剣舞祭編3
そして、ついに決勝戦となった。対戦はセリオン対アリオンである。
「セリオン、ようやく会えたな」
「ああ。おまえとの約束だったからな」
アリオンは初出場とは思えないほどの活躍を見せた。アリオンは十五歳で決勝まで勝ち残った。
「セリオン、これは決闘だぞ? 俺はまじで行くぜ?」
「来い。おまえの本気をこの目で見てやる!」
そう言い終えると二人は武器を取って構えた。セリオンは大剣を、アリオンは刀を。
満月の光が夜の二人を照らした。青き狼セリオンと赤髪のアリオン――
アリオンの瞳に鋭さが宿った。
アリオンは三回連ねてセリオンに斬りつけた。セリオンは大剣ですべてガードした。
アリオンの剣速が上がっていく。セリオンも剣速を上げる。
二人の剣が熾烈さを増していく。アリオンの刀がセリオンに打ち付けた。
「はあああああ! 紅蓮剣!」
「!?」
アリオンの刀を、炎が包み込んだ。アリオンの猛攻が始まる。揺らぎる炎の刀が振るわれる。
セリオンは守勢に立たされた。アリオンは刀で攻めた。アリオンの紅蓮剣がセリオンを押していく。
「くうっ!?」
セリオンは後ろに跳びのいてアリオンと距離を取った。そして再び大剣を構えると全身から蒼気を発した。
アリオンは炎の剣を鞭状に伸ばし、セリオンの大剣にからませた。
「ぐっ!?」
セリオンはもがいた。セリオンは手から大剣が離れないように気を付けた。試合中に剣が手から離れたら、即敗北である。
「今だ! はっ! 紅蓮煉獄斬!!」
アリオンは前に踏み込むと、セリオンめがけて炎の斬撃を放った。セリオンは紅蓮の炎に包まれた。
炎が燃え盛り炎上した。その後、炎が引いていく。
紅蓮煉獄斬はアリオンの必殺剣である。まともにくらったら、セリオンでもただでは済まない。
爆炎の中から蒼い輝きが姿を現した。セリオンは蒼気を全開にしてアリオンの必殺剣をしのいだ。
「アリオン、今度はこっちの番だ」
「俺の炎に耐えるなんて……」
セリオンの大剣が蒼白く輝いた。
「行くぞ!」
「負けるかあああ!」
セリオンとアリオンは猛烈な斬撃の応酬を互いに繰り出した。鋭く激しく剣が振るわれる。
互いにゆずらない、否、ゆずれないものがある。白熱した斬撃を制したのはセリオンだった。
セリオンはアリオンの刀をはじき飛ばした。
「うわっ!?」
セリオンはアリオンの前に大剣を突き出した。
「勝負あったな」
歓声と拍手が巻き起こった。観客はセリオンとアリオンの戦いをたたえた。
セリオンは左手でアリオンの右手を取ると上にかかげた。
「アリオン、おまえもだ」
「え?」
「おまえもたたえられているんだ」
「ちぇっ……ありがとう、セリオン」
戦いが終わった後、式典があった。
優勝者セリオンと準優勝者アリオンにメダルが与えられた。
「セリオン、素晴らしかったぞ。実にみごとだった。さすがは若き狼か」
「ありがとう、スルト」
「アリオンもセリオンにはおよばなかったがみごとだったぞ」
「まだまだ、力及ばずです」
スルトは二人にメダルをかけた。
「これにて剣舞祭を閉幕する! 今年も白熱したいい戦いだった!」
かくして剣舞祭は閉幕した。
「試合の後には宴を用意してある。これも毎年のことであるが、心行くまで楽しんでもらいたい」
スルトが言った。
食卓にパンとシチューが配られた。
セリオンとエスカローネは席についた。
「激しい戦いだったから、心配したわ……」
「ごめんな。心配をかけさせて」
「ううん、いいの。私は最後までセリオンのことを信じていたから」
「ありがとう、エスカローネ」
セリオンとエスカローネは食事に手を付けた。
「ふむ……これは母さんの味だな」
「よく分かるわね、ディオドラさんの味だって」
「小さいころから食べてきたからね」
「あのね、セリオン」
「? どうしたんだ?」
「私ね、妊娠したの」
「本当に!? すばらしいよ! 最高だ!」
「ありがとう、セリオン。そう言ってくれるとうれしいわ」
セリオンとエスカローネは互いに見つめ合った。
「エスカローネ、俺は愛してる」
「私もセリオンを愛してる」