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勇者(笑)の異世界珍道中  作者: 達磨
28/55

螺旋終結

大変遅くなってすみません。

シリアスな戦闘だし、なかなか納得いくものが書けずにいました。ここはどうしても手を抜きたくないと言いますか、かなり重要な場所なので…。



 オーヴァンの放った黒い〈バレット〉が肉を穿ち、血を吹き出させながらもがく理喰らい。苦しむ理喰らいを前にしても、オーヴァンは黒い魔力の塊を作るのをやめなかった。

 次々と生み出される黒い魔力の塊。それら全てが錐状に尖り、凄まじい速度で回転していた。


「イメージだ。イメージしろ。現代の武器を!命を奪う形を!」


 オーヴァンがイメージするのは数々の命を奪い続ける現代最強の武器、銃。その弾丸。

 オーヴァンが元の世界でやっていたゲームの中には銃を使って戦うゲームもあった。そこで得た知識が今、最悪の形でフル活用されていた。



「弾丸はもっと小さく。もっと尖らさせて。螺旋状に溝作って。回転はっ!モットハヤク!!」


 黒い〈バレット〉が回転速度を上げる度に、オーヴァンの目から理性の光のようなものが失われていく。


「コロスタメにもっとタマヲ!!タリネェ!!こんナんじャ!!!」


 その口から紡がれる言葉も、どんどんニュアンスがおかしくなっていくのがよくわかった。

 しかし、この場にいるのは言葉のわからぬ理喰らいと、どんどんおかしくなっていくオーヴァンだけ。誰もそれに気づく事などできなかった。


「コロさナキャ!そう!コロスんだ!!」


 オーヴァンは這いつくばった体勢から片足だけで立ち上がる。その足からも血が滲み出しているにも関わらず、しっかりと地面を踏みしめていた。 

 だが、オーヴァンのその目にはすでに理喰らい以外の何も写っておらず、光が消えた目ははっきり言ってもはや人ならざるものであった。


「コロス。コロスコロスコロスコロスコロスゥゥゥアアアアアアアアアアア!!」


 絶叫と共に放たれる黒い弾丸。

 両の手では到底数え切れない数の弾丸が全て理喰らいの肉を穿つ。血が更に吹き出し、理喰らいは叫び声を上げるが、


「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


 オーヴァンの叫び声が、耳障りだと言わんばかりにそれをかきけす。

 そして、オーヴァンは更に〈バレット〉を生み出す。それを見た理喰らいは恐怖に顔をひきつらせ、悲鳴をあげながら逃げ出した。


「ニガスカ!!」


 オーヴァンは足に魔力を込め、跳躍しながらそれを追う。

 しかし、流石に片足。いくら魔力で底上げしようとも、本来の半分以下のスピードしか出すことができなかった。その為、理喰らいとの距離はどんどん離されていってしまう。


ダメだ!見失うな!奴をコロスまで、絶対に!!


 更に速度をあげようと試みるが、どう足掻いても片足ではこれ以上の速度を出すことはできなかった。

 ならばせめてと、足に込めていた魔力の一部を目に集中させ始める。すると、オーヴァンの視界がまるでカメラのズームの様に拡大され、距離を離され小さくなっていた理喰らいが大きく見える様になった。



“───────────────────────────────”


 そんなおり、オーヴァンの頭の中に何かが話す音が響いていたが、オーヴァンはそれに気づくことはなかった。



見えた!立ち止まって余裕そうだな!なら、ぶち当てられる!!


 オーヴァンは移動する速度を緩めずまた同じように〈バレット〉を生み出し、放った。それが伸びた手に当たり、その手を弾く。

 そしてその間に距離を詰め、痛みにもがいている理喰らいに向かって、足に魔力を込めて大きく跳躍する。


今度はショットガンだ!弾け飛べやぁ!!


 手の中に無数の小さな〈バレット〉を作り出し、ほぼゼロ距離でそれを炸裂させる。小さな〈バレット〉は、全てが先ほどまでと同じような形状になっており、弾き出されたその威力は凄まじいの一言だった。



 肉を更に抉られた理喰らいはまた逃げ出す。それを、また足に魔力を込めて追っていくオーヴァン。その時に足からブチブチと筋肉が切れる音が聞こえてくるが、オーヴァンにはどうでもよかった。


逃がすと思ってんのかよ!コロシテヤルァ!!



 跳躍し、更に理喰らいを追うオーヴァン。黒い〈バレット〉を放ち続け、理喰らいの体を削っていく。 

 そして狙っていたわけではないが、黒い〈バレット〉が理喰らいのアキレス腱あたりを穿ち、つんのめる様に転ぶ。

 それを好機と見たオーヴァンはすぐさま近寄る。その時、オーヴァンの周りに黒い〈バレット〉はなかったが、その右腕に黒い魔力が渦巻いていた。


「観念シロヤ化け物……グッゴブッ。……ハァハァ、貴様ハブハッ!!」


 オーヴァンが喋ると同時に血を吐き出す。残り少ないMPをHPで肩代わりしているためだ。

 

 この世界のスキルはどうやら習熟度のようなものが存在し、スキルを使えば使うほど威力が上がったり効率が良くなったりする。オーヴァンはスキル〈HP変換〉を覚えてから二月、毎日使い続けた為今や変換効率はHP1でMP20にまでなっていた。

 だが、今のオーヴァンは片足がなく、体も怪我がない場所を探すのが困難なほどに多数の怪我を負っている。残っているHPはさほどないだろう。


構うか……。


 オーヴァンの右腕に渦巻く黒い魔力がその量を増す。そして、オーヴァンの口から、全身の傷から、右足から血が滴る。残り少ないHPの量を無視し、オーヴァンは更に〈HP変換〉を行っている為に、生命力を命そのものを削っていく。


コロシテヤル。オレノタイセツナヒトタチヲウバイヤガッテ!


 腕と残った足に魔力を集中させ始める。黒い魔力が蠢くその様はおぞましくすらある。

 腕の魔力は先ほどの〈バレット〉のようにイィィィィン……と凄まじい速度で回転している。それを見た理喰らいの顔に恐怖が浮かぶ。先ほどまで自分の体を削っていく〈バレット〉以上に高濃度で高速回転するそれ。理喰らいにはそれは自分を殺しうる力であると理解できてしまったからだ。

 理喰らいは腰を抜かしたようにへたりこみ後ずさる。


「ハッハァ!!ネングのオサメドキダ!!シネおらァ!!」


 オーヴァンが足に魔力を込める。黒い魔力が左足を覆い、そして爆ぜた。

 それは文字通り、オーヴァンの左足が爆発したのだ。魔力を限界を越えても尚注ぎ続けた結果、行き場の無くなった魔力がオーヴァンの皮膚を破り、外へとはじき出されたためだ。

 だが、その推進力は推してしかるべし。猛スピードでオーヴァンは宙をかけ、黒い魔力が渦巻く右手を振りかぶる。

 そんなオーヴァンの行動に理喰らいは恐慌状態にでもなったのか、自分とオーヴァンとの間に魔法で作られた壁を作り出す。火、水、土、氷と物理的な壁が幾重にもオーヴァンの前に立ちはだかった。

 

 しかしそんな壁などお構いなしに、オーヴァンは振りかぶった拳をひねりながら突きだした。



────────────轟ッッ!!



 そして、放たれる渦巻く黒い魔力の奔流。それは掘削機のように行く手を阻む壁を削り、抉り、穿ち進む。脅威的な威力を誇っていた。

 しかし、いくら脅威的な威力と言えど、人が作り出した有限の力。壁を穿つ度に威力が落ちていくのが目に見えてわかる。


 穿つ壁の数が10を越え、ようやく理喰らいへと到達した時、魔力は半分ほどにまで落ちてしまっていた。それを見た理喰らいがニヤリと笑う。

 だが、それでもオーヴァンは止まらない。それでも構わぬとばかりに腕を更に突きだす。

 理喰らいは両の手を広げ、魔力を受け止めるような体勢をとり、そして受け止めた。黒い魔力の奔流は理喰らいの肉に食い込むが、貫通までには至らない。更に、理喰らいが何かしているのか、魔力の勢いがみるみる内に減衰していく。



 怒り狂う思考の中、オーヴァンは考える。

 どうすれば奴に届くかと。

 どうすれば奴に傷をつけられるかと。

 どうすれば、奴の命を奪えるかと。

 そしてはじき出された答えは、おおよそ常人では考え付かないものだった。



───ブチリ!


 

 肉が切れる嫌な音が響くと同時に、黒い魔力が勢いを増す。それを受け止めていた理喰らいの表情に驚愕の色が浮かぶ。


なに、簡単ナ話ジャネェカ。


 オーヴァンが利用したのは禍津乃力の補正。限界までひねった腕を更にひねる事で補正を利用し更に威力を上げる。勿論、自分の腕の無事など視野には入っていない無茶な策であった。



───ブチブチ、ゴギッ!!


 嫌な音をあげ、腕は更に捻られる。そして、オーヴァンの腕が捻られる度に黒い魔力はどんどん勢いが増されていく。

 

「ナア理喰らい!テメエが奪ってイッタ命ノ重ミヲ!!」


──ブチブチブチブチ!!


「オレの怒りヲ!」


────ゴギッゴギゴギ!


「思いシレヤァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」


 補正を乗せ、魔力を増した黒い魔力の奔流は、とうとう理喰らいの皮膚を突き破る。理喰らいは受け止めていたそれが、自分の許容範囲を越えた事に恐怖する。しかもそれは未だに勢いの増加が止まらないのだ。


「オラァトドメダ!!禍津乃───」


 怒りに任せ、最後の理性を失うのも厭わずにオーヴァンは禍津乃力を使おうとする。ここで禍津乃力を使えば、もう戻れない。後に残るのはオーヴァンだった怒り狂う狂人に成り下がる。

 だがそれも、オーヴァンにはどうでもいいことだった。もう戻れなかろうと、両足を失い、大量の血を流した自分に未来などない。どうせ死ぬのなら最後に自分の怒り怨みを晴らしたかった。

 だからどうでもいいと考えていたオーヴァンに、とある映像が脳内に写し出される。

 それは、子供の頃に見た景色。山奥で見つけた半壊した神社があった場所だった。


“……………ケン、心優しきあなたの生にどうか幸あらんことを…”


………………………えっ?


 見たこともないはずの女性が小さいオーヴァンの頭を撫でてくれている映像。号泣するオーヴァンをあやしてくれている映像だった。

 オーヴァンの記憶にはこんな女性はいない。そのはずなのに、とても懐かしく暖かく感じた。その映像を見て、オーヴァンの目に僅かに光が戻る。

 その瞬間、黒い魔力が暴風を巻き起こした。オーヴァンが一瞬呆けてしまい、力の流れが乱れてしまったのだろう。

 宙に浮いていたオーヴァンは、その暴風に逆らえず吹き飛ばされる。踏ん張ろうにも、すでに両足がない。暴風に流されるままになり、木に激突する。

 そして、運が悪いことにその時に後頭部を強打してしまう。


「ックガ!?」


 木に背を預けながらずりずりと落ちる。薄れいく意識のなか、オーヴァンは必死に辺りを確認しようとする。


………ダメ…だ………指一本動かねぇ…………腕も足も、もう使いもんにならねぇな………なら、せめて奴がどうなったかを………



 もう意識が朦朧としぼやけてよくわからない映像の中、動くものを確認する。

 それは先ほどまでずっと視界の中にあった理喰らい。ぼやけている上に意識が薄れていってしまっているため、下半身しか映っていなかったが、よたよたと確実に動いているのがわかった。

 つまり殺しきれなかった。最後の最後であんな映像を見たからといって、禍津乃力を使うことを躊躇った。その結果がこれだった。


…ハハ…ハ……やっぱりダメ…か……本当に俺って奴はよう……どうしてこんなに中途半端なんだろうな……………



 オーヴァンは全身から力を抜き薄れていってしまう意識に身を任せた。


………すみません…結局仇は取れませんでした……すみませんイデア様……あんなに心配してくれたのにそれを裏切って…… 



 血塗れのオーヴァンの頬に涙が走る。それは先ほどまでの血涙ではなく、透明な涙だった。頭に過るこの二月であった数々の人達。みんな気のいい人達ばかりだった。みんな笑っていて、とても濃く楽しかった二月を思い出してしまった。

 


…あぁ…くそ……醜いなぁ……………………ちくしょう……ちくしょう……………………死にたく…………ね……え…なぁ……………

 

 オーヴァンの頭がガクンと垂れると、それきりオーヴァンは動かなくなってしまった。











そしてそんな時に、レストがその場に走り込んできた。

 無理をしたのだろう。息は荒く、抉られたわき腹から血が滴る。

 だが、そんなことなどどうでもいいとばかりにレストはその光景を見て息をのんだ。



 何かとてつもないものが過ぎ去ったように直線上に抉られた地面。台風にでも吹き飛ばされたような木々。上半身が丸々無くなっていた理喰らい。

 そして、その直線上に抉られた地面の反対側には更に酷い怪我をしているオーヴァンがいた。


『………オーヴァン。これはお前がやったのか?』


 すでに意識など無い事はレストにもわかっていた。わかっていたが聞かずにはいられなかった。この世界で誰もなし得なかった理喰らいの討伐。身体中酷い怪我をしているとはいえ、目の前の男はそれを成したのだ。



『お前には、驚かされてばかりだな』


 力なくレストは笑う。


『喰われたトレイニー達でも見たのか?』


 レストはゆっくり、ゆっくりオーヴァンへと歩を進める。自身の命が今正に消えようとするのを感じながら。


『優しいお前のことだ。その事で怒ってくれたのだろう?』


 反応もせず動かないオーヴァンをくわえ、寝そべる自分に包まれるようにオーヴァンを寄りかからせる位置に置く。


『ありがとうオーヴァン。この森の、いや、我々のために怒ってくれて。………仇を討ってくれて』


 レストがオーヴァンの顔を舐めるが、オーヴァンはピクリとも反応しない。暖かったその体温がどんどん冷たくなっていくのがわかった。


『オーヴァン、お前は生きよ。生きねばならん。その為なら………』


レストからオーヴァンへと、緑色の光が流れる。

 それはレストの残された力だけでなく、レストの全てが込められていた。

 魔力、生命力、魂、今にも消えそうなそれをオーヴァンへと注ぎこむ。


『私は残る全てをお前に託そう。生きてくれオーヴァン』 


 その言葉を皮切りに、オーヴァンへと流れ込む光の量が増した。

今はこれが自分の限界ですかね(´・ω・`)?


本当、文才が欲しいですわ…………。

色んな方々の読んで勉強しないとなぁ。


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