違和感の正体は?
シリル様に訪問の伺いの手紙をだすと、使いに出したものが早速返事を持って帰ってきた。用意してあったようで、すぐに侍従長から差し出されたとのこと。ちょっと怖いです、シリル様……。
さて、参りました王宮。
以前の我が家ともいえる場所ですが、親しみなんて湧くはずもなく。来たばかりなのに正直もう帰りたいですが、頑張りましょう。
訪いを入れると、侍従長がすぐに案内をしてくださった。
……そうだわ。アンリやレイが年上とはいえ、まだこの頃は別の方が取り仕切っていた。ついつい前の思い込みで考えてしまっていたわ……。
目的の9割程度が空振り確定。えええ、帰ってもいいですか?
私の内心とは裏腹に、足は前に進む。ほどなくして客間についてしまった。
扉を開けてもらうと、既にシリル様は席に着いていらっしゃった。満面の笑みで迎えて下さり、挨拶を交わす。
「リリスの話を聞いていると、私は避けられても仕方ないと思っている。だからこそリリスから連絡が来てとても嬉しいんだ」
にこにこと笑うシリル様。本当に嬉しいの伝わってくる。ごめんなさい。既に2度ほど帰ろうとしていました。
音もたてずに紅茶がサーブされる。芳醇な香りが匂いたつアップルティー。おいしそう!
「私がこの紅茶が好きだとよくご存じでしたね」
「母上とのお茶会でよく嬉しそうに飲んでいただろう?その笑顔が見たくて用意したのだが、好きなものは同じで安心したよ」
……?
王妃様とのお茶会?王妃様とお母様は不仲のため、王妃様の催すお茶会には呼ばれたことはない。もちろん私も同様だ。それが多方面で私が軽んじられる原因となったのだけど……。王家主催の場合、一応呼ばれはしたが、そこにシリル様が同席し話したことなど全くない。
「好きなものは同じですが、異なることがあるようです。私も母から直接聞いたわけではなく、周りからの進言のみなので確実とは断言できませんが……。私の母と王妃様は、その。ひと悶着あり、あまり仲が良くなかったようです。なんでも王様にかなり思わせぶりな態度をとったとか」
色んな人に尻軽女の娘って言われ続けましたからね!
「そうなのか!?私の記憶だと、私との婚約がきっかけで母とも交流を持つようになったが、いつもリリスを褒めていた。それにリリスの両親は幼い頃から相思相愛で、非常に仲が良い夫婦だったはずだ。それこそ他に目を向けることなどありえないくらいに、お互いを尊重しあっていて、私たちもああいう夫婦になろうとよく話していたものだ」
両親の仲が良いのは私も同じですが、王妃様との関係はやっぱり違うようです。私の微妙そうな顔を見て、シリル様はふむ、と頷くとベルを鳴らす。すかさずメイド長が入ってくる。
「何でございましょう、殿下」
「リリスが両親に贈り物をしたいそうだ。夫婦の思い出のものがあれば良いかと思うのだが、なかなか思いつかなくてな。なにか二人に関わる情報があればなんでもいいから教えてほしい」
「そうですね……。リリス様のお母様、ウェンディ様と侯爵様、そして両陛下は同い年で学院に在学中に仲良くなられたようです。ウェンディ様は大変な才媛で、特に語学に秀でていらっしゃいました。その才能が認められ外交官として採用、同じく外務を担当されることになった侯爵様と仲を深められたと聞いております。あまりに恋愛に興味がなく侯爵のアプローチに気がつかないので、両陛下がかなりお膳立てをしたとか。反応が薄いウェンディ様に対して諦めぎみの侯爵様に、陛下が大きな花束を持たせて「行け!!」と背中を蹴り出したのは印象深い思い出でございます。その花束に、王宮で栽培しておりますエンペラーローズが入っておりましたので、この花をいれても良いかもしれませんね。殿下の許可がもちろん必要となりますが……」
「もちろん許可するよ。この手の話題はメイドたちのほうが精通していると思って聞いたが流石だな。助かった、感謝する。」
「滅相もございません。お役に立てたのでしたらなによりでございます。では、またなにかあればお呼びくださいませ」
そう言って、再び音もなく部屋から下がっていく。
「さて。メイド長の話だけで判断していいのか迷うところだが、嘘をつく必要もないことだ。となると、私たち二人の話と今回の話はまた食い違っている」
「はい。私たちの両親の関係性が全く異なります」
「ああ。しかし、結婚する相手は変わらない」
そう。必ず結婚する相手は同じ。
「そこに至るまでの経緯が違いすぎるということですね。その原因となっているのは……」
――私のお母様。




