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3/5

さん。

一話の文字数を少なくし過ぎたせいで、結局5話になりました。

このあとラストまで投稿します。

──水曜日。

なんとか秘密特訓を行いたい私は、元山くんに「用事がある」と言って、お料理教室をキャンセルさせて貰った。


家庭科室で特訓を行うことにしたのだ。


しかし、場所が馴染みの場所に変わったからと言って、腕が上がる訳では無い。

「元山にあげるのは癪だけど、私が教えてあげるわ!」と、講師として自信満々に付き合ってくれた蘭ちゃんだったが……既にグッタリしている。



そして出来上がったモノ──それは『物体RX』(※仮称)だった。



蘭ちゃんの教え方が下手なわけじゃない。

ただ、元山くんの教え方が抜群に上手かったと知る。

『不味い』で済むようになったのは、私の実力が上がったからではなかったのだ。


「どうしよう……このままじゃ本当に、いつまで経ってもプレゼントなんてできないよ!」

「──もと子……」


そう嘆く私の肩に、蘭ちゃんは優しく手を置いて……天使のような笑顔で言った。



「…………諦めよう」



誠に潔い判断である。





翌、木曜日。

そもそも家庭科室は使えない日だが……何故か家庭科の先生が声を掛けてきた。


「はい、気を付けて使ってね」

「え……」


鍵を渡されたが……困惑した。


先生は元山くんに頼まれたそうだ。元山くんの信頼は厚く、特別に解放してくれるのだという。


私が一方的に弟子にはなったものの、元山くんはこれまであまり乗り気でなかったようなのに……

事実昨日も「無駄な時間を過ごさずに済んだわ~」と言っていた。いや、それが彼なりの気遣いなのだ。

いつものことなので、それは理解しているが……


(に、してもわざわざ?)


一体どうしたんだろう。


(──はっ! ……もしかして昨日、見られていた?)


元山くんが帰ってから家庭科室に移動したつもりだったが、もし見られていたならさぞかし気を悪くしたことだろう。

私が無理矢理頼んでいるにもかかわらず、キャンセルをした挙句、違う人に教わっていたのだ。

──しかも、相手は蘭ちゃん。

彼女がそうであるように、元山くんもまた蘭ちゃんが得意ではない。


今回の急なお料理教室……通常ならばご褒美のそれは、ご褒美ではなく、『お仕置き』とか『お叱り』とか、そういう類なのではないか。どういう仕様かは、よくわからないが。


(はわわわわわ……どうしよぉぉぉ……!)


おそらく、(なんとなく高そうな気がする)彼のプライドを傷付けたのだ。これは、滅茶苦茶怒っているに違いない──


戦々恐々としながら、とりあえず教室へ戻り、元山くんに声を掛けた。





「あ、鍵な。サンキュ」

「元山くん……」

「……なんだよ、間抜け面して。 もしかして、今日も用事だった?」

「う、ううん、ありがとう……」

「別に……」


凄く普通の対応。

いやむしろ、いつもより優しいような?


「行こうぜ」と言う元山くんの後に付いて、家庭科室に向かう。


(やっぱりおかしい……)


普段なら「俺がわざわざ許可を得てやったんだ、さっさと準備しろ」……みたいな一言を更に加える(※照れ隠し)のが、元山くんのスタイルだというのに。




今日の材料は、元山くんが用意してくれていた。あまりに至れり尽くせりで、私は不安になる。しかも──


「あっ!!」


卵を入れたボウルを落とす私に、彼は罵倒するどころか……


「……怪我するようなモノじゃなくて良かったな。 材料はまだあるから気にするな」


等と(のたま)ったのだ。

あまりに元山くんらしくない。


「どっどうしたの元山くん!? 今日は随分優しいような!!」

「…………なにを言っているんだい柊さん」

「明らかにおかしい! 口調が既に!」

「嫌だなぁ柊さん、僕はいつもこうじゃないか。 ははは」


こめかみに青筋を立てながら、元山くんはそう言う。──完全に無理をしている。


(……はっ!!)


きっと、度重なる私の料理の試食でおかしくなってしまったのだ──その可能性が一番高いことに気付き、慌ててお料理教室に終止符を打つことにした。


「ごめんなさい! もうコレやめよう!! そんなにも辛いだなんて……思わなかったの!!」


そう言った直後、


──ガァンッ!


鈍く、激しい金属音。

それは、私が先程落としたボウル。

拾った筈の元山くんが、それを下に叩き付けたのだ。

カランカラン、とボウルが音を立てて回る中


「……ふざけんなよ」


元山くんはそう一言呟いて、部屋を後にした。




呆然としたまま立ち竦む私には、何が間違っていたのかよくわからなかったが……追いかけて尋ねることもできなかった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 『物体RX』……もしかしてガンダム!?(///∇///)
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