違和
ちょうど良い所で切ったら短くなってしまいました。
その分続きを早めにあげられるようにしたいと思います。
今日が入学式当日ということなら、数時間後にはエスコートをしに嫌々シリル様がいらっしゃる。
なぜ私の記憶があるのかは謎だけれど、利用しない手はありません!
シリル様が大好きだったのは本当ですが、さすがに長年の冷遇により、私の心は折れてしまいました。
どんなに愛情を育てていても、水を与えられなければ枯れてしまうもの。
貴族院に通っている間、落ち込む私を気にかけてくださった方々。
冷たい王宮で励ましてくださったレイ。
遠征先からでもお手紙を送ってくださったお兄様。
彼らの方が、私のことを本当に思ってくださっていた。
そういう方と結婚をしたい。
もう二度と、あんな冷たい結婚生活は送りたくない。
シリル様にはもう苦手意識すら持っているので、今なら冷たくされても怖くありません。
むしろ慣れてしまいましたわ!
皇太子との婚約を私から解消などできるはずがありませんので、どうにかしてシリル様から解消を申し込んでもらわなければなりません。
一番の近道はエリーゼ様との恋の成就でしょうか。
……でも、私ができることって何かあるのでしょうか?
特に思い浮かぶことなく、時間が過ぎていく。
アンリに手伝ってもらっていた支度も、終わってしまった。
さて、目標は決まったものの解決方法が浮かばないのは問題です。
頭を抱えそうになった瞬間、軽やかなノックが響く。
多分お兄様でしょう。シリル様はいつも時間ギリギリにしかいらっしゃらないし、私の部屋になどいらっしゃることはない。
私が頷くと、アンリが扉を開けにいく。
そこに立っていらっしゃったのは――
笑顔の、シリル様でした。