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神に願いを  作者: 北西みなみ
次の世界へ行く前に
9/15

試してみる?

「うーん、難しいねぇ。おかえり、何が悪かったの?」


「玉祖命様! ……玉祖命さまぁー!!」


長らく見ることのできなかった悪意のない瞳にほっとし、思わず縋り付いて泣きまくった。玉祖命様は優しく抱きしめて頭を撫で続けてくれた。ごめんなさい、天之御中主神様。浮気じゃありません。ごめんなさい、玉祖命様。涙と鼻水でぐちょぐちょにして。


暫くして落ち着いた私は、玉祖命様から体を離し、玉祖命様に訴えた。


「どうなってるんです? あの世界、攻略対象者、いませんでしたよ」


「え? いるよ。……ほら、ここ」


そう言って、玉祖命様が水鏡を指し示す。そこにはあか抜けない男性……ってこれ、会長!?


「うん、そうだよ。他にもほら、こっち」


玉祖命様が差し出す先にいたのは、確かに言われれば面影があると言える攻略対象者達。


「ね? いたでしょう?」


呆然としている私に、にっこり笑っていう玉祖命様。


「じゃ、じゃあ、私何で、いなかったことになってるんですか? 家族がいなかったのはどうしてですか?」


「え、だって君に幼少時代はないし。生まれた時から存在しちゃってると、シンフォニー高校行けないかもしれないからね。サービスで入学から始めてみました」


ゲームの開始位置だしね、とさらっと言われる。


「そんなの、玉祖命様の力でちょちょいっと合格させてくれても。というか、入試まで眠ってた私の人格がゲーム開始直前で覚醒するとか……」


「それは駄目。私は、世界を作るところまでは好き勝手するけど、出来上がったものは極力手を出さないようにしているから」


「じゃあ、攻略対象者たちが皆モブに埋もれているのは……」


「この時期に生まれた子供に、こんな名前を付けろ、と最初に決めておいたからだねぇ。皆好き勝手生きた結果があぁなんだよ」


「わ、私、ゲームのイベントみたいな生活が楽しみたいんです。彼らのキャラは変わってもらうのは……」


「困る?」


「はい……」


「うーん、彼らをイベント通り動かさないとならないとすると。周りの評価も一緒でないと無理だからなぁ」


「む、無理……ですか?」


やっぱり我が儘過ぎだろうか。


「いや。無理ではないよ。けれどそうなると、そうだなぁ……。君と直接かかわる人間をいじることになるから、楽しくはないかもしれないよ?」


「な、何故ですか?」


「そりゃあ、不自然だから。……そうだな。世界を作る前に、一旦お試ししてみる?」


「お、お試し?」


お試しって何だろう。世界を作る前ってことは、出来た世界を覗き見するとかでもないんだよね?


「そう。今回は君に夢を見せる。そこは現実の世界ではないけれど、人間にとっては現実と変わらないはずだ。そこで暫く過ごして気に入ったなら、実際に作ろう」


成程。それは確かにお試しだ。


「は、はい。お願いします」


「うん、それじゃあお休み」


玉祖命様が優しく頭を撫でながら言う。私は夢の世界へと旅立った。

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