表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

に。

「……美味しい!」


──これは私の台詞である。

説明する必要も無いと思うが、決して元山くんの台詞ではない。


その後……元山くんは手際良く、余り材料で見事なマフィンを作ってくれた。「どうしたらああなるのか不思議」と言いながら。


「弟子にしてつかぁさい!」

「…………は?」

「弟子にしてつかぁさい!!」

「……うん、意味わからん」


感動した私は元山くんに一方的に弟子入りし、今に至る。

口調がおかしいのは、前の晩観た任侠映画の影響だが、些細なことだ。




『有り得ない味』──それが元山くんの評価だった。

『不味い』と言って貰える今、私は確実に進歩していると言える。





「でもこのままじゃなぁ~……」


お料理教室は毎日な訳では無い。

家庭科室が空いている、水・金に使用許可を貰っている。

何も無い日は幼馴染みの友人、蘭ちゃんと一緒に帰るのが常。


「これじゃいつまで経っても、元山くんになにかプレゼントするとか無理だよねぇ」


私のボヤキに、蘭ちゃんは軽く舌打ちをした。


「毎回不味いとか言われてんでしょ? 」


蘭ちゃんは美人さんで、少し気が強い。だからか似たタイプの元山くんを、あまり好きではない様子。


元山くんの『不味い』を非難しているが、私のお菓子?に『物体X』という名前を付けたのは彼女である。そのセンスは素晴らしいが、根本は元山くんに近い。


「あんなのどこがいいわけぇ?」

「ハッキリしてるところとか、」

「デリカシーがない!」

「実は優しいところとか、」

「ツンデレかよ!」

「…………」


ブーメランだなぁ、と思ったけど、言うのは止めておいた。


「あんな男のために、もと子が(物理的に)傷付くのは耐え難いわ……」

「いやむしろ元山くんの方が、私のせいで(物理的に)ダメージを食らっているから……(主にお腹とか)」

「大体、元山になにかプレゼントするとかさぁ……どうなん?」

「……ん?」



「元山から教わってるのに、なに作るの?」



「────」



──それは、まさに正論だった。



指示されていることすらマトモにできないので、多少上手くなっても『教わったもの』しか多分作れないだろう。

しかも元山くんのが明らかに上手。



果たしてそんなものがプレゼントになるのか?!

プレゼントの定義とは!!



(……ならないとは言えない)


だが、それが私のしたかったことかと言うと、否。




私は蘭ちゃんと別れたあと、ひとり考えた。


(やっぱりプレゼントと言ったら……サプライズだろう……)


だからと言って『サプライズ』部分だけを抽出し、皆に頼みフラッシュモブでプレゼントを渡す……とかいうのも断じて違う。


私がやりたいのは──


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


綺麗にラッピングしたプレゼント(※未定だが食物・できればお菓子がベター)を渡す。


「えっ俺に!?」(※サプライズ)


開けるよう促すと、そこには彼が教えてないハズのモノ。


「──いつの間にこんなの作れるようになったんだ?!」(※サプライズ)


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


── こ れ だ 。(確信)



今一瞬、

「不味ゥゥゥゥ!!」(※サプライズ)

……というオチ的な画像が脳内に過ぎったが、それは私のやりたいことではない。


「美味しい」と言わせられないにせよ、「まあまあだな」とか「食えないことはない」位のサービストークは引き出したいところ。


(それには秘密特訓が必要だよね!?)


納得した私は奮起し、早速家のキッチンに立った。




──が、


「もぉぉとぉぉくぉぉぉぉぉ……!!」


普段温厚な母の、地から鳴り響くかの如き声。


私は勝手口から投げられるようなかたちで台所から出され、使用を禁じられた。


思い当たる節は山ほどある。

フライパンは何故か火を噴き、ボウルの中味は踊るように飛び散り、レンジを使えば中で破裂音。──


自分の才能(スキル)(※負の)を舐めていたのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 負のスキルすげぇ。www [一言] ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ この区切り線、キレイ……(///∇///) ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
[良い点] キッチンどころか、家ごと破壊しそうな負のスキルの強大さよ!(笑) とりあえず、いつもながらの良リズムで大変読みやすうございます。 脳内ツッコミと脳内テンションも安心の切れ味。(笑) […
[良い点] もと子ちゃん、前向き! いいぞー頑張れー!! 台所破壊シーンが好きですのー(笑) [一言] 蘭子ちゃんに料理を習えば色々解決する気がしますwww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ