれだけの性能があるにもかかわらず、値段も格安だったのだ。

 それを聞いたルディアが、荒くれ者たちは疑問を抱かなかったのかと首を傾げる。


「でも普通、そんな怪しい話を持ちかけられたら普通は怪しみません?」

「確かにそれはそいつらの中でも声が上がったみてえだ。黒ずくめの奴らにいくつか質問もしたけど、うまい具合にはぐらかされたみたいだぜ」

「はぐらかされた? 例えばどんな質問をしたんですか?」

「ええと……俺が聞いてんのは、この兵器はどうやって造ったのかとか、黒ずくめの奴はどこから来たのかとか、壊れたらどこに修理に出せばいいのかってこととかを聞いたんだってさ」


 しかし、それらの質問に黒ずくめの男は「それは秘密だよ」「いやいや全然」「壊れたらそれまでだから格安なんだ」とそれぞれの質問を流すようにして強引に会話を終わらせて、売るだけ売ってどこかへと去っていったらしい。

 それでも別に問題なく使えていたので、今まで人目につかないところでこっそりとやっていた麻薬栽培の効率も格段にアップし、満足していたのだとか。


「上手い具合に逃げられたってことか」

「そうらしいな。じゃあ、地道に出どころを探っていくしかねえか……」


 しかし、そこでロナから追加情報が入る。


「あの……一点だけよろしいですか?」

「はい?」

「実は最近、ちらほらと話を聞くんです。その魔術兵器の話とよく似たものを」

「ええっ!? それを早く言ってくださいよロナ様!!」

「申し訳ございません。今の話を聞いていて思い出したものでして。魔術兵器といいますか、妙に高性能な農機具や魔装具が最近になって市場で出回っていたりしている話を、ロオン隊長やグラルダー隊長から聞いておりまして」


 ロナが話した内容によれば、今回襲われた改造農機具以外にもまだバーレン国内で同じようなものが出回っているらしい。

 しかし騎士団が調査に向かった報告結果によれば、今回のように武器みたいなものはついておらず何も問題はなかったのだという。

 つまり、今回襲われたあの農機具が驚異の始まりになるということだが……。


「その出回っている奴を売ったってのも、もしかして黒ずくめの集団だったりします?」

「いいえ、それは旅の行商人が売ってくださったものらしいですよ。黒ずくめではなく、ちゃんとした商人の身なりをしていた後の証言もあります」

「だとしても、全く関係がないとは言えないような気がしますね。少なくとも、その出回っているもの以外にもまだ奇妙なものが売られていないか調べた方がよさそうだと思います、私は」


 ルディアがロナにそう言う横で、ルギーレとシャラードも同感だとうなずいた。

 ただし、国同士のしがらみもあってシャラードはその調査には参加できないらしい。


「申し訳ございませんが、これは我が国の問題ですのでシャラード様にはこれ以上の介入を控えていただきたいと思います」

「ええ、まあ……それはそうですけどね」

「何か不満でも?」

「今回は俺もその魔術兵器に巻き込まれてますしねえ。もし……もしですよ。この国のシェリス陛下とセヴィスト陛下から許可が下りれば、俺も捜査に参加させていただきたいかと」

「うーん……まぁ、それは両陛下の話次第だろうな」


 実際のところは、シャラードの立場はファルス帝国の将軍であるために彼の他国への協力は認められないだろうと考えるカリフォンとロナ。

 そしてシャラードも、許可が下りる可能性は低いと考えていた。

 ひとまず今回は話を終了し、用意してくれた騎士団の詰め所の空き部屋で三人は休むこととなった。

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