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愛妻白書。(手のひらの孫悟空状態)  作者: カトラス


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天国から地獄

「あんた、昼間から優雅にパチンコですか。仕事さぼったんか?」


妻は声を荒げる事もなく至って冷静に私の耳を引っ張りあげながら聞いてくる。


こういう時の妻が一番怖いのは過去の経験から百も承知なので極力無駄な抵抗はしないように心に決めることにする。


「いや、さぼったというか、あとで連絡しようと思っていたのだけど……。急に休みになって」



話ながら言い訳をするものだから、しどろもどろで無理があるのは自分自身が一番分かっている。


「ふーん。で、あんたは、遊びが終わったら何くわぬ顔して、今日は仕事大変だったと平気で嘘つくんだ」


さすがに長年付き合ってきた妻だけあって、私の生態は熟知していて図星である。


だが、ここで妻の主張を認めたら血を見ることになるのは明白だから、ここは嘘の上塗りをするしか道はないのだ。


「だから、一段落したら電話しようと思っていた矢先に貴子が来たって感じなんだよ。嘘とか神にかけてついてないので信じてくれよ」



自分でゆうのも何だか、全く安い神様である。


「そういう事かぁ。じゃ、一回会社には行ったんだね」


「あたり前じゃないかよ。会社に行ったら設備トラブルがあって仕事にならないから、上司が有給あんまり取ってないから休んでいいって事になって今に至るって事なんだわ」


そのように私が言い終わると妻は一瞬笑みを浮かべた。何だか嫌な感じだと頭の中でしばし警鐘が鳴る。


その鐘が鳴りやむやいなや、おもむろに妻は私の腕を強く引っ張ると強引に席を立たせた。


そして、いきなり「嘘つき」といい放つと同時に、太ももに激痛が走った。痛みの原因は妻が私の太ももを膝で繰り上げる通称「チャランポ」を決めたからだった。


「何が一回会社行っただと、あんたがネットカフェに行ってからパチンコに来てるのは知ってるのよ」


妻にチャランポを決められて、痛みにもんどりうっている中、嘘がばれた理由が解明されて行った。


妻の話によると、得意先回りの配達中に偶然にも私の車を見つけて後をつけたらしい。


その場で捕まえて問いただそうとしようかと思ったのだが、面白いので放置していたという事だった。


ようするに、私は言い訳が出来ないような決定的な証拠が出るまで泳がされていたのだ。


バレてしまっては仕方ない。

こうなったら一か八かの開き直りの逆ギレで打開するしかないような気がした。


そう、今日の俺はイケテる、ラッキーボーイなんだと……。


「ほんま、うっさいなぁー。亭主がたまの休みぐらい好きな事してもいいやろー、


俺は日々会社の社畜となって仕事頑張ってるからお前に小言言われるような事してないぞ」


イケテるはずの私は更に日頃たまってるうっぷんを吐き出そうと妻に文句を言おうと口を開けた途端に「じゃかましいんじゃ」と声が飛び「パーン、ピシャッ」と鼓膜に乾いた音が響いた。


頬に蔦わった衝撃がラッキーボーイを全否定してくれるには十分過ぎるってものだ。


痛さによわい私の身体は正直なので、先ほどまでの勢いはなく口はだんまりを決め込む選択を脳みそは選択していた。


「あんたぁ、言うことあるやろ。わたしに謝り、お前っていったやろ」


前にも話たが妻はお前って自分の事を呼ばれると過剰に反応して暴力に訴えるところがある。その証拠に私が詫びないと、更に頬に一撃を与えようと手を振りかざそうとしているのだ。


しかし、ここで安易に謝ってしまっては漢じゃないし、妻に対して一生詫び続けないといけない人生なんて酷いってもんだ。負けてたまるか、と心には思うのだが……。


私の口からは妻に対して、「どうも、申し訳ございませんでした」と言って深々と頭を下げている自分がいた。


私自身このような詫びは不甲斐なくヘタレ丸出しなのだが、やはり妻の放つ打撃系の攻撃は身体が覚えてるだけあって頭の判断は正直だと言わざるえない。


頭を下げている間に、ふと、お姉ちゃんに醜態を晒してしまったと思い薄めで彼女の方を見たのだが一瞬目があったかと思うと顔をそらされ下を向かれてしまった。


まぁ、お姉ちゃんにしたら武士の情けといったところだろうが、これでお姉ちゃんとのロマンスはワンチャンどころか完全に終わった事を意味していた。


せめて、出玉がある分換金して懐を温められるのが、唯一の救いと諦めるしかないのだ思うことに心を切り替えようとしたのだが……。



そんなに甘い嫁さんではなかった。

「あんた、なんか調子よさそうやけど、これ全部貴ちゃんのものやからな。もう仕事に戻るから、ちゃっちゃとお金に替えてきなさい」そう、妻は言うと高く積まれたドル箱を足で軽くこついて催促してきた。


何が「全部貴ちゃんのものだ」そんな事が通ってしまったら私の労力は水泡に期してしまうではないか。せめて半分は頂いて小遣いにしないと割にあわない気がする。


「貴ちゃん、いや貴子様、換金してくるけど全部は殺生ですだ。せめて半分、いや軍資金に投資した一万だけでも貰えないでしょうか」



実際の投資額は3000円ちょいなのだが、少しでも儲けを出したい一心での陳情である。


すると、妻は「ちょっとこい」と私を店内に連れだした。きっと店内では言えない事や更に痛い事をされそうな嫌な予感がする。



それでも、店外に出る道中に「一万だけでも」と必死に取り高交渉を試みていた。


ただ、妻は黙ってままで何の回答もなく不気味である。


そして店外に出た途端、妻は衝撃的な事を言ってきたのだった。


「あんた、私の貯金箱からお金抜いてるやろ。あんたは小学生かこれが請求書や」と言って手書きのメモ用紙を手渡された。


そこに書かれた金額は20万円となっている。確かに妻の500円貯金からちょくちょく拝借していたのは事実であっていくら取っていたかは定かではないが20万円というのは、流石に盛りすぎで、せいぜい抜いたのは100枚にも満たない5万円以下だと思うのだが、妻にそんな事は通用しない。


「貯金箱の中にバレないように重しまで入れて、あんたは最低な人間やな。だから、利息も含めて換金したお金は全額没収やから」


皆まで言われて万事休す、おしまいであった。


結局、私はパチンコで換金したお金4万円弱を全部没収され、帰宅してから過酷な便所と風呂掃除を仰せつかったのだった。



掌の孫悟空状態、居心地はかなり悪い。

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