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剣舞祭編2

そしてついに剣舞祭当日の日がやってきた。

剣舞祭――それはテンペルの祭である。

この日のためにシベリア人の猛者もさたちは剣の腕を磨き、実力を高めてくるのだ。

シベリア人の猛者たちのとってこの祭りは、日頃の実力を披露する一大イベントなのである。

それはセリオンにとっても同じであった。もちろん、アリオンにとっても。

祭が催されるのはツヴェーデンから離れたシベリア平原である。

そしてスルトが大会の司会を務める。

聖堂騎士からも何人もの男たちが、選手として出場する。

さらに、多くのシベリア人たちが観客となって選手たちの試合を見る。

セリオン、アリオン、アンシャルが選手として出場していた。

「セリオン、気をつけてね」

「ああ。ありがとう、エスカローネ」

「緊張してる?」

「少しはね。でも、いい緊張だよ。剣の冴えが上がるような、ね」

セリオンは目を閉じて深呼吸した。

「むしろ、ちょうどいいくらいだ」

「なら、安心ね。私はセリオンのことを応援しているから。絶対に勝ってね」

「ああ。アリオンとも約束したんだ。絶対に負けられない」

「さすがの『青き狼』も緊張しているのか?」

セリオンの後ろから声がした。

「アンシャル、それに母さん」

アンシャルとディオドラがいた。

「セリオン、無理はしないでね。お願いよ」

そうディオドラが言った。

「母さんは心配のしすぎだよ。俺は大丈夫さ」

「ははは、そういうセリフは、この私に勝てるようになってから言ったらどうだ?」

「……今年はアンシャルには負けないぞ?」

アンシャル。

通称「風のアンシャル」。

長い金髪、青い瞳、白いロングコート。武器は長剣。得意な属性は「風」。ディオドラの兄。

剣技の腕もさることながら、学者顔負けの博識ぶりは有名である。幼少期のセリオンに多大な影響を与えた人物の一人である。

「前回の戦いでは負けたけど、今回は俺が勝たせてもらう!」

「フッ、受けて立とう!」

セリオンとアンシャルは互いに戦意を高め合った。




スルトの司会のもと、剣舞祭は始まった。祭は盛大な盛り上がりを見せた。

一部、選手を気遣う瞳もあったが、全体として多くの観客たちが祭を楽しんでいた。

試合は順調に進んだ。セリオン、アンシャル、アリオンの三人は勝ち進んだ。

そして注目の好カード。セリオン対アンシャルが始められた。

セリオンとアンシャルが試合場に姿を現した。

セリオンは愛剣・神剣サンダルフォンを構えた。

アンシャルは白銀の長剣を構えた。

「行くぞ、アンシャル?」

「来い、青き狼!」

二人は十メートル間隔で平行に対峙した。セリオンは体勢を固めた。そして、アンシャルに向かってダッシュし、大剣を上から振り下ろした。アンシャルはそれを長剣で受け止める。

アンシャルは反撃した。長剣でセリオンの大剣をはじくと、長剣を横一文字に振るった。

セリオンは大剣でこの攻撃をガードした。アンシャルの連続攻撃がセリオンを襲う。

セリオンは的確にそれらの斬撃を斬り払った。二人の斬り合いが激しさを増していく。

セリオンが大剣で鋭くアンシャルに打ち付けた。

「くっ!?」

アンシャルはその一撃を受け止めた後、バックステップしてセリオンと間合いを取った。

「腕を上げたな、セリオン」

二人は再び間合いを取って対峙した。

「私もそろそろ本気を出すとしよう!」

アンシャルの長剣に風のさざ波が起こった。

(来る!)

セリオンは思った。

風刃ふうじん!」

アンシャルは風の刃を放った。セリオンは大剣で風の刃を斬り裂き、迎撃した。

続けて、アンシャルは風刃を次々と撃ち出してくる。セリオンは冷静に風刃を斬り裂く。

風王降臨ふうおうこうりん!」

アンシャルが唱えると、上空に風が渦巻き始めた。そして、気流の柱が上方から下方に流れ落ちた。

大きな気流の衝撃が巻き起こった。セリオンはただちに反応し、バックステップで距離を取った。

風王降臨の威力はすさまじかった。たとえセリオンでも、まともにくらったら一撃でやられていただろう。

その威力によって、気流が落下した地面は大きく破砕されていた。

「さすがはアンシャル……か」

セリオンはしゃがんだ姿勢から立ち上がり、元の体勢へと戻った。

「風王降臨をかわしたか……やるな、セリオン」

再び二人は距離を取った。セリオンもアンシャルも互いに剣を構える。

「はあああああああ!」

セリオンの体から蒼い気が放たれる。凍てつく蒼白な闘気が――

「蒼気か。おまえの本領発揮だな」

アンシャルがつぶやいた。

セリオンの蒼気は、全身を覆い、神剣サンダルフォンまで届いていた。

アンシャルは風刃を放った。セリオンは軽々と風の刃を斬り裂く。

とたんに、アンシャルはセリオンとの間合いを一気につめた。そして必殺の技を繰り出した。

風王衝破ふうおうしょうは!」

風の衝撃がセリオンに叩きつけられる。セリオンは蒼気の刃を打ち付ける。

二人の力と力がぶつかった。均衡がはじけた。

セリオンは大きな力強い衝撃を受けて、後ろに吹き飛ばされた。そのままあおむけにダウンする。

すずさま審判がカウントを取った。

「まだだ……まだ、終わらない!」

セリオンは大剣にもたれかかって立ち上がる。カウントがやむ。

「ほう、風王衝破を耐えるか……だが、おねんねしていたほうがよかったかもしれないぞ?」

「俺は絶対にあきらめない!」

「意思はほめよう」

アンシャルは長剣を上にかかげた。アンシャルを中心に風が集まって渦となす。風の渦巻きが発生した。

「次で最後だ。この圧倒的な風の集まり……くらえ! 風王烈衝破ふうおうれっしょうは!」

圧倒的な風がセリオンに向けて放たれた。セリオンに逃れるすべはない。

セリオンは全身から蒼気を放出すると、蒼気の衝撃波を放った。

翔破斬しょうはざん!」

二人の必殺技が激突した。威力はセリオンの翔破斬のほうが上だった。翔破斬は風王烈衝破を破り、無防備なアンシャルめがけて突き抜けた。

「うおおおおおおお!?」

アンシャルは蒼い衝撃に飲み込まれた。

満月が目に映った。気づくとアンシャルは倒れていた。

「私は、負けたのか……」

「アンシャル」

「セリオン」

セリオンは倒れたアンシャルを見おろした。

「強くなったな、セリオン。この私を倒すとはな。今のおまえなら聖騎士にもふさわしいかもしれないな」

「ありがとう、アンシャル」

そう言うとセリオンはアンシャルの手を握った。そしてゆっくりと立ち上がらせる。

そこに観客から盛大な拍手と声援が二人に送られた。

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