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17 きっと、目を覚まさない。

 きっと、目を覚まさない。


 朝顔はまるで死んでしまった人のように、青白い顔をしていた。

 体も冷たくて、まるで大きな人形でも抱えているような気持ちになった。その朝顔の体の冷たさに、まりもの心臓は激しく鼓動をした。

「双葉さん」小道さんが言う。

「はい」

 その小道さんの言葉に励まされて、まりもは朝顔を抱えたまま、大きな川の中を遠くに見える川岸まで泳いで移動を始めた。

 まりもの後ろには、紫陽花を抱えた小道さんがついてきた。

 

 まりもは必死に泳いだ。

 するとしばらくして、まりもの目指している川岸に明るい光がいくつか灯った。その光を見て、それはきっと橋の上にいた木ノ芽さん夫妻と警察のかたからの「こっちに来い!」と言う合図の光だとまりもは理解した。

 まりもがその光に向かって泳いでいるうちに、その光はだんだんとその数を増していった。あの警察のかたが言っていたように、ほかの警察のかたが応援に来てくれたのかもしれない。

「小道さん! そこにいますか!」

 まりもは後ろを見ないままで叫ぶ。

「はい! ここにいますよ!」

 後ろから小道さんの声が聞こえた。

 それがすごく、すごく嬉しかった。

 まりもは荒れ狂う川の中を泳ぎ続けた。自分でも信じられないくらいに力が出た。きっと、この冷たくなってしまった朝顔を助けたい、と言う思いが、自分にこれほどの力を授けてくれているのだと思った。

 やがてまりもは光のすぐ近くまで川の中を泳いで移動した。その場所まで泳ぎきることにまりもは、きっと奇跡的に成功した。

 たくさんの眩しい光の中に、木ノ芽さん夫妻と、それから大勢の警察のかたの姿が確認できるようになった。

「まりもちゃん!」木ノ芽さんの奥さんの声が聞こえた。

「木ノ芽さん。朝顔を! 朝顔をお願いします!」

 まりもはそう言って、ずっと腕の中に抱きかかえていた朝顔を、本来の朝顔の居場所である、木ノ芽さんの奥さんに向けて差し出した。

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