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愛妻白書。(手のひらの孫悟空状態)  作者: カトラス


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対峙

「いってらっしゃい。ブヒムヒ頑張ってね。あんまり無理しなくていいから。とりあえず時間稼ぐんだよ!」

 


 妻はあっけらかんと脳天気な感じで、なんとも意味深な事を言って私を送りだしてくれた。


 いやが上にも頑張らないといけない状況に追い込んでしまっておいて、妻のエールにはやや矛盾を感じてしまう。


 それに時間を稼ぐってどういう意味なんだ。

もしかして、顔面凶器とやり合ってる隙に逃げようとしてるってことなのか? 


 いや、しかし、それはないとすぐに思った。


 私を置いてとんずらしようにも前後の道はふさがってしまっていて、逃げ場がないからだ。


 うーん、全く謎だ。


 いずれにしても、妻の言ったことに関してあれこれ考えている時間は私にはなかった。

 なぜなら、車外に出た途端に顔面凶器の威勢のいい声が聞こえてきたからだった。


 声の主は軽自動車のボンネット越しで腕組みをして、鬼のような形相をして仁王立ちしていた。


「なんじゃい。我わ? 勝負したるぞ! こらぁ~」

 いきなり、顔面凶器は思わず後部座席に帰りたくなるようながなり声でかましてくる。


 きっと、この輩は、こういう状況は日常茶飯事で恫喝っぽい言い方から場馴れしているに違いない。


 だいたい「勝負」も何も明らかに初めから雌雄は決してるではないか。


 私は、人間本来が持ってるだろう防衛本能から瞬時に頭をフル回転させ、どうしたらこの危機的状況を痛い思いをせずに回避する事が出来るのかと必死に考えた。


そ こで浮かんだのが、話し合いによる解決だ。


 だが、相手はかなり興奮しておられるので、入り方を間違えたら血を見る展開に即座に発展しかねない。ここは一つやんわりと……。

「いやぁ、ご主人。ほんまにあいつらアホでたまりませんなぁ。いやいや、誠に申し訳ない」

 私は本能的に両手を後頭部に置き相手に対して敵意がないことをアピールすると、恐らくひきつってるであろう顔で笑顔を作ってみた。


 私がこういった行動を取ったのは、実は自宅で飼ってる二匹のミュウとゴン太と言う名前の犬の行動から学んだもので、我が家同様に力で勝るメス犬のミュウがオス犬のゴン太の事が気に食わないとゴン太の身体を噛みまくる。


 その時にゴン太は「堪忍してくれよ!」とばかりに体を仰向けの無防備な状態にしてミュウにご慈悲をこうている姿を思い出してのことだった。


 いずれにしても長いものには巻かれろ作戦でこういう時は謝るが勝ち、変なプライドなどは屁の突っ張りにもならないってことなのだ。


 流石に顔面凶器も鬼のような形相であるものの人の子だったら全面降伏してる私に一方的な暴力などしてこないと踏んでの対処である。

 案の定、顔面凶器はやや激高した態度を軟化させてきた。


「なんやぁ、兄ちゃん。てっきり勝負するんかと思ったら違うみたいやな。なんか拍子抜けしてまうわ」

 顔面凶器はなんとも言えないうすら笑いを浮かべてそう言ってきた。

 

 初対面の人に対して「兄ちゃん」なんて気軽に呼ぶのは飴ちゃん持ったおばはんか質の悪い輩ぐらいなものである。


 しかし、「拍子抜け」ってこの言葉からすると、この御仁は本気で肉弾戦をするつもりだったみたいだ。


 やはり話し合い路線に持ち込んでいくのは正解に思われた。ここはこの路線を貫くのが穏便に事を解決させる最善策に違いない。

「ほんまぁ、私がいたらないばっかりにこんな事になりまして――ご主人すんませんねぇ」


 私は顔面凶器に誠意を見せる為に直立し、相手の目をみながら頭を深々と下げて詫びを入れた


 詫びの入れ方は、以前に会社が大規模リコールを起こした時に自動車販売の販社にメーカー社員として赴き、そこで現場の方に教えてもらった事だから自信があった。


 実際にふつうの人は誠実に謝ったら許してくれたから間違いはない。

 だが、それが通じるのは常識のある一般の人であって、私は顔面凶器があっち系の本職である事をすっかり忘れていたのであった。

 


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