Part3 予想以上の苦難
とてつもなく久しぶりな更新です。
なんと、去年7/5ぶりの更新!
停滞し過ぎやろっていうね。
今年は大学合格したので書けるんじゃないかな………………
「スマンね、人手は足りてるんだ」
その言葉に、深い溜息が出る。
これで、今日5ヶ所目だ。
どうやらこの街、人口に対して仕事の量が少ないらしい。
次はどこに行こうか。
仕事の量が少ないと言っても、50以上はある。全部に片っ端当たれば、何処かで雇ってくれるにちがいない。
……と、思いたい。
「近くに確か、八百屋さんあったよね。そこ行ってみようかな」
さっきから、こうやって色々な店を回っている。
けど、今のところ当たりは無し。
「一日目で決まるとは思ってなかったけど、ここまで断られると、くじけそうだ…………」
ぼやきながら、目的の八百屋を目指す。
まだこの街の地図など覚えていないため、今まで通った道をぼんやりと思い出しながら歩く。
そのため、一日に回れる店の数は、多いものではなかった。
既に、日は沈みかけていた。
「今日は、次が最後かな。もうちょっと回りたかったけど……」
仕方ない。
この街は日が落ちるのが早いんだ。
まだ一日目、一ヶ月もあるんだから、仕事の一つくらい見つかるだろう。
そして結局、次の店でも断られ、一日が終わった………………
◇◆◇◆◇◆
最初は、仕事なんてすぐに見つかるものだと思っていた。
でも、甘かった。
仕事探し開始から、もう3週間が経っていた。
仕事は、まだ見つかっていない。
あと1週間あるとはいえ、すでにほぼ全ての店を回り終えた。
多分、残ってるのはあと5、6ヶ所。
もしもこのまま仕事が見つからなかったら?
無意識に想像してしまった最悪の光景を、頭を振って忘れようとする。
「………………帰ろう」
明日は3ヶ所、面接をしてもらえることになっている。
今日無理をして、他を回る必要は無いだろう。
それよりも、今は早く身体を休めたい。
自宅の扉を開き、中に入るとそのままベッドに倒れ込んだ。
シャワーは………………明日、面接に出発する前に浴びよう。
私の意識は、そのまま深い眠りへと落ちていった。
◆◇◆◇◆◇
結論から言うならば、前日に何の準備もせずに寝てしまったのが、運のつきだった。
目を覚ました時点で、時計の針は11時を指していた。
今日の面接、最初の場所は10時。
次は11時30分からだった。
最初の場所は完全に遅刻。次の場所は、今から支度し始めても間に合う距離ではなかった。
「と、とにかく、2ヶ所目に行ってみよう! 10分くらいなら大目に見てもらえるかもしれない!」
印象は最悪だろうが、行かないより行く方が断然いい。
急いで身支度を整え、家を飛び出した。
ここからお店までは、走って40分ほど。
いつもより速く走れば…………!
「ようやく来たのか。残念だが、もう面接はしないよ」
お店に着いて、一番最初にかけられた言葉がそれだった。
結局いつもと同じだけ時間がかかり、10分遅刻。
「そんな…………」
「面接の注意事項にも『遅刻厳禁。遅刻者は不採用とする』って書いてあるからね。伊藤さんとこも遅刻したって聞いたよ? 働く気がないなら、無理に働くことは無いんじゃない?」
「働く気ならあります! お願いします!」
「面接に遅刻してる人が言っても説得力無いよ。ほら、帰った帰った」
「でも……………!」
ガシャン、と。
無情にも閉められるシャッター。
「嘘でしょ………………?」
こんなことになるなんて。
数少ない希望が、こんなにもあっさりと砕け散ってしまった。
「ああ、月宮さん、ここにいたのかい」
背後から声をかけられる。
振り返ると、今日最後に面接を受けるお店の店主が立っていた。
少しだけ髭を伸ばした男性だ。
「伊藤さんに聞いたんだけどね。面接遅刻したんだって? 今の様子を見ると、ここも遅刻したみたいだしねぇ。大事なときに遅刻しちゃうような子は、うちでもあんまり歓迎できないんだよね」
「そんな…………大丈夫です! 絶対今後は遅刻なんてしませんから!」
「そうは言うけどね。君、今までも『これからは』って言ったことは何一つできなかったからね。流石にもう信用はできないよ」
落ち込んでいたところへの、更なる追い打ち。
精神的なショックは、相当なものだった。
「それじゃあね」
店主が去っていくのにすら、反応を返せなかった。
まだ2ヶ所ある。そう自分に言い聞かせたが、この3週間でわかった。
月宮玲音という人間は、この街の人間に全くと言っていいほど、信用されていない。
先の3軒だって、何時間もお願いして、ようやく面接を取り付けてもらったのだ。
元々なかった信用を、寝坊、面接への遅刻という形で、更にどん底まで叩き落とした。
恐らくは、これからどれだけ頼み込んだとしても、面接すらしてもらえないだろう。
そう考えると、自然に涙が溢れた。
自分はこれからどうなるのか。
職が見つからなかったら、あの借金取りの下で働く。
どんなことをさせられるかはわからないが、こんな賭けを持ち掛けて来たのだ。ろくなことじゃないんだろう。
空を見上げる。
街を囲む岩壁に狭められた空は、厚い雲がかかり、暗くなっていた。
「雨、降りそうだなぁ…………」
呟く言葉は、暗闇に溶けて消えていった。