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作者: 下澤華月

今日は今年で1番寒く、

近年稀に見ないものらしい。


「そりゃ、そうだ」


顔をマフラーにうずめ、

しかめっ面で電車を待っていると


「うらっ!」

「うっ!」


首元に冷たい手を突っ込まれ、

変な声をあげてしまった。

こんなことをする奴は一人だろう。


「最後の言葉くらい聞いてやる」

「慈悲はないの!?」


振り返ればもう付き合って4年目になる彼氏がいた。

すごく不機嫌なオーラを包み隠さず出していることに気づき必死に頭を下げているのが面白くて、ついからかいたい欲が出てしまう。

あぁ、可愛いなぁ。


「もう、いいよ…」

「でも、怒って……」


うるうるとした瞳が目と合う。

その顔、反則だなぁ。


「怒ってないからそんな顔しないの」

「ホント!?」


あ、まずい。

無いはずの耳と尻尾が見えてきた。

垂れ下がった耳がピンと立ち、尻尾がぶんぶん振られている。


「嬉しいなぁ!」


ぎゅっと握られる手。


「ちょっ、外でそういうことは!」


私の前で電車待ちをしているおじさんと

目が合ってしまい、いつも以上に恥ずかしさを感じる。

気づいてないだろう彼氏は、ん?と言ってニコニコとしている。


「なんでもないよ……」


ぎゅっと握り返すと握り返してくれた。



「そういえば、今日は早いね?日直?」

「ううん、会えるかな?って思って」


そう言って笑う。

恥ずかしくなって、バカっ!

って言葉しか出なかったよ。

本当は、私もって言おうとしたのに……。


電車に乗ってからはそれぞれの近況報告をし、私が降りる駅に着いた。


「じゃあね!頑張って!」

「ん、ばいばい」


手放すのが名残惜しかったが、ゆっくりと手の力を抜く。

彼の温もりを確かに感じながら降りようとして、振り返って口早に言う。


「今日、そっちまで行っていい!?」


彼はポカンとした顔を一瞬浮かべたが、すぐに満面の笑みで顔を満たした。


「いいよ!俺待ってる!どれだけかかってもずっと待ってるから!!」


私はその返事が聞けたことに満足し、歩き出した。

今日は憂鬱な月曜日。

しかし、彼に朝出会うだけでこんなにも世界は変わってくる。

友人に4年も経つと飽きたりしないか、と聞かれたりもするが、私の答えはNoだ。

だってこんなにも彼が愛おしくて、会うだけで気持ちが晴れやかになってしまうのだから。

早く今日の予定が全て終わらないだろうか。

そうすれば彼にまた会えるんだ。


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