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8.思わぬ再会

「よし、潜んでいる魔物の情報とダンジョン内部の地図をできるだけ集めてきたぞ」

「こっちも買えるだけのものを買ってきたわ。お金の都合でこれしか買えなかったけど」

「あー、そりゃ仕方ねえよ。買える分だけで何とかするしかねえ」


 二人はこれからロックスパイダーの巣へと向かい、殲滅させて帰ってくるのが任務である。

 本来であればこの任務はBランク以上にならないと受けられないのだが、ルディアがなんとAランクの冒険者だということがわかり、彼女が依頼を受けることによってルギーレも同行できるようになった。

 しかし同行するからには失敗は許されない。

 だからこそ、こうして事前の情報収集や下準備は欠かしていなかったのだが、、思いもよらない話を町の人間たちから聞くことができた。


「えっ、勇者パーティーがこの町に来たって?」

「そうなんだよ。しかも俺たちと同じ依頼を受けてその洞窟に向かったらしいぜ」


 それを聞いて、ふとルディアは自分がこの任務を受けたときのことを思い出していた。


「あ……でも確か、ギルドの人から言われたわ。先にこの任務を受けているグループがいるから、任務が成功したらその人たちと報酬は折半することになるって」

「ああ、そーいやそんなことも言われたっけな」


 だがまさか、その先に引き受けているグループというのがあの勇者パーティーだったなんて。

 まさかこんなに早く再会するハメになってしまうのか?

 そう思うルギーレは、さすがに気まずすぎるのでこの任務をキャンセルして別のものにしようとルディアに提案する。


「うーん、でもねえ……一度請け負った任務の依頼をキャンセルすると、その分ギルドランクの評価に響いてしまうのよね」

「また上げればいいじゃねえかよ」

「そう簡単に言うけど、ランクが上がれば上がるほどその条件は厳しくなるのよ。言っちゃ悪いけど、あなたはまだDランクだから依頼をキャンセルしても下がる評価は微々たるものよ。でも、Aランクまで来ると一回の依頼をキャンセルするだけでランク昇進試験に落ちることだってあるんだから」

「お……おう……」


 冷静にそう言われてしまったルギーレは、頭をブンブンと振って考え直す。


「でもなぁ、俺の気持ちになってもみてくれよ。いくら俺がポジティブだからといっても限度があるんだぜ?」

「だったら見返してやればいいじゃないのよ、その剣で」

「え?」


 ルギーレとルディアは、同時に聖剣レイグラードへと目を向ける。


「あなたはまだ疑っているかもしれないけど、その剣からあふれ出ている魔力は確実に魔物を遠ざけるだけの力があるわ。だったらロックスパイダーの大群だって軽く蹴散らせるはずよ」

「できるか……?」

「できるわよ。だってあの金属の塊をバラバラにできたじゃないのよ」

「あ……」


 そうだ、そういえばそうだった。

 そう考えてみると、強大な力を手に入れた自分がいったい何を臆することがあるのだろうか。

 ルギーレは笑みを浮かべてうなずいた。


「わかったぜ……よっしゃ、だったら全部ぶちのめしてやるよ!!」

「それでこそあなたよ。さぁ、そうと決まったら早く行きましょう」


 この女は何かと自分を勇気づけてくれるんだな、とルギーレが思っていると、近くで話し込んでいた数人の町人たちがにわかに騒がしくなった。


「おい、勇者たちが戻ってきたぞ!」

「本当? だったら活躍をぜひ聞かせてもらわなきゃ!」

「行こうぜ行こうぜ!」


 その人々のやり取りを聞いて、ルギーレとルディアは顔を見合わせてうなずいた。

 そして人々についていくと、町の出入り口付近では勇者パーティーを一目見るべく人だかりができていたのだ。


「見て、あれが勇者マリユス様よ!」

「その隣にいるのが伴侶だって噂されてるベティーナ様だぜ!」

「二人とも勇者パーティーを率いるだけの超実力者だって話だったから、今回の依頼なんて楽勝過ぎてあくびでも出ちまってんじゃねえか?」

「そうよね。あの二人がいてくれたら無敵よね!!」


 相変わらず、勇者パーティーの人気は絶大なようである。

 しかし、目がよいルギーレはそのパーティーメンバーの表情がなんだか浮かないのに気が付いた。


「元気ねえな、あいつら」

「え、わかるの?」

「ああ、わかるぜ。イライラしてるっていうか、雰囲気が悪そうっていうか……」


 これはきっと何かあったんだろうな、と思っているルギーレの目の前で、勇者たちはその人込みを手を振って退け、町の中へと消えていった。

 しかしその際、ルギーレはパーティーメンバーの一人であるリュドと目が合った……ような気がした。

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