冒険者登録!
すみません。作者はネタを挟まないと死んでしまう病なので。わかる人に笑って頂けたら幸いです。
俺は、ゴードンさん達の人さらいの後、着せ替えにんg―― 装備の選定をしてもらい、ある程度いっぱしの冒険者に見えるようにして貰った。
ちなみに装備だが、
頭:鉄製の額宛
胴:鉄製の胸当て
腕:帝国騎士団の籠手
足:鉄入りブーツ
となっている。ちと不恰好ではあるが、駆け出しなんだしこんなものだろう。実際は駆け出し冒険者よりも遥かにいい装備なんだが。本来の駆け出し冒険者は大抵布か皮装備なんだとか。
それで大丈夫なのか駆け出しよ。
そう聞くと、最初は採取等の安全な仕事をして金を稼ぎ装備と知識を整えてから討伐系の依頼を受けるそうだ。だから最初はその日暮らしなんだと。
これを聞いたとき、心底ゴードンさんの言う通りにしなくて良かった。あの人、帝国騎士団装備一式を俺に着せるつもりだったらしい。全身鎧とか重くて無理だからと断ったら、ゴードンさんのお古で軽いのがあるからそれでとか言っていたが、明らかに序盤でする装備じやないかった。なんだ歴戦の戰籠手って。むちゃくちゃ強そうだったし。やたら魔力の通りがよかったり、体が軽く感じたりといろいろおかしい装備だった。
なんとかこれに落ち着いたから助かったよ・・・。
「オーヴァンさーん!こっちですよー!」
俺の前を歩くのはレティナさん。冒険者ギルドまでの道案内をしてくれるとか。休日返上で仕事とか、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「あっはい。今いきますよ―」
小走りでレティナさんのところへ向かう。
「はぐれないようにしてくださいね。この先、ギルドまでの近道で市場を横切らなければならないんですから。人が沢山いるんですよ!」
市場!そんなところもあるのか!面白そうな物あるかな?
「市場ですか?ぜひ見学していきたいんですが、大丈夫でしょうか?」
「おや?市場に興味がおありで?私は構いませんよ!」
元気に返事をしてくれるレティナさん。ホンマええ人や。
「本当ですか?いやぁレティナさんに悪いかなとは思ってはいるんですが、好奇心に勝てませんで」
「構いませんよ。私も市場好きですから!それで、代わりとはいってはなんですが、オーヴァンさんに頼みがあるんですが?」
「俺に頼みですか?できる範囲でしたら構いませんよ」
「あの、私のことはレティと呼んでくれませんか?隊の皆はそう呼ぶので」
レティナさんは少し顔を赤くさせ、俯きがちに俺をみる。俺的に上目遣いとか反則だと思うんですよ。どんな要求だって断れないと思います。
「じゃあ俺のことはヴァンとでも呼んで下さい。それならば構いませんよ」
そう言うと少し驚きの表情をしていたがすぐににっこりと笑って、
「はい!わかりましたヴァンさん!」
と言った。いや、さんがとれてないやないですか?
それを指摘すると、流石に恥ずかしいから無理だそうだ。くそぅ。かわいいなコンチクショウ!
「あっ!見えましたよ!ヴァンさん!」
レティの指差す方を見ると、そこは都心を彷彿とさせるほどの人の数。それは見たこともない人種や動物。そして、沢山の露店だった。
「・・・・・やばいわこれ」
見た瞬間、俺は止まった。そしてすぐ自分でもわかるほど興奮してきた。心臓が五月蝿いくらいに早鐘を鳴らし、身体中に血が巡るのがわかった。
ファンタジー
いつからだったろうか?
その言葉に憧れて、いろんな物語を読み漁った。
その場面を見てみたくて、いろんなゲームをプレイしてきた。
その情景に、自分を組み込んでいろんな妄想をしてきた。
だけど、心は満たされる事などなく、更に求めた。
その心が今、初めて満たされた。
いや、これを見てしまったら満たされたなんて言ってられない。俺は今、更に求め始めている。
見てみたい?それだけじゃ足りない。体験できるのだ。ここなら。俺の夢が!俺の憧れが!!
ああ、イデア様。俺は今、貴女に心の底から感謝で一杯だ。この気持ちを表すのは土下座なんかじゃ足りなかった!
「ヴァンさん?大丈夫ですか?」
レティが心配そうに覗きこんでくる。
「やばいっすわ。やばいっすわこれ!!」
あまりの感動に止まっていた時間が動き出す。俺はレティの手をとり、市場に駆け込んでいってしまった。レティがなんか言っていたが、全く耳に届かなかった。
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あまりにも楽しすぎていろんな露店を見て回った。
お陰で30万ほど使ってしまったが、後悔等全くしていない!!
まあ、レティに迷惑掛けすぎたので、後でなにかしらお詫びしなくてはならないが。
因みに買ったもの↓
・コッコの肉(なんか鶏肉っぽい)×20㎏ほど
・ジンガの根(確実に生姜)×50個
・ピギーの肉(うん豚)×20㎏ほど
・シュー(まんまキャベツじゃねぇか)×10玉
・小麦粉(なんかいろいろ混ざってる)×20㎏
・タライモ(ジャガタライモってか?)×30個
・キャキャの根(キャキャロットォ!!)×10㎏ほど
・ボル花の球根(完全に玉葱)×10個
・ホルホルの乳(牛乳やね)×10㍑
・コッコの卵(やはり鶏か?)×30個
となっております。
ピギーの肉とタライモは食べると腹を壊すとか、ジンガは辛くてあまり食べるのにお勧めしないとかでかなり安かったが、よく30万で収まったもんだ。全てが俺のインベントリの中に入っている。まだまだ余裕があるからビックリだ。
え?食材ばかり?
もう俺の本職なんて気づいてんだろ?言わせんな恥ずかしい。
ホクホク顔でギルドへと歩を進める。
「ずいぶん買い込みましたねヴァンさん。しかも食材ばかり。選んでいる時はとても真剣な目をしていましたが、まさかヴァンさん料理ができるんですか?」
「ええ、できますよ。こっちの肉とかがどんな味するのかわかりませんが、もしよかったらなにか作りますか?」
そう言うと、レティがビックリしたような顔をする。
うむ。心外である。
「本当ですかぁ?でしたらなにか作ってもらいましょうかねぇ?」
ニヤニヤとしているので本気で疑っている訳ではないようだな。
この世界にあるかわからんが、小麦粉あるしあれでも作るか。調味料はあるはずだからタレも作っておけば。
「あっ。着きましたよヴァンさん」
作るものを考えていたら、どうやら着いたみたいだ。
ギルドは古めかしくなかなかの大きさで、基本石でできているようだ。石は大理石ではないようだか、白くてツルツルした材質でなかなか頑丈だ。なにか違和感を感じ、よく目を凝らして見てみると、うっすらとだが魔力を纏っているように見える。
なんか凄そうな材質だぞこれ。流石のギルドってことか?オラなんかワクワクしてきたぞ!
ウキウキ気分でギルドの木造の扉を開けると、中は喧騒が絶えず、荒くれどもが酒や料理を食しつつ、祝杯をあげていたりしているのを予想していたのだが、何故か騒がしくなかった。
あれ?冒険者ってもっとこう、騒ぎまくってるイメージがあったんだが?
周りはなにか飲んではいるが、つまみがチーズだけとか貧困な感じだ。身なりを見た感じ、金に困っているようには見えない人達なんだが?
疑問に思いつつもレティの案内に従い、受付のような場所にやってくる。受付には茶色の髪を後ろで団子のようにまとめた、なんとなくおっとりした雰囲気の女性がいた。
なんとなくレティに似てないか?目元とかそっくりな気がするんだが?
そう思っているとレティがその女性に声をかけた。
「やっほ。姉さん久しぶり。最近の調子どう?」
やっぱり姉妹だったか。砕けた口調のレティ・・・。ん。なんかこうクルもんがあるな。
「あ~。レティちゃ~ん。久しぶり~。最近はねぇ。まあぼちぼちだよー」
おっとりしてんの雰囲気だけじゃなかった!
なんか落ち着くっていうか、こっちまでのんびりしちまいそうだな。
「そっか。あっほら。冒険者になりたいって人連れてきたの。ヴァ・・・オーヴァンさんって言うんだけど」
「へぇ・・・冒険者にねぇ」
紹介された瞬間、なにか寒気がしたんだが!
おっとりした雰囲気が薄くなり、冷気を感じる。
「お、オーヴァン、です。新しく冒険者になりに来ました。えっと?よろしくお願いします?」
なんだろう。なんか目が鋭くなって、さっきよりも寒気が増してきたるんだが。
「冒険者ギルドの受付嬢をしてるリースよ~。よろしくね~」
自己紹介されると、さっきまで感じていた寒気がフッと消える。なんなんだ一体?
「それじゃ、この紙に名前と出身地を書いてねー」
「あー・・・姉さん?その事なんだけど・・・」
リースさんが出してきた紙を見て、レティが気まずそうにリースさんに耳打ちする。
しばらくなにか話していたが、なんか途中からリースさんがものすごーく憐れみの目で俺を見ている気がするんだが?
「話はレティちゃんからきいたわ~。大変なのねあなた。いいわ。本当はダメなんだけど書ける所だけ書いてもらえる?書けない所はこっちでなんとかするから」
ここでもよくしてもらえるのか。他者から見てドンだけ不憫なんだ俺は。
とりあえず名前と出身地を書く。出身地は地球って書いとこ。
それを提出すると二人から少し驚きの表情が見てとれた。
「文字は書けるのね~。加護かしら~?まあ、あとの処理がグッと楽になったからよしとしますか」
そう言うと、リースさんは紙にさらさらと何かを書き、変な魔方陣の上にのせる。すると、その魔方陣が光輝きのせていた紙が取り込まれる。
光が収まると、そこにはカードのようなものがおいてあった。
「は~い。登録終了よ~。これがあなた専用のギルドカードになるわ~。それに魔力を込めてもらえるかしら?」
そう言ってカードを渡されたので、渡されたカードをみる。
名前:オーヴァン
出身地:地球
ランク:F
となっていた。他に見るものもないので魔力を込める。すると、カードが俺の魔力を吸い上げ、魔方陣が浮かび上がる。
浮かび上がった魔方陣が俺の手の甲に移ると、カードがその中に入っていき、消えてなくなった。
「はい。専用化も終わりっと~。お疲れ様。これであなたも冒険者よー」
驚いていて反応ができなかった俺にレティが説明をしてくれる。
これはなんでも、カードを悪用されないようにするためらしい。刷り代わり等の犯罪防止の為の処置なんだとか。本人からカードが一定以上離れると、カードが持ち主にもどるらしい。生体ビーコンみたいな作用もあるらしく、死んでしまった時の判断にも使われるそうだ。便利だなー。
冒険者のランクなんかもリースさんと一緒に説明してもらった。
ランクはF~SSの階級制でクエストをクリアしていくと、信用度?みたいなのがあがり、ランクが上がるのだ。Cぐらいから一人前で、Aとかは英雄クラスらしい。
S以上は一人で国を相手に戦えるレベルだとか。怖いわ~。
「しかし、これでオーヴァンさんも冒険者ですか・・・。やっぱり心配ですね」
「はは。無理なんてするつもりは毛頭ないですから安心してくださいな」
レティは心配性だねぇ。
あっそういえば、こんだけレティには世話なったし、料理でもご馳走してやりたいが。ギルドの厨房借りれないかな?
そう言うと、リースさんは構わないと言ってくれた。今日は、厨房を担当している人の身内が倒れたとかで誰も使ってないんだとか。というか、お昼ご飯食べ損ねたからリースさんが自分の分も作って欲しいと言われた。
お安いご用よ。さて、今日のご飯はなんにしようかね?
まあ、なに作るかはきめてあるんだけどね!
そう思いながら俺は厨房に入る。この選択が、後にあんなことになるとは思いもよらなかったが。