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真逆の過去

どうして、なぜ。


頭の中が疑問で満たされる。

常に冷たく私を睥睨していた目は優しく細められ。

話しかけても最低限の返事以外は真一文字に結ばれていた口許は、緩み白い歯とえくぼが見えている。


あれだけ見たいと渇望したシリル様のお姿が目の前にある。

いえ、見たことはあるけれど。

決して私には向けてくださらなかったその笑顔。


その笑顔を見ても、嬉しさより不信感しか募らない。

何かの罠でしょうか、と胡乱な目でシリル様を見てしまう。

そんな私の視線を受け、さらにシリル様が笑み崩れた。


そして、嬉しくてたまらないと言わんばかりに早足で私のもとへやって来て、そっと手の甲にキスを落とす。


「リリス、迎えの時間よりかなり早く来てしまったことを許してほしい。またリリスと共に居られると思うと気が急いてしまった」


リリス?いつもフルネームで呼んでいたのに。

手の甲にキス?

そんなこと公的な場以外でされたことはないのに!


ありえないことの連続で、パニックどころかショートしかけた頭を一瞬にして冷ました言葉。


"また"


これは、シリル様も過去を持っているということ?

でも、それにしては態度が違いすぎる。

思い過ごしなの?


……聞くしか、ない。

分からないことや辛いことは一人で抱えずに周りを頼りなさいと、いつもレイは言ってくれた。


アンリはお茶の手配をしている。

少しでも離れようと、窓際のソファーへシリル様をお誘いする。


なぜか隣に座ってこられた。

経験のない距離感に戸惑いつつも、内緒話をするには良い距離だと思える。


「シリル様、"また"というのはどういう意味ですの?」


本当は"過去の記憶がございますか?"と聞きたいのですが……。


シリル様は私の髪を撫でながら答えてくださった。


「リリスが疑問に思うのも無理はない。実は私がリリスと入学式の日を迎えるのは、これが二度目だ」


!!!

やはり、やはり!

シリル様にも過去の記憶があるのですね!

でもそうならば、記憶にあるシリル様と今のシリル様。なぜこうも違うのでしょうか?


シリル様を見つめると、シリル様は優しく微笑み返してくれる。

その目のなかに目を見開く自分の姿が写っている。

いつか、と過去には夢にまで見たことが今日は連続で起こっている。

けれど、不思議と凪いだ気持ちなのは、心がついていけないからなのか。

それとも、気持ちが薄れているから、なのか。


「どうして、そんなことが起きていますの?」


私の一言に、シリル様の顔が悲しそうに伏せられる。


「20年後の今日、リリスが病気になった。毎日神に祈り、手厚く看病したものの亡くなってしまったんだ。そのことに絶望した私は、王家に伝わる時の魔石を使い、過去――今に戻ってきた」


「そんなことが……」


「可能なんだ。だから私はここにいる。片道切符で、元の時間に戻ることはできないが。

――私にとって、愛しいリリスがいる場所が私の居場所だからな」


私の毛先に口づけながら、目元に溢れんばかりの愛情をのせて。

まっすぐ見つめてくるシリル様に思うのは――




戻ってくる場所、確実に間違えていますよ、シリル様!!

これであらすじ分は回収しました。

そろそろ他キャラも出せるよう頑張ります!

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