表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

マジカル☆真紀子

総監督:知人F


私の友達、マジカル☆真紀子さんはなんでも変身できる魔法少女のようです。


普通の高校生を装っているらしいですが、その節々に怪しさの目立ついわゆる電波ーーもとい純朴な少女なのです。


そんな彼女と友達な私は朝から下校までその魔法少女的なジャスティスにつき合わせられていました。


「おはようB子さん!今日もかわいいね!」


「ありがとう真紀子ちゃーー


「ちょっ、ちょっと待ってね?!.....もー、マリ!友達といるときは出てこないでって言ったじゃない!」


彼女は私の言葉を遮ったら、そのままカバンに着いた人形を握りつぶすように持ってかがんで話しかけ始めました。

普通で一般的で一介の普遍な高校生である真紀子ちゃんは、謎の生物マリを普段はストラップとしてぶら下げていますが、何か事件が起こるとマリは彼女だけに分かるようにしゃべるそうです。

.....これは彼女の生徒手帳にびっしりと書き込まれていた魔法少女マジカル☆真紀子の設定の一旦として知りました。彼女の生徒手帳は痛い設定を通り越して演劇の台本まであります。


「どーしたの真紀子ちゃん?」


なんてことのない質問ですが、唐突に始まったマリとの会話は私が口を挟まない限り終わらないらしく、前回無視し続けてみたら45分間も彼女は話し切って見せてくれました。もう魔法少女なんてやめて女優になったほうがいいと思っています。


「う、うーんうん、何でもないよ!....マリ、怪人マッソーマンのことは私に任せておいて...!」


誰ですか、マッソーマン。

時たま彼女が語尾に漏らす怪人や事件の名前ですが、主要なボスキャラクター以外は大体一回しか出番ーーもとい一回でマジカル☆真紀子に倒されてしまうので悪の組織も人件費や労基署への報告が心底大変そうに思えます。

保険は怪人にも降りるのでしょうか。


「じゃあ、行こうか」


「うん!」


こうして私は長い通学路の儀式を終えない限り、学校にたどり着くことが不可能になります。ちなみに、真紀子さんはどの時間帯に学校に向かってもポケモンのトレーナーにエンカウントするように確実に発見されるので逃げるのは無駄です。走り抜けようとすると、マジカル☆猛虎原爆固めをかけられます。

全力疾走する私に追いついて、背面系のプロレス技を繰り出せるならもうアサシンのほうが向いているかもしれません。


ひょっとして、魔法少女以外なら何でもできるのでは?






~授業中~


授業中は比較的平和です。なぜなら、真紀子さんはーー


「先生!かいじ....じゃなくて体調悪いので保険っ室行ってきてもいいですか?」


一日一回怪人討伐イベントをこなさなければならないからです。

変身ヒーローものの醍醐味と言えば、バトルです。バトルしない回は恐らくないと言っても過言ではないでしょう。彼らは大体一週間に一回のペースで戦いますが、マジカル☆真紀子さんは彼女の中で毎日24時間放映されているため、放映され続ける限り戦わなければなりません。まるでわんこそば。

しかし、本当に彼女は授業を抜け出してまで、怪人(仮)を毎日倒しに行っているわけですが、裏では何をやっているのでしょう。

まさか、本当に怪人を倒しているとでも?


「..............」


「.....先生、私も気分が悪くなってきてしまったので保健室言ってきていいですか?」


彼女の活躍の引き立て役になるのは正直勘弁願いたいのですが、その裏に隠された涙ぐましい努力を見てみたくないわけではありません。






~階段の踊り場にて~


とはいえ、彼女がどこに行ったか保健室くらいしか手掛かりがないので保健室に向かってみましょう。


「..............!?」


向かう先の降り階段の踊り場に彼女は寝転がってなんとPCをカチャカチャといじっていました。


なるほど、涙ぐましい努力なんてものはなく、ただただサボりたかっただけですか。


そうおもうと、授業を抜け出してまで見に来た自分が馬鹿らしくて仕方がありません。


「怪人の種類もそろそろストックが尽きてきちゃったし、ここらで新しく作りますか.....」


違うアレ執筆してらっしゃる!

なんと、生徒手帳から脱却して彼女は電子媒体に移行していたようです。

あ―そういえば、最近生徒手帳の回収が行われていましたね。あの時どうやって乗り越えたのかわかりませんでしたが、なるほどすべてのデータを紙からこちらに移動させていたわけですね。

それにしたって手作業だったでしょうに、まったく変な方向に涙ぐましい人です。


「あ、そうだ!B子ちゃんが実は悪役っていうのも....そう、名前はエリザベトン!」


「それだけは絶対やめてください」


「ひえっ!B、B子ちゃん!?いつの間に!?まま、まさか私の独り言聞いてたりとかは....」


「(軽くうなずく)」


「いやぁぁっぁぁぁああ!」


そしてその次の日、魔法少女引退宣言をした彼女は文芸部に入部するとともに、処女作『魔法少女の夢』でその年の金枝出版新人賞を受賞。高校卒業後はメソッド記憶法を駆使した若手カメレオン女優として某国民放送の朝ドラや日曜映上『リーガール!』の主演に抜擢され、ハリウッドデビューも果たしました。

いまでは私のいい友人です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ