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勇者(笑)の異世界珍道中  作者: 達磨
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片鱗

 俺とセシリウスさんの間にはとてつもない差がある。それを埋めるなら、生半可なことじゃいけない。奇襲、不意討ちは俺の得意とするところ。さて、どうやって驚いてもらいましょうか?

 まずは間合いをつめる為に一歩前に出る。それだけなのはずだったのだが、セシリウスは過剰と取れるほど反応を示す。流石にビビりすぎしゃね?明らかにバトルジャンキーな筈のセシリウスさんが俺のような小物にここまで反応を示すかねぇ?

 そう思いながらもまた一歩踏み出す。今度は反応は薄いが構えに力が入った事がわかった。見下してくれてたほうが楽なんだがね。これはあれだな。早めに奇襲を仕掛けたほうがいいな。

そう判断した俺は、懐に飛び込む。流石に驚いたのか一瞬反応が遅かった。

 このチャンスを逃す訳にはいかんな。相手の反応が遅れたのをいいことにラリアット気味にセシリウスさんの首に腕を入れ肩を掴む。そして、右足を振り上げ、セシリウスさんの右足を刈る。


「大外刈!」


 ズタンッとセシリウスさんが倒れる。「グフッ」っと呻く声が聞こえたが、気にしない。誰も止めに入らないってことは大丈夫ってことだ。

チャンスは今この時だけと思え!俺はセシリウスさんの襟首と右手首を持ち、そのまま持ち上げ、右足を軸に“回転”した。


「シャオラァ!!」


 相手を背に乗せ重心のしたに潜り込みぶん投げた。両手背負もろてせおいという技だ。両手でやるから相手の動きを制限できるし投げやすいから好きな技だ。もう一度セシリウスさんを地面の叩き付ける。どうやら受け身がとれていないようで、その衝撃がもろに身体中を駆け巡っているだろう。柔道は投げられると、二階から落ちるのと同じような衝撃あるそうだ。それを畳や受け身が軽減してくれている。だから、受け身も録に取れない素人相手に投げるのは本当に危険なんだが、まあ、魔法がある世界だし大丈夫だろ?

 それより、ここで出来る限りのダメージを与えておかねばならない!もっぺんぶん投げる! 

手は握ったままだったのでもう一度持ち上げたところどで、セシリウスさんが腕を振り、俺の手をきった。

くそ!握力も落ちてる!焦った俺は後ろに飛び、大きく距離をとる


「ゴホッ!ゴホッ!くっ!なんて攻撃だ!掴まれてから何も行動出来なかったぞ!」


 まあ、そういう武術ですし?受け身取れなかった割にはだいぶ平気そうだな。つか、スゲェいい笑顔してるんすけど?


「成る程な!これがジュウドウという武術か!実に見事な武術だ!しかし・・・」


 セシリウスさんは静かに剣を構え直す。


「掴まなければならないというデメリットがデカイな。間合いをとられたらまず勝てないだろう?」


 痛いとこつくねぇ。まさにその通りだ。柔道は掴んだり、組み合ったりしてからが戦いだ。間合いを取られたらなにもできないに等しい。


「痛いとこつきますね。まさにその通りですよ。俺は弱いのでこの辺が限界でしょう」


 俺がそう言うと、落胆した顔をする。


「この程度で終わりなのか?」


これだからバトルジャンキーは・・・。


「ええ。俺の柔道はこれで終わりですよ」


 その言葉を聞いたセシリウスさんは失望したような顔をする。そりゃそうだな。彼女からしたら、今からが本番なのだ。それなのに、もう終わりなどと言われればあんな顔もするだろう。まあ、でも。せっかくの機会ですから、もうちょっと付き合ってもらいますけどね?


「なので、ここからは、魔法を交えたオレ流の戦いを見てもらおうと思うのですが、どうですか?」


 俺の提案に、周りは目を点にする。ただ唯一俺の目を見ていたセシリウスさんだけは、すぐに立ち直り、不適に笑う。


「ほう。魔法を交えた戦いか。今日この世界に来たばかりの貴殿に一体何ができるというのだ?」


 口調はちょっと挑発まじりだが、今度は何を見せてくれるんだ?といわんばかりの顔をしていた。

 俺は手に魔力を込める。すると、透明な魔力の塊が手のひらの上に浮かび上がる。


「《バレット》!」


そう言うと、手のひらの上にあった透明な魔力の塊が、セシリウスさんに飛んで行く。セシリウスさんはそれを簡単に避け、なんとも不憫そうな目で俺を見た。


「無属性なのか・・・。オーヴァン殿。無属性というのはそれしか使えない、いわばハズレの属性なのだ」



 そう。俺の適正魔法は無属性。その無属性が使える魔法は《バレット》という魔力の塊をぶつけるだけの魔法。しかし、いま放ってわかったが、この《バレット》という魔法。消費MPがたったの5という安さである。威力を考えれば妥当な感じもするが、俺が目をつけたのはそこじゃない。《バレット》という魔法。名前を言ってから飛んでいったということだ。これはもしかしたら最初に思い浮かんだ事が出来るだろうか?

 俺は、透明な魔力の塊を3つ4つとつくる。それはそこにとどまったままでいた。っし!これならうまくいきそうだ!

俺はニヤリと笑い、セシリウスさんに突っ込む。


「っ!?」


 いきなり俺が向かって来た事で驚いたようだが、直ぐに剣を持ち直し、横凪ぎの一閃を放つ。剣筋は全く見えなかったが、最初から攻撃のつもりはない俺はすぐさまスライディングの要領でセシリウスさんの横を通り抜ける。そしてすぐさま反転し、手をつかもうとする。セシリウスさんは反転しながら後ろに飛び、俺と距離をとる。だが、それは俺が望んでいた行動だ!


「《バレット》!!」


 そう叫んだ為に、セシリウスさんは剣で俺の魔法を払おうとしたのか剣を振るが、それは空を切るだけだった。それどころか、セシリウスさんはまるで後ろから殴られたようにこちらに飛んできた。


「いらっしゃ~い!」


 そのセシリウスさんを俺は掴む。今度はきちんと掴むことができた。俺はまた両手背負いをするために右足を前に出し、それを軸に“回転”する。


「かふっ!?」


 セシリウスさんの口から空気が吐き出される。しかし、さっきからやけにきれいに背負いが決まる。そう思い右足を見て見ると、やけにくっきりと足の跡があった。なんだこれは?今までこんな跡を作ったことは無いんだが?

 俺はそんなことを考えてしまった。俺が思考に耽ったわずかな一瞬を彼女が逃す筈がないのに。


「もらった!!」


 倒れたままのセシリウスさんから側頭部に手痛い一撃をもらってしまった。


「痛い!?」


 俺は打たれたところを押さえながら、一旦距離をとる。その間に、セシリウスさんはゆっくりと立ち上がり、目をキラキラとさせながら訪ねてくる。


「今のは一体!?突然後ろから殴られたような感じがしたのだが。オーヴァン殿!説明していただきたい!」


「説明といっても、いまのは皆さんのよく知る《バレット》ですよ?まあ、設置技としてはなかなか優秀な感じがしますけど」


 不敵に笑いながらそう答えると、周りの人達も相当驚いていた。今まで、ハズレの属性として扱われていたが為に、誰も研究しなかったのだろう。こんな使い方があるとは思わなかったという風な顔をしていた。もしこれがもっと使えるようになり、おれ自身の動きが精錬されれば、1人でダンデムできそうだ!スタ◯ドはないけどな!

それと、使って見た感じ、無属性魔法はまだまだ奥がありそうだ。これはひょっとしたらひょっとするやもしれんな。無属性魔法のもつ無限の可能性に1人ほくそ笑む。



「はは。ハハハハハ!すごいなオーヴァン殿!無属性魔法にはこんな使い方もあるのか!?この世界のものなのに予想もできなかった!!」


 セシリウスさんはとても嬉しそうだ。笑顔がとっても素敵です!

さて、だがこれで俺の魔力はすっからかんだ。消費が少ないとはいえ、ずっと身体能力強化を行っていたからな。できてあと一回行動。そのあとは、根性じゃどうにもならんし素直に負けを宣言しよう。


 手から2個、魔力の塊を作り出し、そのまま突っ込む。そして、直ぐに体勢を低くする。


「《バレット》!!」


俺の頭上を二個の魔力玉が飛んで行く。セシリウスさんはそれを切り払う。剣を振りきったその懐に飛び込み、腕を引き絞り最後の一撃を放とうと、手に魔力を込めたとき、振りきった筈の剣が目にも止まらぬ速度ど戻って来て、俺を吹き飛ばした。バキン!と乾いた枝が折れる音がし、5m程転がったあと、何が起こったのかとあたりを見渡し、自分の右腕があらぬ方向に曲がっているのをみつけた。その痛みが全身にを駆け巡ったあと、俺は血を吐いて意識を手放した。





──最後の瞬間、セシリウス視点──

オーヴァン殿は本当に素晴らしい!無属性魔法にあんな使い方があったなんて!これだから、これだから戦いはやめられない!

こちらの予想外の攻撃をしてくるものとの戦いほど楽しい物はない!なぜ姉上はその事がわからないのだろう?

そう考えていると、オーヴァン殿がこちらに向かってくる。そして、突然体勢を低くしたと思ったら、魔力玉が飛んできた。私はそれを切り払うと、一瞬で距離を詰めたオーヴァン殿が懐にいた。狙いはこれか!

オーヴァン殿は腕を引き絞り、力を貯める。そんな攻撃、本来なら掠りもしないが、ここはその一撃をもらってやろう。これはここまで私を楽しませてくれたオーヴァン殿への礼だ。

そう思っていたはずなのに、突然オーヴァン殿が視界から消える。手には骨を叩き折ったような感触があった。なぜだと考えると、ゴードンの怒声が聞こえてきた。


「治癒魔法を使えるものは今すぐオーヴァン殿の治療を!!血を吐いていたことから内臓も傷ついていかもしれぬ!急いで処置をいたせ!!」


ゴードンは周りに指示を出しながらオーヴァン殿の所へ走る。そして、それをどこか呆けた感じで見ていると、レナスが私に詰めよってきた。


「姫!?なぜ彼にあんな仕打ちを!!納得の行く返答を頂きたい!!」


レナスは怒っていた。まあ、それはそうだろう。身体能力強化もまだ録に使えていない彼に、私はかなり力を込めて攻撃したのだから。だが待ってほしい。私はなぜ彼にあんなことを?自分で自分のしたことが理解できなかった。


「姫?なぜ震えておるので?」


レナスのその言葉にはっとする。震えている?なぜだ?私はあの一瞬でどうしてしまったのだ?

先程の行動を1つずつ思い出していき、彼が腕を引き絞った所で悟った。

私は彼の最後の一撃に“死”を直感したのだ。今日、この日にこの世界に来たばかりの彼の一撃に。

私はその事を包み隠さず告げる。それにはレナスもゴードンも揃って首を傾げた。


「それは彼が目を覚ました時に聞けばいいのである。今は彼の治療に専念すべきどあるな。かなりひどい怪我であるが、命に別状はないらしいのが救いである」


その言葉に私はほっとした。命に別状がないのなら、彼に誠心誠意謝る事ができる。こんなひどいことをしたのだから、許して貰えるかわからないが。


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