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神に願いを  作者: 北西みなみ
再リベンジ 私の望んだ世界
12/15

ゲーム期間を過ごして

初イベントから数ヶ月。


私は、各種イベントをこなしていった。ゲームと現実との違いも段々分かってきた。


攻略キャラがいる場所は決まっていないので、この時間にここに行けば会える、とかはない。そして、見つけたからといって話せるということもない。


そりゃそうだ、生徒会役員と学年も違う単なる一生徒。用もないのに話すことはない。せいぜい、会長にあった時に学校案内出来なくてごめんね、と謝られ、それ以来、すれ違う時には挨拶するようになった程度だ。


生徒会は皆挨拶されれば普通に返すし、毎回挨拶していれば、向こうからしてくれるようにもなる。従って、何も特別な所のない目立たぬ一生徒をいじめようとする奇特な人間もいない。


なら、全然ゲームと違うのかというと、学校行事に絡んだイベントは結構ゲームそのまま起こる。起こるんだけど、選択肢は役に立たない。何故なら、学校には沢山の人がいるからだ。


イベントの時はヒロインと攻略キャラだけの空間になる、なんてミラクルは起きない。困った状態になれば、先生やクラスメイトがまず助けてくれる。このゲームのイベントは、基本学校内で起こるものばかりなので、攻略キャラ外がいつでもいる。皆いい人たちなので、生徒会が出張るほどのことがないのだ。


つまり、攻略のしようがない。


主人公は、元気で笑顔が可愛い前向きな女の子。絶世の美女ではない。


イベントとかでブーストしてもらえない限り、人気のある生徒会役員にキャーキャー言っているファンの一人にしか過ぎない。


……どうしよう、これ。乙女ゲームに転生した意味が全く分からない。


イベントが起こっても好感度を上げる機会がないとなれば、私が持つアドバンテージは、攻略キャラの設定に詳しいということだけ。とはいえ、好きな食べ物とか知ってても、それを活かす機会なんてないし、幼い頃のトラウマやコンプレックスなんて、知っててどうなる。相手が隠している弱み。それを私が活用できるとしたら、脅迫くらいしかないのではなかろうか。


私は途方に暮れた。


これは、乙女ゲーム転生ではない。ちょっぴり余計な先入観を持ってしまったがゆえに、純粋にキャーキャー言うことすら出来なくなった、残念人間の物語だ。


「うぅ。だけど、これは確かに私の希望……」


玉祖命様は、現実はゲームよりも複雑で、そう単純に物事は動かないと忠告してくれていた。それでもいいと言ったのは私だ。


この世界は、私の希望に出来るだけ沿ってくれた結果なのだ。文句なんて言える訳もない。


ここは乙女ゲームの世界ではない。本人達が自由意志で生きているのは間違いがないし、本物の命だ。だけど、どうしてもこの世界の人物がゲームキャラに見えてしまうことがある。なまじ、性格が同じで趣味嗜好も設定と矛盾する所がなくイベントも発生するため、いまいち現実味がなくなるのだ。


一番最初の転生時、体が動かずオートで行動していた時と同じ光景を見るたび、ここが現実ではないゲームに思えてしまうのである。


結局、私は碌にイベントをこなすことも出来ず、ゲーム知識を活かして自分をアピールすることもせず、高校を卒業した。友達ともとても仲良くなり、全く白々しくない女の友情エンドで終えることが出来たのは幸いだったが。


涙の卒業の後、家に帰ろうとしたところで、懐かしい声が響いた。


『どうする? このまま続ける? それとも戻ってくる?』


玉祖命様の声だった。


私は、迷わず玉祖命様に答えた。

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