後
「白取~? 何言ってるの?」
大丈夫かね?
私の一言にがばっと顔を上げた。
「あ…白…取……」
何故か、白取の目はウルウルと今にも泣きそうな顔になる。
何か不味い事言ったっけ?
…ココで羽触りたいとか言ったらKWですよねー。
見事な羽なのに…残念! 無念! こんにゃろうっ!
「ひやぁっ!」
っとか思ってたのに、私の手は欲望に忠実。勝手に触って、撫でてますがな。
両手で私が触るものだから白取から悲鳴が。
えぇ。気にしません。私の手。
ぐっじょっぶ!
最高の手触りですっ!!
撫でてると白取の顔は赤くなってきた。
泣きそうになったり赤くしたり大変忙しそうだね。って、原因は私ですね~。
「あんっ! ダメですぅぅっ…あぁ!」
あれ~?
甘い声。目ウルウル。息乱れ。
…感じてる?
私の手ってゴットハンドだったのか!
知らんかったよ!
「翼は…だめぇっ」
あら。どうやら性感帯のもよう。
ここで触るのを止めるのが素晴しい友情。
…もうちっと触りたいなぁ~。
とか思ってると殴られました。
バコンと思いっきり。
しかも背後から。
「イタッ!」
容赦なく私の背後から殴ったのは知らない人でした。
「…貴様は帰って早々…」
真っ黒い髪に真っ黒い格好。あっでも、微妙に光の加減で緑が混ざってる感じ。
彫りの深い整った顔なのですが、体形が厳つい。ガッツリと逞しい。まるで物語に出てくる悪の王!
その悪の王っぽい人は眉間にシワを寄せて怒っている模様。
整った顔立ちが怒ると怖い顔になるよね~。
…しかし、何で怒ってるんですかね?
ホワァアイ?
「羽付きといちゃついているんだお前はっ!!」
羽付き? …白取の事か?
「何故知らない人に怒られる…?」
そう言って首を横に軽く傾けた。
…うん、近い距離て怒鳴られると耳痛いね。
「「……………」」
あれ~?
私の発言に二人とも彫刻の様に動かなくなったよ!
凍るっていうのかね?
「白取~。この人誰~?」
「「…………」」
白取は絶望だって言う顔。
「…まさか…この御方の事も忘れてしまうとは……私がいけなかったのですか?…私の…」
ブツブツ呟いてら。白取ってこの呟き入ると長いんだよね。いっか、放置しよう。
「…そんなに俺の事が嫌になったか?」
魔の王っぽい人は私が座っているベッドに腰を下ろすと、そっと私の頬に触れた。
何かを堪えるような顔。
ツキンッ
私の胸の奥が刺すように痛みが走る。
うおっ! 私の心臓が痛いよ!
何故だぁぁぁ!!
私の体がおかしな事になってますヨ。
「ロザンヌ…」
触れられている頬が、囁かれて耳が…熱を持つ。
うおおおぉぉぉぉ!!!
しっかりしろっ! 私の体!
だって…
「私はロザンヌじゃないんですけど…?」
人違いなんだからっ!
…て、あれ? 何か気分が重くなってきた…。
「…はぁ」
って、何故か深い溜息をつかれたよ!
魔の王っぽい人の眉間にシワがよる。
「俺を見くびるな。姿かたちが変わろうとも…」
姿かたちが変わろうとも…。
あれ? どっかで聞いた事ある…ような?
う~ん。
「妻を間違えることは無い!」
「………は?」
問題発言でたよ!
妻?
T・U・M・A!
妻と言う爆弾発言に思考を奪われる。
妻って事はこの人が旦那って事だよね?
わーおー。
自信満々に言ってるけど私ロザンヌじゃないよぉ~?
「うにゅっ!」
あほん私。
考え事していたせいで魔の王っぽい人を放置してました。
その結果がコレ。
顔面度アップ。唇に湿った生暖かいものがっ!!
接吻だぁ~!!
あれ?
…何か気持ちいい…かも。
ふわっと胸の中が温かくなって、心地いい。
好き……。
あっ……。
胸の中からふわっと気持ちが溢れて、その刺激が記憶を呼び覚ます。
「ダルン…もっと…」
私の口から魔の王っぽい人の名前を紡ぐ。
「なら、その姿をいい加減戻せ」
「はーい」
私、ロザンヌでした。
キスされて思い出したよ。
お伽噺の姫かよって感じ?
あははは。
笑うしかないね~。
ココは天上。私は地上の人間で言う神様と言う分類に当たる者。因みに‘造形主の神’デスよ!
色々と姿かたちを変えるのが得意なんです。勿論、私自身も含まれます。
因みに旦那様はダルンドイルド。長いので‘ダルン’って呼んでますヨ!
ダルンは植物を育てるのが大好きで、気が付いたら‘豊作の女神’って呼ばれてたりするんデス。何故女神なのかは私は知りません。教えてくれないんだよね~。
勿論、ダルンは植物を操ったりする力を持っています~。
「いざ変身~」
私の身体は黒い髪から水色の腰まである髪に変わり、黄色みがかった肌は白っぽい陶器のような肌に。顔は凹凸のあるいわゆる美しいと呼ばれる顔になった。ただし、胸が小さい。
ちくしょう。
胸は大きくしちゃダメかな~?
ダルンをちらって見ると満足そうな顔。
無理そうだなコリャ。
その証拠に、お気に入りの一つである私の髪の毛を触ったりキスをする。
「ったく、突然‘地上に遊びに行ってきまーす’っと言ったきり帰ってこないから心配したんだぞ?」
「えへへ」
うん、笑って誤魔化そう。
力の強い天上人(つまり私やダルン)が地上に降りると色々地上に影響を及ぼす。山が無くなったり、異常気象を起こしたり…と、様々。でも、私は身体を変化する事が出来る。便利だよ~。
だって、地上人の形になって地上に降りれば被害ゼロなんだよ!
上の偉いおっさんとか被害がドーノコーノな始末書とかスルー出来ちゃうんだもん。
だけど今回は、地上に行く為に地上人の形になったら赤ちゃんになっちゃった☆
…いやはや、初めての体験!
地上にたどり着いた先は人の腹の中って! あの時は驚いたよ。
おかげで、記憶無くすし。
「うひゃぁ!」
うお! くすぐったいっ!
ダルンが私の体のあちらこちらを触る。
「…怪我は無いな。…悪いな、力の加減が難しかった」
「あーやっぱり、突然枝が折れたのってダルンの仕業だったんだ~。良かった」
天上から離れた地上に自分の力を送って操るのは非常に難しい。折れただけで済んで良かったとも言う。もしかしたら木っ端微塵になっていたかもしれない。
「良かったじゃないだろ! もう少しで怪我をするところだったんだぞ!!」
してないからいいじゃん。
ダルンが私を見つけて力を使わなかったら、天上に帰れなかったかもしれないし。
「私が重い所為かと思ったから…」
乙女的には此方が重要なんですよ!!
「……」
そう言ったらダルンが私を持ち上げて膝の上に乗せた。
「…重い? どこがだ?」
うおおぉぉ!!
膝の上ですよ!
いつもなら私が無理やりにやる行為をダルンからやる。
…何かスキンシップが激しいような…?
そう思ってダルンを見た。
あっ…。
馬鹿だ私。
こんなにも彼を心配させて、寂しがらせて、不安にさせて。
ダルンの震える手。
泣きそうな顔。
愚かな私。
ごめんなさい。
きっと、謝れば彼は私を許してしまう。
それだと私は同じ事を繰り返してしまう。
「…ただいま」
「…あぁ。おかえり」
だから今度は…。
「今度は一緒に行こうね!」
「懲りろこのアホ!!!」
一応、コレで完結となります。
気が向いたら番外編を書きます…。