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1話 「魔物世界」

 なにげない調子で、風俗で抱いた女がまだガキの体でさと語りだす。


 またこいつは外層の風俗まで行ったのか。




「あんまり表情が死んでたもんだから、申し訳なくなってきちまって……まぁ、外の女だし安く済んだからいいんだけどよ」




 仕事の休憩中に下衆な話をするこいつは俺の同僚で、名はグロムという。


 内層で丁寧に訓練されて育った軍人共には外層で買った女の話は随分と好評なようで、こうして魔物処理の休憩中、グロムはニヤニヤとこういう話をしだす。




 俺は外層出身なのでこいつが随分オーバーに外層の事を話していそうなのは分かるが、最近はもっぱらあっちに帰ってないし、案外そんな風に腐っているのかもしれない。


 しばらく同僚共が話し込み、外層民は辞めておいた方がいいという雰囲気になった時、狩りに出ていたもう1つの班が帰ってきた。




「交代か……あ~めんどくせなぁ」


「まぁ、うちらはカイさんに任せとけばいいんですから、楽な方ですよ」




 そう言って全員の視線が俺に注がれる。


 任せろと一言告げて、俺達は本物の太陽の下に赴いた。




ーーー




 今日の仕事は、コロニー入口周辺の魔物の掃討。


 といってももう数時間やった後なので片付いてきてはいるが、ざっと周囲を見渡し、数十m先に居た2体に狙いを絞る。




 意識を指先に集中させ、硬度の高い土を生成。標的の位置を正確に意識し、放つ。


 2m程度のサソリ型の魔物に命中させ、ぐぁあと雄たけびを上げながら息絶えた。


 途端、隣の同種の魔物、5m弱の巨体が高速でこちらに向かってくる。


 おぉ。反応がいいね。子供を殺されてお怒りらしい。




 後ろでグロムが剣を抜いた音がし、少しの緊張感が伝わる。


 が、俺達まで20mに届くかという所で、サソリの勢いを殺すよう風をぶつけ、相殺。


 ならばとサソリは横から迂回しようとするが、もう風の壁で全方位を塞いでいるので、身動きはとらせない。


 ただの的となった所に、勢いを付けて水魔法を打ち込んだ。




 驚くほどに死はあっけない。人間でも、魔物でも。


 あれほど勢いと怒りに満ちたサソリが、力なく倒れ込む。




 周囲を見渡し、他にはもう魔物が見えなかったので同僚と3班に分かれ、炎魔法で魔物の亡骸を一つ一つ燃やしていくことにした。


 もう戦闘というよりは、後処理の段階だ。




 淡々と進めると、俺とペアの気の弱そうな新兵があの、と口を開く。




「カイさんは外層出身なんですよね。えと、どんな感じでしたか……?ほら、人工太陽の光もあんまり届かなくなって、最近やばいって聞くじゃないですか」


「そうだな」




 俺達の今居る所、太陽の下は魔物の領域だ。


 この世界の歴史は約100年前、魔物の凶暴化と大気汚染で地下のシェルターに住むのはどうか。という計画が進む。


 現実的では無いと否定され続けたものの、ある革命的な発明によってそれは現実となった。




 人工太陽だ。


 炎魔法の応用だかで作られたらしいそれは、人類が地下に移住する決定打となり


 約70年前、地下に住む人類は90%を超えたと言われている。


 もっとも今は昔よりさらに大気汚染がひどいので残り10%は地下に移り住むか死んだかの2択だろう。




 このコロニーでは巨大な人工太陽が中央に一つ設置された。


 そして光が届きやすい内層に金持ちが密集し、貧困層は暗い、場所によってはただの洞窟と何ら変わらないような外層で暮らしているという訳だ。


 そしてたいてい皆、この本物の太陽も雲も見たことがないまま一生を終える。




「高い建物を建てる内層民には正直うんざりしてくるな」


「ですよね……」




 この閉鎖的空間で自分の領土を広くしたい衝動に駆られるのか。金持ちの内層民は高い建物を作り、それらが外層への光を遮っている。




「このコロニーは……いずれ、滅んだりするんですかね」


「かもな」




 なんだか憂鬱な気分になって、いつもより高い火力で魔物を炙った後、仕事終わりに渡された一通の手紙によって俺は、久々に外層まで赴くことになった。

★お読みいただきありがとうございます!


この作品は毎日更新で、今日からの3日間で大量投下をしますのでまた覗きにきていただけたら嬉しいです。

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