DOGEZAは文化だ
目を開ければ真っ白な世界。つい最近見たことのある世界だった。
あれ?何で俺はまたここに?
「私がお呼びしたからですよ」
ん?この声は・・・。
イデア様の声だと思い、後ろを振り替える。しかし、後ろには誰もいない。おかしいな。声がしたのは確かに後ろからなんだが?
「この度は」
ん?下から声・・・がぁ!?
「申し訳ゴザイマセン!!!」
イデア様はそこにいた。頭を地面に擦りつけていたのだ。いわゆる、土下座だ。そりゃ振り返っただけじゃみつからんわ。だって、下に平伏してるんだもの。
神様に土下座させるとか。俺も偉くなったもんだな。
────いや、現実逃避はよくないな。神様に土下座させておくとか、俺のような小市民の精神力ではもたんわ。
さっさと、頭をあげてもらおうと声をかけるが、イデア様は頭をあげてくれない。どうしたもんかと肩に触れる。立ってもらうために触れたのだが、俺はイデア様が震えていることに気づいた。
「うっ、うぅぅっ。ぐずっ」
ついでに泣いてもいるようだ。嗚咽の声が聞こえてきた。
ってなぜに!?神様泣かせるとかどうすんだこれ?!
パニックに陥った俺は無理やりイデア様を起こす。その顔はずいぶん泣きはらしたのか、涙とか鼻水とかでぐしゃぐしゃになっていた。ホントに女神かこの方は?とりあえず、何で泣いているのか聞いてみることに。
どうして謝ったんですか?と、なぜ泣いているのですか?と、できるだけ優しい声音で聞いてみた。
「だって、だって。ずずっ!だってぇ!!」
こりゃあれだな。なぜ泣いているか聞く前に男としてなすべきことがあるな。
俺はイデア様の頭を抱え、そっと胸に埋めさせる。不思議と涙とか鼻水を汚いなんて思うこともなかった。
「辛いのなら、まず全部吐き出しましょう。話はそれからです」
イデア様はピクリとも動かない。これは選択ミスったかな?こういう行動はイケメンがやるから映えるのであって、俺のようなやつがやることじゃないな。
突き飛ばされるのも視野に入れつつ、イデア様の反応を待つ。しかし、イデア様は俺の体にてを回し、胸のなかにさらに顔を埋める。
「ううううぅぅ!うううう!」
どうやら更に泣き出してしまったようだ。俺は頭をなでなから、背中をポンポンと叩き、イデア様が泣き止むのを待った。
それから10分位すると、ようやく泣き止んだイデア様が離れる。う~ん。ちと残念。
「すみません。お手数おかけしました」
地べたに座りペコリと頭を下げる。
「いや、気にしないで下さい。あのままだと俺の精神がストレスでマッハでしたので」
綺麗な女性を泣かしておいたままとか、非モテオタク童貞の俺には辛すぎる。まじ無理っす。
「それで、なぜいきなり謝罪を?」
落ち着いたとみた俺は先程聞いたことをもう一度聞いてみる。するとイデア様はうつむき、今にも消え入りそうに呟いた。
「私はあなたのことを見ていました。覗いているのは失礼とも思いましたが、最初位は見ておきたかったので。ですが、召喚されてすぐのあの対応を見てしまって」
あっ、また涙が滲んで来てる。手もかなり強く握り混んでいるのがわかる。あなたがそこまで気にする必要はないでしょうに。
つい苦笑いしてしまう。そう伝えるがイデア様は辛そうに答えるたけだった。
「私はあなたの人生を壊してしまいました。あなたの意思など聞かずに強引に助けを求めて召喚したというのに・・・。あんな仕打ちを」
またポロポロと涙が出てくる。なので、横に周り背中をポンポンとまた叩く。たが、イデア様はそんな俺にガバッとすがるようにしがみついてくる。
「お願いします!私の世界を恨まないで下さい!私に出来ることがあれば何でもしますから!」
ん?今何でもするって言ったよね?
なんてことは俺にはできないので考えない。非モテオタク童貞なめんな!
なので、俺はとくにしてもらうことが思い付かない。相手が神様なら何でもできそうだが、今までのイデア様を見てくれ?こいつをどう思う? すごく、人間臭いです。なんてやりとりが脳内で起こるほどだ。泣きっ面に蜂紛いのことをするとかは、人の不幸は蜜の味とかいってるやつにしかできないだろう。それに、俺はイデア様に返しきれない恩がある。
「イデア様。俺は別にあなたに何かしてもらおうとは思いません」
俺の言葉でイデア様の顔に絶望が広がる。聞くひとからしたら突き放すような言葉にきこえたかな?最後まできちんと聞かせて安心させねば。
「俺は、ずっと魔法とかに憧れを抱いてました。おかしいですよね?俺もいい歳にもなって魔法とかってさすがにとは思っていましたが。子供の頃に抱いてしまったこの気持ちを捨てられなかったんです。そんなときに、イデア様に呼ばれ、剣と魔法の世界に連れてきてもらえたのです。俺はあなたに夢を叶えてもらいました」
俺はイデア様を引き剥がし、膝をつく。そして、先程イデア様がしていたように頭を地面に擦りつける。
「そんなあなたに最大限の感謝を!ありがとうございます!」
頭の上でイデア様が狼狽しているのがわかった。この気持ちに嘘や偽りはない。だから、いつまでも子供みたいだなんて言われるんだろうけどね。
そっと頭をあげイデア様の目を見る。
「俺は夢を叶えてくれたあなたにこれ以上何か追い討ちをかけたくありません。だから、何かをしてほしいなんてことはありません。それにですね・・・」
これを言うのはちと気が引けるが、ここまでいったことだし別に隠さなくていいだろう。
「勇者なんてガラじゃないですよ。俺は一般人。そういうのはもっと正義感の強いイケメンに任しときましょう。
それに、イデア様が治めるこの世界をみて回って見たいんですよ!きっと見たこともないものや、食べたことのない物がたくさんあるはずなんですよ!」
最後はテンションが上がって語尾が強くなった。たく、単純だね俺は。
だがまあ、イデア様を慰めることはできたみたいだ。それができたなら万々歳よ。
「あなたは本当に・・・」
少し呆れもまじっているのが声音からわかったが、イデア様の顔はすごく嬉しそうだ。
「ですが、それだけでは私の気がすみません。本当に何かしてほしいことはないですか?」
これはどうしたもんかね?してほしいことなんて直ぐには思い浮かばんのやけど、
いや待て。それならあれをやってもらおう。
「では、俺の商売道具と調味料各種を大量にほしいです。できればですが可能ですか?」
イデア様はかなり驚いた顔をする。
「それだけでよろしいのですか?もっと強い力を~とかないんですか?」
いや、そんなんもらっても身に余るわ。
「はい要りません。最初に話した通り、俺は自堕落になりかねないので」
どう考えても俺には強い力を貰ったら、無双して自堕落にいきるに決まってる。だって俺だもの。
俺の意志が固いとみたのか諦めたようだ。
「解りました。ではあなたの商売道具と調味料各種をあなたのインベントリに入れておきます。ただ、道具には加護を、調味料は無限にさせて下さい。それくらいしないと私の気がすみませんので」
ありゃ?彼方さんも意志が固いようで。まあ貰っておいて損はない。調味料無限は嬉しいし。
すると、頭の中に声が流れてくる
“オーヴァンの商売道具を入手しました。
調味料各種(無限)を入手しました。”
このことを聞いてみると、これは世界の声というらしい。何か取得したり、称号を獲得したときに頭の中に流れるそうだ。
因みに、称号はイデア様が決めている訳ではないという。世界が勝手に決めて与えているとか。イデア様でなかったのは間違いなかったのはありがたい。勇者(笑)はさすがに酷すぎるからな。
すると、俺の体が足元から透けてくる。焦った俺はイデア様を見るが、イデア様は落ち着いていた。
「あなたの体が目覚めようとしています。なので安心してください」
そう言われれば流石に安心した。ただ目覚めるだけなのだから。
「この度は誠に申し訳ありませんでした。心優しきあなたにもう一度謝罪と最大限の感謝を!」
イデア様はそういって頭を深々と下げる。神様が一介の人間に何度も頭を下げるのはどうかと思うのだが?本当に人間臭いなあ。
フフっと笑ってしまうのもわかってほしい。
こんな人間臭い神様が治める世界。一体どんな景色があって、どんな人達がいて、どんな食べ物があって、どんなことが起きるのだろうか。楽しみで仕方ない。そう思ったら、意識がフッとなくなる。
“称号〈主神に土下座させた者〉を獲得しました”
最後の最後にあまり聞きたくないものをきいたが・・・。
旅にはまだ出れそうにないですね。無駄話ばかりな気がしますが、どうかお付き合い下さい。




