プロローグ
少しでも楽しく読んでいただけたら嬉しいです。
不定期の更新ですのでご迷惑をお掛け致します。
「ブヒッ」
目の前に豚がいる。
否、豚に似た何かである。
豚の顔、緑の皮膚、二本足で立っている。
簡易な鎧を装着しており、手には石で出来た
棍棒を持っている。
そんな謎生命体が目の前に五匹いる。
「ブヒッ」
「―――――鳴き声は普通だな…」
「何を冷静に観察してるんですか!?
私たち今、絶対絶命ですよ!」
俺の隣で少女がパニクってる。
「うん、ごめん。
とりあえず俺もパニクっていい?」
口ではそう言いながらも俺は
驚くほど冷静だった。
人間、自分より慌ててる人を見ると逆に冷静になれるって本当なんだな。
だが、今回は理由は他にもある。
とにかく、わからないのだ。
今居る場所も、目の前の謎生命体も
隣にいる彼女の名前さえも。
気が付いたらここに居て、目の前に
謎生命体がいたのだ。
「ブーブー」
「ブヒヒヒヒ!!」
豚野郎どもが不気味に鳴く。
奴等はジリジリと距離をつめてくる。
俺も彼女も後退しているが奴等が本気で追ってくれば逃げ切れないだろう。
「荒山さん……ごめんなさい」
彼女が語りかけてくる。
「私の願いを叶えてくれるって、
言ってくれたのに!!
私のドジでこんな事に!!」
涙を流しながら謝ってくる。
そう、俺は彼女の、名前もしらない、
何も知らない彼女の願いを叶えると
約束した。まぁぶっちゃけこんな事に
なるとは思っていなかったけど……
それでも
「俺は後悔なんてしてないよ…」
「えっ?」
「だから謝らなくていい……」
「荒山さん……」
脳裏につい先程の光景が思い浮かぶ。
日常が非日常へと変わった彼女との
出会いの場面が。