出会い
時は30分ほど遡る。
荒山 優は学校からの帰宅中だった。
夏の雲1つない晴天の中を歩く。
今日は学校の終業式だったため昼前に
帰宅している。
その為太陽はまだ高く、夏の日差しが
肌に容赦なく暑さを感じさせる。
「―――あっつ…」
今日何度言ったかわからない言葉を
呟く。
今年の夏は過去最高の暑さになるらしい。
「明日から夏休みで本当に
よかった……」
高校生である彼は明日から夏休みが始まる。つい先程、最後の試練の暑い体育館での校長長話を終え、ようやく解放されたのだ。
「とりあえず、家帰ったらシャワーを
浴びないと…ん?」
汗で濡れたシャツを見ながら呟いていると前方に人の気配を感じ前を見る。
「……………………………。」
言葉が出ないほど見とれる、身を持って体験出来るとは思えなかった。
それほどまでに可憐だった。
目の前にいたのは1人の少女だった。
「ん?」
俺に気が付いたのかこちらを向き少女の動きに会わせ髪が揺れる。
少女の髪は輝く銀髪で、腰まで届く長い髪だった。
瞳は綺麗なブルーアイ。
幼い顔立ち。細身で小柄な体型。
年は12~13歳ぐらいだろうか。
そして年相応の少しフリフリしている
青がメイン色の服を着ている。
「あなたは…」
「あっ、ごめん怪しい者じゃ……」
怪しい人にしか聞こえません。
「ち、違くて、いや違わないけど!
君に見とれてただけで!」
はいアウトーー。
変態確定された、不審者確定されたー
「え、あ、ありがとう?」
ん?以外のセーフだった?
「と、とにかくごめんね!!
じゃこれで―――」
「あ、待ってください」
「はい?」
恥ずかしさと罪悪感で早急にこの場を
去りたかったのだが少女からまさかのストップコール。
「あの、お聞きしたいんですが」
「うん」
「荒山優さんですか?」
「えっ?」
彼女口から出たのは俺の名前だった。
「なんで俺の名前を?」
「私はあなたを見ていた…」
「――――はい?」
「世界に予言された、あなたを…」
あれ、この子そっち系の人?
「私は………あなたに頼みに来た」
「……頼み?」
そして少女は叫ぶ。
心の悲鳴を。
心からの願いを。
目に大粒の涙を溜めた顔で。
「私を…私達を…助けてください!」
名前も知らない少女の頼みは正直半分も意味はわからなかった。
何から何をどう助けるのか。
そもそも名前を知ってる理由は何?
なぜ俺に頼む?
普通は断るか、もう少し詳しく聞いてから判断する所だ。
だが、俺は必死になって助けを求める
少女の気持ちに答えたかった。
少しでも早く安心させたかった。
何より彼女の助けになれるのなら、俺は力になりたいと思ったから。
だから俺は答える。
「任せろ!俺がお前の力になってやる
だから泣くな!笑え!!」
力強く、気持ちを込めて。
「あ、ありがとう…ありがとうござい
ます…!!」
彼女は笑った。安心したように。
その笑顔に俺はまた見とれたのだった。
「さて、どうすればいいのかな?」
彼女が完全に泣き止むまで待ってから
(あの後、嬉し泣きが始まった)
彼女に質問タイムを開始する。
「えっと、とりあえず行きましょう」
「どこに?」
そう言うと彼女はポケットから1つの
ネックレスを取り出した。
ネックレスのチェーンには長方形の形
いや、ドアの形をしている物がぶら下がっている。
「ХЧеЧШжеЦРЬЦ」
突然、彼女が呟く。
聞いたこともない言葉だ。
するとネックレスが光輝き始めた。
「な、なんだ!?」
「∈⊆⌒∂∀∠⊥∂」
さらに彼女は言葉を紡ぐ。
輝きは強さを増していき、ついには
直視出来ないほどの光が生まれる。
「…………!?」
眩しさに耐えかね光から背を向ける。
「⇒жХЦ∀Ш!!!!」
彼女が最後に力強く何かを言うと
光は爆発的にさらに光を増し、そして消えた。
「…………」
恐る恐る前を見ると
「なっ!?これは……」
扉、いやこれは門。
それも大門。
高さ3メートルはあるだろうか。
さっきまで無かったはずの物が突然
目の前に現れた。
「荒山さん」
門の前に少女が立っている。
「さ、行きましょうか!」
「い、行くってどこに?
それから君はいったい!?」
「しゅっぱーつ!!」
彼女の掛け声と共に門が開いていく。
門の中は真っ白な空間で先は見えなかった。
「え、ちょ、ま、」
さらに門の中へ向かって風が吹き始めた。その勢いは増していき、まるで巨大な掃除機に吸われているみたいだ。
ついに耐えきれなくなり門の中に
吸われる。
「う、うわぁぁぁぁぁあ!!!!」
門の中に荒山が吸い込まれ、謎の少女も追うように中に入る。
二人が入ると門は出現した時と同じく
突然消えた。
「―――――――こ、ここは?」
目を覚ますとそこは森の中だった。
俺は地面に横たわっていた。
「っと♪」
突然横に人の気配を感じる。
見るとそこにいたのはあの少女だった。
「無事に着きましたね!」
彼女の後ろにはあの大門があった。
あ、今突然消えていった。
どうやら気絶したのはほんの一瞬だったみたいだ。
「ここはいったい?」
「詳しい話は部屋に入ってから!
とりあえず中に入りましょう!!」
「部屋?家なんてどこにあるんだ?」
「やだなぁ荒山さん、目の前に…」
彼女の指差す方を見るがそこには木しか無い。延々と続く森である。
「目の前にありません!!
なんで!?」
彼女はアワアワと歩き回り家を探すが見える範囲に家らしきものは無い。
「な、なぁ大丈――――」
「ブヒ」
「ブヒ?」
彼女に声をかけようとしたら後ろから
鳴き声がする。聞き間違えなければ
今のは豚が豚に近い猪などの鳴き声の
はずなのだが。
「ブヒー」
振り返った先にいたのは豚の顔を持つ
違う謎の生命体だった。
「―――――鳴き声は普通だな…」