かいてんのちから
今回はオーヴァンの卒業式です。
何の卒業式かって?
そいつは読んでからのお楽しみよ!
「う、うーん」
なんか寝苦しくなったので、目を覚ます。
あれからどれくらい寝てしまったのだろう。空は少々赤みががっているからそこそこな時間寝てしまったのではないだろうか?
とりあえず起きようとして、身体の至るところに重みがあるのを感じた。一体なんだと思いながら自分の身体を見てみる。
「って、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!?」
俺は大の字になって寝ていたのだが、腕にも足にも綺麗な女性が俺を枕がわりに使い寝ていた。因みに女性の1人はリグラさんだ。他の美女達も、姿が似ているからリグラさんと同じ種族なんだろう。その他は空いている場所などないように精霊達が群がっているせいで、全く動けない。
というか、これ昨日もほとんど同じ事をしていた気がするぞ。しかもみんなスゲー気持ち良さそうに寝ているからやっぱり起こせない。
どうすんべこれ?
『おや?目が覚めたかオーヴァン』
レスト様の声が聞こえたので、顔だけそちらに向ける。レスト様も寝ていたのか、クア~っと欠伸をした。ヤバイ可愛い。
って、それどころじゃない。
「レスト様、これは一体?」
『いやすまぬな。あまりにも気持ち良さそうに寝ているものだから、私達もいっしょに寝てしまおうと、この森の精霊達を呼んだら、そうなった』
「いや、そうなったじゃないですよ。動けないじゃないすか?」
『そうだな。では、皆を起こすか』
レスト様は立ち上がり、バウッと一鳴きする。すると、俺を枕にしていた精霊達と美女達が目を覚ます。声に魔力が込められているのが感じられたので、それで起こしたのか?
起き上がり、俺から離れていく面々。ほとんどの者が残念そうな顔をしているのはどうなんだろうか。まだ、寝足りないのか?
ようやく解放されたので、俺も立ち上がろうとすると、腹の上にいるシルちゃんが俺の頭の上にかけ上がる。そこが気に入ったの?苦笑いを浮かべながらとりあえず撫でる。
『オーヴァン』
「はいなんでしょう?」
レスト様に呼ばれたので、撫でるのを止めそちらをむく。
『実に心地好い眠りをありがとう』
「はい?」
多分、今俺はなに言ってんだコイツって顔してると思う。
レスト様の説明を聞いて驚いた。俺が寝る前にちょいちょいと弄っていた流れは、この森に循環する魔力の流れだったらしい。
「森!?えっ!?大丈夫なんすか!?勝手に操作しちまったんすけど!?」
『安心しろ。むしろ、かなりよくなったぐらいだ』
それを聞いてホッとする。確かにばかでかいとは思っていたが、森そのものに関する力だったとは。つか、回転乃力強すぎねぇか?
イデア様は弱いとか言っていた気がするが、こんな事ができるなら弱い訳がないだろ。またあそこに呼ばれた時にでもきいてみるか?
頭の上にいるシルちゃんを撫で回しながらそんなことを考える。シルちゃんの毛並みはさらさらとしていて、ずっと触っていても飽きない。シルちゃんは俺に腹を見せてされるがままになっているが、クゥクゥととても気持ち良さそうだ。
それを見ているレスト様はウズウズとしていた。シルちゃんの下顎を撫でている時なんて、自分で地面に下顎をこすりつけていた。
しかし、森に流れる力を知るレスト様は一体何者なのだろうか?でかい狼と聞いて、某映画のでかい白い狼を思い浮かべる。もしかして、レスト様はそれに準ずる者なのではないだろうか?そんな疑問がむくむくと膨れる。
うん、気になるし、試しの意味もこめて使ってみるか。
俺は目に意識を集中させ、〈神の鑑定眼〉を発動させる。
「なん……だと……」
映し出されたステータスウィンドウを見て驚愕する。
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種族:神獣(森狼)
HP:550000/550000
MP:69000/69000
固有スキル:植物操作 植物創成 人身変幻
固有アーツ:強襲する大樹の根 慈愛振り撒く大樹の雫 |守護する
大樹の葉
称号:森の守り神
「この辺りを治める家の自慢の子です!可愛いですよね?」
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最後のがイデア様の一口メモか。そのほかにもいろいろツッコミたい所があるが、今はそんなのどうでもいい。
「し、し、………」
『し?』
「神獣だとぉぉぉぉぉ!?」
神獣!?神の獣!?天上人!?いや、天上獣?!しかもこの辺一体治めてるって超偉い方やないすかぁぁぁぁ!?
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!?俺無礼なことしてへんよな?!怒りを買うようなことしてへんよな?!
『うむ?そうだが?……ああ、そういえばきちんと自己紹介していなかったな』
「といいますか、今どうやってレスト様の事を知ったのでしょうか?レスト様に鑑定眼等のスキルは通用しないはずですが?」
『そうでもないぞ。ある一定以上の力量を持つ者の鑑定、もしくは、鑑定眼等の上位スキルなら受け付けてしまう。まさかオーヴァンがそのどちらかを満たしているとは思わなかったが。
この反応から察するに後者であろうが………』
あばばばばばばばばばばばばばばばば!!
『ええい!落ち着かんか!』
「ヒナゲシ!!」
猫パンチならぬ狼パンチで潰される俺。あまりの出来事にパニクッていた俺はついつい変な声が出てしまった。
『落ち着いたか?』
「はい。申し訳ございませんでした。それと、ずっと無礼な態度をとり続けていたことも重ねてお詫び申し上げます」
イデア様直伝 (されてないが)DOGEZAをかます。何だかんだで不敬な態度だったろうし謝らなくてはならない。
『それを止めよ。逆に不愉快だ』
「ですが……」『不愉快だ!』
「う、うす……」
最初に会ったときみたいな威圧感を感じる。まあ、称号効果であんまり威圧感は感じないのだが、怒っているのが伝わってくるので、即座に低姿勢な態度をやめ、足を崩して胡座をかく。
その組んだ足に、それを待ってましたと言わんばかりにシルちゃんがクゥ!!といって飛び込んでくる。
組んだ足の中で寛いでいるシルちゃんを見ていると、なんか崇め奉るような態度に変えるのはなんか違うなと感じ始める。
『態度を変えるな。その方が私も我が子も心地好い』
レスト様のその言葉が追撃となる。
それを聞いて俺は苦笑いを浮かべながらシルちゃんの下顎を擽るように撫でる。
「そうっすね。うりうり~!ここか?ここがええんか?」
クゥ~と気持ち良さそうに鳴くシルちゃん。やっぱり可愛いなあ~。
「っと、いつまでもこうして戯れていたいけどそろそろ帰らなきゃ」
空が既に赤らんでいる事を思いだし、シルちゃんを下ろし立ち上がる。シルちゃんはもっと~っと言わんばかりに俺の脛に身体を擦りつけてくる。
可愛いが、そろそろ帰らないと真っ暗ななか、ギルドまでかえらなきゃならなくなる。あの辺り、暗くなると道がわかりづらくなるんだよね。だから、心を鬼にしてシルちゃんにまた必ず来るからと約束して脛から剥がす。
「それでは道案内は任せて下さい」
リグラさんが俺の腕をとり、また胸に埋める。
もう俺は諦めてギンギンにしたまま歩くことにした。
『では、またなオーヴァン』
「はい。また。シルちゃんもバイバイ。また必ずくるからね?」
クゥクゥ?と絶対だよ?と言っているようだった。
そして、歩き始めた俺に
『……死ぬなよオーヴァン』
という呟きが聞こえた。
死ぬって縁起悪いな。というかリグラさんがいて死ぬような事はそうそうないでしょうよ。リグラさん強そうだし。
歩き始めて少したった頃。大体15分位かな?周りに違和感を感じる。
「あれ?リグラさん。ここ、昨日と違う道じゃないですか?」
「へ?ど、どどどどうしてそうおもうんです?ソンナコトナイデスヨ」
?リグラさんの反応がちょっと怪しい。なんだろ?
「……いや、やっぱり違いますよ。ほら、トレイニーのリグラさんならわかるかもですが、彼処の木。皮になんかの動物のマーキングの跡あるじゃないですか?あんなの見たことないですし。
それに、入口付近って言えばいいんですかね?森に入って直ぐの木に比べてこの辺の木には魔力がよく見てとれますし。だからかわかりませんが、この辺の木は生き生きしていて空気がなんかさらに澄んでいる気もしますからね」
そう言うとリグラさんが物凄く驚いたような表情をして、俺を見ていた。
「な、なんでわかるのですか?」
「いやあ、言いましたけど田舎育ちでしてね。森の中とかで迷わないように木々の表情って言えばいいんですかね?そういうのを見逃さないようにしてますんで」
「そうですか。私達の事、よく見てくださってるのですね」
リグラさんが満面の笑みで俺を見る。
美人な女性の笑顔ってのはどうしてこんなに惹かれるんだろう。俺はその笑顔に見とれ、次第にリグラさんから目がはなせなくなる。ぷるんとした唇、若干緑色が目立つが張りのある肌。その朗らかな笑みには妖艶さすら感じて、俺は自分の性欲が段々押さえられなくなる。
誰もいないし、このまま押し倒しても………
「って、いかーん!!」
バチンと自分の頬をはたく。
善意で道案内してくれてるリグラさんになんてことしようとしてんだ俺は!!これだから童貞は!
「ど、どうしましたオーヴァン様?」
「ああ、すみません。自分の欲望に負けそうになりましてね。ちょっと喝を入れたんですよ。ははは……」
「そうですか。オーヴァン様にはやはりわたしの〈魅了〉は効きませんか」
「ははは。危うくかかる所でしたけどね。ははは、はは?……〈魅了〉?」
「はいそうですよ。オーヴァン様を魅了してここで事に及ぼうと思っていたんですが、失敗に終わりましたね」
あ、あれ?なんか背筋が寒い。おかしいな、まだそんなに寒い季節じゃないはずなんだが?
「ですが、私達のほうがもう我慢の限界なんですよね」
リグラさんが俺の腕を離し、少し離れた所で振り返って妖艶な笑みを浮かべ俺を見る。それを見て背筋が一層寒くなる。そして思い出す、リグラさんが私“達”と言っていたのを。
「あ、あの、リグラ、さん?仰っている意味が汲めないのですが?」
この時に聞き返したりせずに逃げていればもしかしたらなんとかなっていたかもしれない。だが、聞き返さずにはいられなかった。
「すみませんオーヴァン様。ですが、本当にもう我慢できないのです」
どういう意味ですかと聞き返そうとすると、シュルシュルと俺の手足に蔦が絡み付く。
かなり頑丈見たいで、いくら引っ張ってもびくともしない。
「な、なにをするんですかリグラさん?!これはいった…っ!?」
俺の言葉はそこで途切れる。
何故かって?
身動きのとれないこの状況で俺達以外の人影を見つけたからだ。
それも1つや2つではない。10個もだ。
その人影を見つめるとそれがなんなのか直ぐに理解できた。
大事な部分しか葉っぱで隠れておらず、肌がやや緑色をした美女達。リグラさんとおなじ樹精霊だといのが、鑑定眼を発動しなくてもわかった。
ただ、その美女達は1人の例外もなく発情しているようだった。呼吸は荒く、顔はほんのり紅い。そして、その目は俺に固定されていた。
そして、リグラさんが身動きのとれない俺に近寄ってくる。
「本当に申し訳ございません。ですが、大丈夫です。痛くありませんから、とっても気持ちいいですから」
気持ちいいってまさか、俺今貞操の危機!?
いや、リグラさん達皆美人さんばかりたから嬉しくないと言ったら大嘘になるけど、ここ、こんな場所なんて!?
どどどどうする?!落ち着け俺!?こいう時は、一体どうしたらいいんだ!!?
そんなあわてふためく俺の脳内に声が響いた。
“全く仕方ありませんね”
イリア!?まさか俺を助けてくれようと?
“そうですよ。仕方なくではありますが”
お、おお!!イリア。俺、お前の事誤解していたよ。お前は人の不幸を笑うSなやつだとばかり。
“オーヴァンはスキル〈精力増強〉を入手しました。”
スキル〈精力増強〉を入手しました。
リ ビ ド ー を 入 手 し ま し た。
「イリアァァァァァァァァァァァァ!!」
俺!お前の事誤解していたよ!!お前は人の不幸を見て爆笑するどSヤローだよ!!
”よくご存じで。ですが、私はどちらかと言うとヤローではなく女ですよ“
うるせぇよ!?んなこたどうでもいいわ!!
「オーヴァン様?」
「はい!?」
リグラさんがいつのまにか目の前にいて両手で俺の顔を固定する。
「イリアというのは、彼女かなにかですか?」
リグラさんの目が笑っていない。あ、あれ?なんでそんなにおっかない顔をしているんですかリグラさん。
「い、いや、別にそんなんじゃ」
「フフフ。隠さなくても大丈夫ですよ?直ぐにそんな女なんて忘れさせてあげますから」
だからか怖いって!!ど、どうすんの俺!?
「安心してください。そんな女なんかより私達のほうがずっと気持ちいいですからね?」
リグラさんはどんどん顔を近づけてくる。このままだと接吻してしまうんじゃ!?
「い、いや気持ちいいとか言われても、お、俺したことないし」
「えっ………」
リグラさんの動きが止まる。とても驚愕の表情をしていた。リグラさんだけじゃない。他のトレイニーさん達も驚愕の表情をして止まっていた。
おや?もしかして、童貞相手は抵抗でもあるのか?なら、そこを押し出していこう!
「そ、そう!お、俺したことないんで全然自信ないんで。こんなことはやめうぷっ!?」
俺の言葉はリグラさんの唇によって遮断される。あまりの事に茫然自失となっている俺の口内にリグラさんの暖かな舌が侵入してくる。
「うむ!!うんぇうむむ!!」
あまりの事に声をあげてしまうが、リグラさんはそんなのお構いなしに舌を動かし、俺の舌に絡ませてくる。テレビなんかでよく見るやつよりかなりディープなキスだった。
時間にして1分にもみたない時間だったが、俺には数十分にも感じられた。頭のなかに電流でも走ったのか、真っ白で何も考えられなくなっていた。
ようやく離された口からは唾液の糸が引いていて、かなりえっちい。
「オーヴァン様。それは私達を誘っているんですね?そうなんですね?」
どうやら俺が童貞という情報は、彼女達のヤる気に油を注いだだけのようだ。
こうなったら仕方ねぇ。俺も男だ!腹を決めて相手してやろうじゃねぇか!!
「や、やさしく、優しくしてね?初めてだからか、うまく出来ないし直ぐにあれかもだけど?」
「…………はい!」
俺は総勢11人の相手に輪された。回転乃力ってそんなのまで操れるの?
そして。
誠に。
誠に遺憾だが。
イリア、あのタイミングでスキル〈精力増強〉をありがとう。
“どういたしまして”