どうしたい?
「うーん、やっぱり気に入らなかったかぁ。難しいねぇ」
そう言いながら、ぽふんと頭に手を乗せてくる玉祖命様。久しぶりなはずなのにすっかり馴染んでいるその感触にほっとした。
「さて、どうしようか? もう一度試してみる?」
「いえ。……多分、ゲーム通りになるためには、周りの人がいなくならなければならないと無理だと思うんです」
当然と言えば当然なのだけど。
「うん、そうだね。その可能性は高い。けど、可能性がないわけでもない。出来るまで続けるなら付き合うよ?」
そう言ってくださる玉祖命様に首を振る。
「ありがとうございます。でも、もういいんです」
「いいの? 本当に?」
玉祖命様が覗き込んでくる。私は、しっかりと頷いた。
「はい。結局、私の望みは無謀なものだったんです。これ以上、続けて何度も失敗するより、叶わない夢だった、と諦めた方が良さそうです」
「そっか。それなら、これからどうしようか」
と、言われても、私、通常死んだらどうするのかなんて知らないし。
「……どうすればいいんでしょう。普通、どうするものなんでしょう?」
「まぁ、普通だと、記憶とかなくして転生の流れに乗る所だと思うんだけど。でも、このままいることも出来る」
「ここに?」
そんなことが出来るのだろうか?
「そう、ここに。私の神子となって共にあればいい」
神子……。神子というのは、人間でいう伴侶のようなものじゃなかったっけ? 確か、住吉神の話の時に出てきてた……。
「うん。私に神子はいないから、君が望めば唯一の神子ということになるね」
「私……天之御中主神様が……」
一応、来世も信仰するって約束したし……。
「天之御中主神は邪魔しない」
確かに……。
この状況を妨害してこないってことは、どうでもいいということなんだろう。私が信仰を辞めようと、信仰したまま玉祖命様の神子になろうと。
「でも……」
「君は、特に行きたい場所もないでしょう? ならここに留まってもいいんじゃないかな? 新しく生まれる君は、君と同じ魂であっても同じものではなくなってしまうのだから」
優しく囁く玉祖命様に、ふらふらと頷きそうになる。
ふ、と。私が何も知らない状態で生まれたら、乙女ゲーム世界も普通に生きられたのではないか。そんなことが思い浮かんだ。
「行きたい場所……。記憶ない状態で、さっき転生していた世界を生きてみたい、かも……」
ぽつりと呟いた。