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愛妻白書。(手のひらの孫悟空状態)  作者: カトラス


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22/24

名医の歯医者。

診察室内には白髪の歯科医師が立って私を待っていた。

ぱっと見た感じ50代後半のような感じで細身だが人当たりの良さそうな男性医師といった感じである。


「お待たせしました。どうやらかなり虫歯が痛むようですね」


問診票を見たのだろう。

先生は治療用のデンタルチェアに案内がてらそのように聞いてくる。


「はい、昨晩から痛くてね」と答えつつ。

たいして待ってないよ。

というか、患者は私だけだし……。

などと思いながら椅子に座る。

チェアーの横のテーブル上には様々な細身の医療器具が綺麗に並べられている。


「それではお口の中見せてくださいね」


痛いから歯医者に来てるわけだが一番嫌な場面だったりする。


私は「アーン」と見られたくない口の中を診てもらう。


「ちょっと虫歯の場所確認しますからね。痛い箇所があったら右手を上げてくださいよ」


そういうと先生は鏡のついた細長い鉗子のような歯科器具を歯に当てていく。


「ここは、どうですか?」


先生は器具の先っぽで右奥歯の下側を「コンコン」と軽く当てて確認している。


私は突然襲ってくるかも知れない痛みにガクブル状態だったりする。


「こっちは?」


私はモゴモゴと「だいじょうぶです」と返事をする。



すると、先生は「あれれ、おかしいね。今触れてるのは患者さんが問診に書いてくれた痛む場所なんですよ」


「そうなんですか」

と言うと、「いやいや、よくあることなんですよ」

先生は説明をしだした。


「歯の神経っていうのは面白いもんでね、痛いと思われていても、実際は違う場所の神経が虫歯に侵されてるなんて事がよくあるんです。例えば、ここなんかどうですか」


「ズキっ」

っと激痛が身体に走った

「痛い、痛い!!」


思わず声を出してしまった。


「なるほど、やっぱりそうだ」


先生は手応えがあったことに満足そうに言った。


「触れたところは奥歯じゃないですよ、左の前歯ですね。虫歯の場所が分かりましたのでね」


そういうと口の中に入れていた器具を抜いた。

「うがいなさってください」


「ぐじゅ、ぐじゅ、ガラガラ、ベッ」


私がうがいが終わると先生は「じゃ、麻酔打って治療はじめましょうか」と言って座ってる電動チェアを操作して治療しやすいように寝かせはじめた。



先生は「ちょいとお待ちください」と麻酔薬を取りに行く。

どうやら、この歯科は歯科助手はいないみたいで先生が一人で治療するようだった。


それに、今まで通っていた歯科では歯の確認をしたら虫歯の広がりを見る為にレントゲン撮影するのだが、ここはしないようだ。


大丈夫なんだろうか? と少し不安な気持ちになった。


それを汲み取ったか分からないが先生はその事について麻酔を打ってから神経が麻痺する間に熱く語ってくれた。


「ふつうは、麻酔打つ前にレントゲン撮るのだけど、長年やってると、この虫歯が神経まで侵しているか、いないか見たら分かるのですよ。レントゲンは治療費が高くなるからね。うちは出来るたけ使わないようにしてるのですよ。ちなみに患者さんの場合は大きな穴があいてて虫歯は神経の奥の方まで進んでますよ。痛いのはそのせいです」


麻酔が効くと治療が始まった。

歯科助手がいない分、先生の手際は良いように感じた。


虫歯のある部分を「キュイン」と嫌な音がする器具で削る。口の中でドリルが舌に当たるのじゃないかと不安になる時間も手際が良いから短く済んた。


そして、麻酔が効いていも痛みを感じた神経を抜くと治療は完了した。

「ほんとわね、神経は抜きたくなかったけど、だいぶ虫歯が進んでたからごめんなさいね。今日は抜いた神経が痛むかも知れないけど、我慢出来なくなったらいらしてくださいね。まぁ、市販の痛み止め飲むだけでも違うから」


治療が終わり、受付のメガネのオバサンに「次はいつですか?」と聞くと、「先生に聞いてきます」と診察室に消えた。


戻ってくると「治療は終わったそうなので、痛くなったら来てくださいとの事」。

肝心の治療費は以前行ってた歯科医院の半額くらいで財布に優しい。


痛みが取れて、ストレスから開放された私はご機嫌で帰宅する。


「ブヒムヒ意外と早かったね」

と妻が聞いてくる。

私はさきほどの見事な治療と患者に対する配慮に興奮していたので妻に熱く語っていた。


「いやいや、貴子さん。君がヤブ医者だと言ってた歯科はまさに名医でしたよ。なんちゅうか手際も良いし、金、金してなくて好感もてましたよ」


妻はふーんとした感じで聞いていて、「まぁ、あんたが気に入って治ったのなら良かったやん」と、だけ言うとお風呂に入りに行った。


それから、数日後のこと。

私は歯の痛みなどすっかり忘れて、ご近所さんから頂いたトウモロコシをかじっていた。

最初は豪快にムシャムシャとかじり、残った粒をあとから楽しむスタイルの食べ方だ。

そんな感じで残った粒をかじっていると、「バキっ」と嫌な音がして口の中でコーンじゃない固いものを舌が感じた。

「ペッ」と手の上に吐き出して固いものを吐き出した。


「ウギャー、あわわ」。

私は見てはいけないものを手の上で確認してしまった。


だって、それは自分の歯の欠片だったから……。

急いで洗面所に行き「イー」とすると欠けた部分を確認した。


欠けた箇所は左の前歯だった。

そう、先日に虫歯を治療したところだった。

欠けた原因は定かではないが、あの名医と思っていた医者が歯を削り過ぎた事は容易に想像できた。

今から思えば早く削っていた反面、雑だったのだろう。


そんな事を思っていると、妻が現れた。

「どうしたの? ブヒムヒ、そんなところに突っ立って。ブサイクな顔見て笑ってたんか」


いつも、嫌なタイミングで現れる妻。


私は鏡でしたように妻に「イー」として歯を見せた。


「あんた、歯欠けてるでぇ。男前になってどうしたん?」


と大笑いしてた。

「トウモロコシかじってたらこうなった」


「私に隠れて卑し食いしてるから、そうなんねん」


と、妻は実に楽しそうだ。


「だから、言うたやろ、あそこはヤブだって」。


分かっていたが、妻に言われたらより刺さってしまうメンタルだった。


「藤田予約してあげるから、ちゃんと直してもらい、これ以上ブザイクなったらあたしが恥ずかしいわ」



後に知った事だが、かのヤフオク歯科は入れ歯では有名な歯医者だそうだ。


手のひらの孫悟空状態、居心地は微妙である。








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