1 決して、涙を見せない。
若葉のころ
登場人物
双葉まりも 真面目な少女。元気。
秋葉小道 優しい人。メガネをかけている。
プロローグ
キス。……キス、キス。
本編
決して、涙を見せない。
その日、双葉まりもは一人の男性に恋をした。
ずっと陸上ばかりに打ち込んでいたまりもが、初めて恋をした相手の名前は秋葉小道さんという名前の年上の男性だった。
小道さんは奥さんをなくして一人暮らしをしている男性だった。
年齢は三十二歳。
そして、まりもは十七歳の高校二年生だった。
二人の歳の差は十五歳。
恋愛として、この年齢差はどうなのだろう?
やっぱり、よくないことなのだろうか?
最近、雨ばかり降る暗い曇り空を家の縁側から、眺めながら「はぁー」とまりもは大きなため息をついた。
「なにか嫌なことでもあったの?」
まりもの隣でおとなしく本を読んでいた朝顔がそう言った。
「どうせまたなにかろくでもないこと考えてるんだろ?」
朝顔の隣で小型の携帯ゲーム機でゲームをしていた紫陽花がそう言った。
木ノ芽朝顔と木ノ芽紫陽花。
二人はまりもの隣の家に住んでいる木ノ芽さんのところの双子の男の子の兄弟で、まりもの双葉の家と木ノ芽さんの家はとても仲が良くで、仕事で忙しい木ノ芽さんの代わりに、まりもがこうしてお休みの日には双子の面倒を見ているときがよくあった。
「相変わらず、朝顔は可愛いのに、紫陽花は可愛くないね」まりもは言う。
「まりもに好かれても嬉しくないよ」紫陽花が言う。
「そうかな? 僕はまりもお姉ちゃんに好かれてると、すごく嬉しいけどな」朝顔が言う。
二人は双子だから顔はそっくりなのだけど、なぜかその性格はあんまり似てはいなかった。
朝顔は温和でおとなしくて、紫陽花は活発でやんちゃな性格をしていた。
その二人の性格はどことなく、木ノ芽さんのところのお父さんとお母さんの性格に、それぞれ似ていないこともないな、とそんなことをまりもは思った。




