表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トキメキ魔法は呪文いらず  作者: 若松ユウ
Ⅰ「二人の出逢い」
14/19

014「ピンチにはチャンスを」【Te006】

 そのときは、いったい自分の周囲で何が起きたか、まったく分からなかった。

 それでも、とにかく助かったのだということだけは、なんとか理解できた。


  *


「まったく。だから、いつも言っているではありませんか。キチンと学を修めないと、いざというときに困ると」 

「うるさいな。こんなときまで小言で責めないでくれ」


 轟音でスッカリ目が覚めたセレンが、タングステンの手と肩を借りながら立ち上がる。

 そのあいだに、女は男の姿を探し、瓦礫の下にある隙間に閉じ込められていることに気付くと、腕を引いて助け出そうとする。


「世話の焼ける子分だね」

「へぇ。面目ないっす」


 男が瓦礫の隙間から這い出たときには、すでにタングステンとセレンはテルルに近寄り、セレンは団子になった結び目を解き始めていた。


「怪我は無いか? どこか、痺れたり痛んだりしてない?」

「ちょっと腕が怠いけど、これくらい問題無いわ。ありがとう」


 ギリッと奥歯を軋ませ、女が口惜しそうに三人を睨むと、ステッキの杖先をテルルに向けて詠唱する。


≪クリスタリザツィオーン≫

≪アネステジー≫ 


 よく舌を噛まないものだと感心する早口で、タングステンが女より先に詠唱すると、女は一時停止ボタンを押した映像のように、その場でピタッと動きを止めてしまい、そのまま背後に倒れる。

 それを目の当たりにしたテルルが、拘束が解けたことで自由になった両手で口を押さえ、ヒャッと小さく悲鳴を上げるが、セレンは耳元で優しく諭すように説明する。

 

「大丈夫だよ、テルル。あの魔法は、しばらく気絶させるだけだから。じきに起きるさ」

「えっ、そうなの? それなら、まぁ、良いんだけど……」


 床に頭を打ち付けそうになった女を、男が咄嗟に腕に抱えて支える。心配そうに眉をハの字に下げる男に向かって、タングステンは、たたみかけるように警告を発する。


「その彼女と同じ目に遭いたくなかったら、引きずるなり背負うなりして我々の前から姿を消したまえ」

「クッ。覚えてやがれ!」


 悔し紛れに小物らしいセリフを吐き捨てると、男は女を背中に負い、ヨタヨタとその場をあとにした。

 二人の姿が見えなくなったところで、タングステンはステッキを懐にしまい、代わりにチェーンを引き出しつつ、ベストから時計を取り出す。

 

「そろそろ来るでしょう。五、四、三、二、一」


 秒針を見ながら呟いたのが合図だったかのように、針が十二になったタイミングで、三人のもとへクロムとアルゴンが駆けつけてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ