体は大人。見た目も大人。中身は子供。
名前は決まった。よくゲームで使っていたから、違和感は少ないだろう。さて、次にやることは決まっている。嫌な予感がひしひしとしているが、避けては通れない道だ。心を強く持とう。そう思いながら称号の欄を見る。するとやはり、称号の欄がアップして俺の前に現れる。
薄幸青年:運のない青年に贈られる称号。まあ、そのなんだ。そのうちいいことあるさ。運微上昇。
なんだこれ?確かに運はない自覚はわずかにあったが、同情されるほどでは・・・。あぁ、今の状況か。まあ、呼ばれて来たのにこの扱いだしな。確かに運があるとは言えないな。て言うか、これ誰が決めてんだ?イデア様じゃないのは確かだろう。なんか口調違うし。
よし次だ。
異世界を渡る者:世界を渡り、異世界より来たりし者。ようこそ異世界に!魔力使用可能。
これはあれか。異世界からきたら付与される称号か。これのお陰で魔力が使えるようになるのか。
よし次。これが問題だ。
勇者(笑):ゆwwwうwwしwwゃwww。NDK?NDK?!
う・・・・う・・・
「うぅぅぅっっぜええぇぇえ!!!!」
周りの兵士達が一斉にビクンッと反応する。あまりの事に声が表に出てしまった。だが、そんなことはどうでもいい。なんだこの称号は!?つか称号なのか!?貶されてるとしかおもえねぇ!!
「お、おい。どうした?なにかあったのか?」
「あぁ!?」
怒りのあまり反応が荒くなる。いかんな、せっかく心配してくれてるのだから八つ当たり紛いのことをしては。一度落ち着かせるように深呼吸をする。
「すいません。ちょっとイラつくことが称号にあったので」
「イラつく称号?一体どんなことかね?」
俺は恥ずかしいが嘘偽りなく称号について話す。最初こそ驚いていたが、次第に哀れみの目をし始める。みんなよ。そんな目で俺を見るなよ。いっそ笑えばいいじゃない!!つか、笑ってくれぇぇ!!
「え、えっとぉ・・・。ほかは何かありませんでしたか?ほら、スキルとか?アーツとか?」
栗色ポニーテールの女性が話題を変えるために頑張ってくれているのがよくわかった。ポニーテールさん。貴女は天使だ・・。ん?アーツ?アーツってなんだ?アーツって言うくらいだから、何かしらの技とか?
「アーツってのがよくわかりませんが、スキルなら3つほどあります」
そういうと、周りは哀れみの目から慈愛の目にかわる。
「そうか・・・。わかった。・・・私に出来ることがあったら何でも言ってくれ。このレナス、全力で君の力になろう!」
イケメンナイトさんが力強い目をしながら胸を叩く。つかイケメンナイトさん、レナスって名前なんや。そういや、名前名乗ってなくね?俺?
その事に気づいて口を開こうとするが、
「隊長!ずるいですよ!私だって力になれますよ!!」
と栗色ポニーテールさんが俺の手を取りながら言うのでタイミングを逃す。
「隊長と副隊長だけじゃない。俺も力を貸すぜ!!」「俺だって!!」「俺もだ!!」「おっと、あたしのことを忘れてもらっちゃ困るよ!」
等と、兵士達から次々と声が上がる。
あるぇ~?優しさが何かとっても痛いぞ~?それになんだか目から汗が出てきそうだ~?
まあ、よほどひどいのだろうと、あたりをつけた俺はそれも踏まえて情報を得る事にした。今の俺は知らない事ばかりだ。情報とは武器になるのだ。あって損なものではない。そう思って聞いてみると、皆さんとても丁寧に教えてくれるのだった。
まず、この国は〈グランマセール帝国〉、別名〈勇者の国〉と言うらしい。なんでも、この国にある神様から与えられた特殊な秘術で勇者を呼び出すのだそうだ。そして、その秘術が使えるのは、この国の王の直系の第一王女だけなのだ。第一王女が死ねばそれは第二、第三の王女に引き継がれるらしいが、部外者はまず不可能とのこと。流石に神様から与えられただけはあるな。だが、それだけ貴重なものだけに、秘術が使える第一王女は相当甘やかされて育った為に、ワガママな存在になってしまったと。・・・うん、捨てちまえそんな秘術。そのワガママに迷惑被ってんのどれだけいると思ってんだ!
他にも色々とおしえて貰ったが、魔法の話になった時はとんでもないくらいに興奮を覚えた。
魔法。それは厨ニ病を患った者なら必ず夢見る不思議な力。いろんな書物を読み漁っている俺には隙はない!!さぁこい!この世界の魔法は一体どんなだ?!
話を聞くたびに自分のなかの熱が燃え上がるのを感じる。この世界の魔法はテンプレ物だった。己の中に流れる魔力を使用し、自然現象を操る。もちろん詠唱や魔方陣なんかも存在する。属性は地・水・火・風・氷・雷・光・闇・無となっている。魔法には適正が存在し、適正属性以外の魔法は使えないか、魔力の消費がとんでもなく多いらしい。説明がてら何個か見せて貰ったが、ヤバい。これはヤバい。自重や体裁を忘れるくらいにヤバかった。レティナ(栗色ポニーテールさんの名前)さんの火属性魔法〈イグニートヘル〉、対象を火柱で囲い焼く魔法だ。ド派手な魔法だったため、興奮し過ぎてすげぇ!!以外の言葉を発していなかった。
「お前さん、本当に子供みたいに無邪気にはしゃぐな」
レナスさんにそう言われて少し落ち着く・・・わきゃねぇだろぉぉ!!夢にまで見た魔法が今!目の前で!実際に存在しているのだ!落ち着けというほうが無理だ!!
あぁ、早く俺も使いたい!頭の中は魔法の事でいっぱいだ!今迄無駄と解りながら溜め込んだ知識が火を吹くぜ!!
そう思っていた時期が私にもありました・・・・。
「泣くなよオーヴァン・・・。ほ、ほら!無属性には無属性のよさがあるって!?」
レナスさんの優しさが今は辛いとです。そう俺は無属性だった。無属性が使えるのは自分の魔力を物質化させることだ。物質化と言ってもただの魔力の塊を相手にぶつける位のこと。威力も殴るのと大差ない。明らかにハズレ属性だった。