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言葉と世界

作者:けいと
雨の降る午後。
僕はいつもと同じように壁を背にファーストフード店にいた。しかし、いつもと違う点もあった。
今日は女の子が1人、僕の目の前に座っていたのだ。
僕らの間に言葉は飛び交うことはなく、ただただ一緒の席にいるだけでほとんどの時間を自分の世界と向き合うのに使っていた。もっとも、僕は、だが。
僕はパソコンのキーボードを叩いてた。彼女は携帯をいじっていた。
雨ゆえか店内に人は少なく、空間にはお洒落な音楽と雨のかすかなビートだけで演奏された音が僕の耳に入る。
彼女が口を開いた。
「ねえ、何してるの?」
彼女は携帯を片手に持ったまま、そして僕の方に口を少し開けたまま、声音に含みのない声で問いかけきた。
「秘密でーす」
僕は手を止めて一瞥をくれた後、すぐさまキーボートを叩き始めた。
「ええ、いいじゃん、別に減るもんじゃないんだし」
「俺の心がすり減る可能性がある」
僕は、次は一瞥もくれないで返してやった。
すると声の調子を上げて
「えーお願いお願い」
と繰り返しつぶやき始めた。
「はあ。そこまで言うなら。誰にも言うなよ。俺、繊細なんだよ。ガラスのハートなんだよ。バラされたらもう立ち直れないからな」
彼女が了承してくれたので一息ついて口を開く。
「小説、書いているんだよ」
「へえ、小説。見せて見せて」
目を見開いて興味ありげに彼女は言った。
「うーん、完成したらね。まだ途中なんだ」
「いいじゃん、途中でも。それに完成するまで待ってたら何時間待つとかそういうレベル超えちゃうでしょ。何十日も待たないといけないんじゃないの?それはやだよ」
「安心して、短編小説だから今日中に書き終わる。多分。もうちょっとで終わりそうなんだ」
「さいですか、じゃあ待たせていただきます」
そして、また会話のない世界に潜り込んだ。
と思っていた。
5分も経てば、彼女がまた質問をしてきた。
「なんで小説を書こうと思ったの?小説家になりたいの?」
「難問だね、僕も難答で返さないといけないな」
「難しくないでしょ、そんなに」
僕は微笑を浮かべた後、少しの間、黙考した。
唸りながら秒針が1周ほどしたとき、自信のない声で僕は言った。
「そうだな、僕の世界を残しておきたいから、かな」
「どういうこと?」
「僕はさ、言葉ってのは相手と自分の世界を繋ぐためのものだと思うんだ。」
「特に普通に生きていて、日常の中で使う言葉ってのは自分の世界をより一般化してしまう、悪く言えば自分の世界の個性ってのを多く抜き取ってしまうものだと思うんだよ。でも、それだから相手と容易に繋がることができる」
「だから僕は自分の世界をできるだけ壊さずに残してみようと思ったわけさ。今は誰かに伝えたいわけでもないし、見てもらいたいとも思わないけどね」
一通り話すと、彼女は果たして変人を見るような目で
「うーん、難しいね、よくわからないや」
「だよな、ごめん」
「いや、謝らないで、聞いたのはこっちだし」
「うん」
こんな、側から聞けば何を言ってるのかわからない会話もした。側から見なくても理解されてなかった。


雨も止み、空を覆ってた雲が何処かへ旅立ってしまった時間頃。
「終わった」
携帯をいじってた彼女はこの言葉を聞いてすぐさま携帯を下ろして
「見せて!」
と言ってきた。
「うーん、やっぱりなんか自分を見られるようで気分がよろしくないな。覚悟ができたらね」
「ずるい!約束が違う!見せろ!」
太陽が沈みかけ、紫と橙に彩られた空が見える頃、朗らかな声が響いていた。


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