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助けといくつかの疑問

「誰だ!」


包囲の内一人が、声のした方向を向く。

そこにいたのは、フードで顔を隠した何者か。ピシッとした、スーツのような服を着ている。明らかにミスマッチだ。

声からして男性。年齢は……、見当がつかない。


「貴様、この者の仲間か!?」


「この者……?」


その顔がこちらを向く。なにか探っているというよりか、何かを考えている様子だ。


「ああ、そうだ」


「……?」


頭に疑問符が浮かぶ。仲間? いや、俺は意識を取り戻してからは知り合いと出会っていない。そもそも、身近な大人なんて両親くらいのものだ。


「やはりか! さあ、顔を出せ!」


「わかっている、そう焦るな……」


ゆっくりとした動作で、男がフードに手をかけて脱ぎ捨てる。

そこにあったのは、初老の男性の顔。少しだけ老いを感じさせる、しかしどこか若さを感じる顔には、微笑みがあった。


「なっ!? こっ、これは失礼致しました!」


「いや、顔を隠していたこちらも悪いんだ。そう必死になって謝ることもない」


兵士|(見た目がそうっぽいからそう呼ぶことにした)は素早い動作で槍を下ろし、必死に頭を下げていた。どうやらこのおじさん、それなりの立場の人らしい。


「し、しかし、この不審者の仲間とは……」


「ああ、彼は(わたし)の親戚の子でね。ちょっと私の新しい『W(ダブル)』の開発に付き合ってもらっていたんだがね」


だぶる? なんだそれ?

アルファベットのことか? いやでも開発って言ってたし、そうじゃないよな。

てか、親戚? 記憶にないぞ。それともあれか? この場を切り抜ける為の嘘か?

そんなことして、あの人になにかメリットが? ただ単に、迷える子羊を助ける的な感じなのか?


俺が考えてる間にも、兵士とおじさんの会話は進む。


「瞬間移動の『W』だったのだが、思っていたところに飛ばなかったようでな。警備網に引っ掛かりを感じたから、ここに来てみればこの状況という訳だ」


ダブルが何かはわからないが、どうやら俺はおじさんの親戚で、テレポートの実験に付き合っていたところ見たとこのない森に飛ばされた、という設定で話が進んでいるらしい。


「そっ……それは失礼しました! 学園長殿の身内とは知らず、詰問するどころか武器を向けでしまうとは! この愚行の処罰は重々受けます故……」


「そこまで気に病まなくても良い。こちらにも落ち度はあるんだ。とりあえず各人、持ち場に戻ってくれ」


「はっ! 貴方も、大変な勘違いで敵意を向けてしまい申し訳ありませんでした!」


兵士たちが全員、俺に向けて頭を下げていた。正直、数十人の、それも大人に謝られた経験など皆無なので、俺はただ狼狽えるしかなかった。


「では!」


それぞれがどこかに向かっていく。多分、自分の持ち場とやらだろう。


「それでは、私達も行こうか。何、取って食うような真似はしないさ」


「は、はい」


俺は、学園長と呼ばれた男性に着いて行くしか出来なかった。どこかもわからない場所で、俺一人なんかにできることは限られている。だったら、素性がわからなくても、誰かに頼るしかない。


――俺が目を覚ました場所は、案外森の入口近くだったようで、数分もすると森から抜けていた。


「…………わ」


声が漏れる。森を抜けた先に見えたのは、俺が入学した高校なんて比べ物にならないくらいに大きな、風格を漂わせる校舎だった。


「そういえば、言うのを忘れていたね。ようこそ、『アルカディア高等学校』へ」

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